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The world of rights 【わるらい】  作者: SAKURA
第一章 アネモネ学園入学試験編
20/21

2-8 最高で最悪な選択

「あと半分、30分ってところか…」

「まずいな、まだお互いに2体しか倒してないぞ…」


「ギリギリ、ですね…」


2人の歩みは駆け足へと変わり、みるからに時間からの焦りが出ていた


「こんなに走ってもゴールが見えないなんて、!」


2人は息切れこそはしていなかったがその心臓は緊張からバクバクと鳴り響いていた


ラウルは突然足を止めて壁に寄りかかった


「仕方ないか、」


ルキナも止まった彼を見て急ブレーキしたが彼の唐突な行動を理解できなかった


「諦めるんですか!?」


ラウルに焦ったように詰め寄るとラウルはニヤリと笑って目の前の壁を指差した


「ちげぇよ。合格しに行くんだよ!壁登るぞ!」


「はぁ!?なに言ってるんですか!?」


そうなるのも無理はない。この20メートルはある絶壁を登ろうというのだから…


【通路の幅は道毎に変わっている…つまり統一されてはいない…】

【例えば、ここは大体5メートルはあるしあっちは3メートル…】

【2メートル以内の通路があれば…】


彼はゆっくりと歩き出してその道の突き当たりを右に曲がった、そこには街の路地裏のような細い通路があった


「あったぞ!」


「ただの細道じゃないですか。これを登ろうだなんて無理ですよ。」


彼女は呆れるように言ったがラウルには考えがあった


「'1人'じゃな、でもここには'2人'いる。つまりはこうだ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よし、!ゆっくりな!ゆっくりと歩けよ!」


「いや、それより…なんなんですか!この体勢!」

「恥ずかしいなんてもんじゃないですよ!この変態!」


2人は背中を合わせて壁に両足をきちんと平行に着き、両手を繋いでお互いを支えにしながら壁をゆっくりと登り始めていた

赤面しながらそう背中越しに叫ぶルキナに半ギレしながらラウルも反論した


「あぁ?お前がついてきたんだから文句いうな!この贅肉女!」


「はぁ!?誰が贅肉女ですか!?このノンデリ男が!私これでも体重46kgですよ!?」


「じゃあこの背中の柔らかいのは…!」


ラウルが首をまわして視界の端で自分の背中を見ると、彼女と自分の間にタオルが挟まれていた


「なんだこのタオルは?」


「あなた汗かいてるじゃないですか。だから、その…」


「汗つくからってか!?汗くさいってか!?それはお前も同じだろ!」


「また出ましたね!?ノンデリ男!」


2人は口論こそはしていたせいか足取りも合わなくなってズルリとルキナとラウルは壁を滑り落ちていった


「ひっ、!」


「、!あっぶねぇ…大丈夫か!?」


ラウルは口論の勢いで足取りが速くなっており、彼女もペース自体は上がっていたものの、そこは脚の長さの差が出てしまった


ラウルは冷や汗をかきながらも踵を土壁に叩きつけて減速して、ルキナも頑張って踏ん張ったことで1、2メートル下がった程度で済んだ


しかしタオルは下の地面へと落ちてしまった

お互いの湿った背中を感じたことで2人はお互いにばつが悪く、そして申し訳ないとも思った


「ここで争うのはやめましょう…」


「そうだな、」


2人は頬に汗が伝う感覚を感じ、再びゆっくりと登り始めた


「ちゃんと1、2、1、2のリズムだぞ、!」


「わかってますよ!それよりも登った後はどうするんですか!?」


「最初の飛んだやつを見ただろ?きっとゴールは北だ。アイツの性根が腐ってなければな!」

「まぁ違っても外枠の壁を走り続ければゴールには着くだろ、!」


「会ったばかりですけどっ、!ラウルは頼りになりますね。」


2人は話してはいるが、踏ん張りながらなので力み声も混じって会話していた


彼女の唐突な褒め言葉に悪い気はしなかったラウルはそれなりにいい気分になった


「な、なんだよ、急にっ、!」


「え、もしかして照れてるんですか?」

「いやぁ、それは是非とも見たかったですねっ、!」


お互い壁を見つめるように登っているので彼の顔を見ることはできなかったが口調的に少しは赤面していることは容易に想像できた


「いいから足動かせ。ただでさえ歩幅短いんだから、」


「照れ隠しでノンデリ発揮するのやめてくれません?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


迷路の土壁の上…壁はそれなりに厚いので壁の上、今自分たちが立っている地面もそれなりに幅があった


「はぁはぁ…」


ルキナはラウルよりも体力を使ったせいか、地面に寝転がり、春風を浴びて涼んでいた


「ふぅ、着いたな。」

「壁の上。」


ラウルは頬に伝う汗を拭って周りを見渡して、妙な達成感を感じていた


2人は息を整えながらも北に向かって歩き出し、迷路の道の真上となる穴を飛び越えてひたすらに一直線にゴールを目指して行った


「残り時間は15分。この調子だと余裕そうですね。」


ルキナは懐中時計を取り出して残り時間を確認した


「ゴールは真北のあそこか。」


その時…突然下の通路から助けを求める声が聞こえた


「はぁはぁ、っ、!誰か助けてくださいー!」


黒髪で眼鏡をかけた男が土人形に追われていた。武器も何も持たずに逃げ回っている様子からおそらく戦闘能力がないのだろう。


「誰か、!誰か!?」

「ひぃ、!」


情けない声をあげながら逃げ惑う彼を土人形は容赦なく岩の鉄拳で叩き潰そうとしてくる


「おい。ルキナ。先に行ってゴールしとけ。」


「え、それって…。」


彼はそう言うと同時に壁を駆け降り始めた


「ちょっと!?」


ルキナは彼の突拍子な行動を馬鹿だと思った


【なんで!?だってゴールはもうすぐなのに、たまたま見かけた人を助けに行くなんて、もう一度登ってる時間なんてないのに!?】


彼は壁を蹴り、勢いを増して土人形の脳天に蹴りをお見舞いした


「オラッ、!」


"鋼の鉄靴(スチールサバトン)"


鋼を纏った足は土人形の頭を完全に破壊した、その威力は着地した後の地面にも大きなヒビ割れとして残った


「ふぅ…」


「助けてくれてありがとうございます、!」

「僕、研究で申請したのに申請に手違いがあって戦闘になっちゃって…」


逃げ惑っていた彼はそそくさとラウルの元へとやってきて、目から涙を流しながら感謝を告げた


「災難だったな、まぁ、気にすんなよ。こういう時は助け合いだろ?」


飄々と当然のようにそう言ったラウルは彼から見れば聖人のようにも思えた


「あれ?まだ行ってなかったのか。」


ラウルは壁の上からこちらを心配そうに見ているルキナを見つけた


「おーい!俺はなんとかしてゴールするから先行っててくれ!」


にこやかな笑顔でさも当然のように言っている彼をみてルキナは通路を覗いていた体をさらに乗り出した


「ラウル…あなた馬鹿じゃないですか!?」

「もう時間はないってのにどうして見ず知らずの人を助けたんですか!?」


思いもよらなかった叱責にラウルはキョトンとしてしまった


「助けを求めてる人がいたら普通助けるだろ?」


「はぁ…あなたって人は…」


彼の言葉に思わずため息を溢したルキナはそう呟いた


「で。そこからどうするんですか!?」


壁上からの叫ばれたその問いにラウルは頭を悩ませた


【この高さを登るのは現実的じゃないよな…かと言って土人形探すのはなぁ…】

【ゴールまではまだ距離ありそうだったし…】


「あれ?かなりマズくね?」

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