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The world of rights 【わるらい】  作者: SAKURA
第一章 アネモネ学園入学試験編
18/21

2-6 昼休みの飢えた獣

「はぁーー…やっと終わった…」


午前中の筆記試験が終わり、ラウルーレンスは午後の実技試験までの間の昼休みに学園内の外のベンチに腰掛けていた。


そして腰掛けるのと同時にお腹がグゥ〜と音を発した


「お腹空いたなぁ…今日のお昼は〜。」


来る途中の街中で買ったパンを入れた紫色の包みを広げて開けると中にはカツサンドとタマゴサンドが入っていた


「満腹にし過ぎると動けなくなるからな。これくらいがちょうど良いだろ。」

「それじゃあさっそくいただきまーす」


さっそくカツサンドを手に取って口に運ぼうとした時、目の前からドサッという人が倒れた音がした


「え、」


咄嗟に手を止めてうつ伏せに倒れた人に駆け寄った

制服じゃない様子を見るに彼女も受験生のようだった


「大丈夫か?」


肩を揺するとオレンジ色の髪をした彼女は消え入りそうな、苦しいようなうめき声をあげた


「お腹が…空いて…力が、でな、い…」

「それは、!」


手に持っていたカツサンドを見た彼女は目の色を変えて飢えた獣のような形相を浮かべた


「食べ物…食べ物ー!!」


「はぁ!?」


飛びかかってきた彼女に驚きながらも襲いくる手を躱して獣のような眼光を向ける彼女と向き合った


「ちょっ!いきなりなんだよ!?」


ゾンビのようにヨロヨロと近づいてくる彼女を理解できずにゆっくりと同じ距離を保った


「それ、ください…」


一般人が猛獣と対峙した時のような対応を取っていると、うめき声のようにも聞こえるそれを聞いてようやく理解した


「お腹減ってるのか?」


その問いに彼女は頷いた


「はぁー…しょーがねーな。コレやるよ。」

「カツサンドだけどいいよな?」


ゆっくりと差し出したカツサンドを受け取るとラウルーレンスがベンチに座ろうとしている間に彼女は瞬く間にそれを食べ終えた


「はっ、!ありがとうございます!」


我に帰った彼女はオレンジ色の頭を下げて先程までとはまるで別人のようだった


「本当にご迷惑おかけしました。私、その、空腹になるとご飯のことしか考えられなくなるんです…」

「私お昼ご飯忘れちゃって…校内を回って空腹を紛らわそうとしたんですけど…本当にごめんなさい!」


深々と頭を下げて謝られたのでこちらも責めるに責めれない雰囲気だった


【まぁ…最終的には俺、あげたわけだからな…】

【奪われたわけじゃないから…】

「いいんだよ」

「こういう時は助け合いだろ?」


残ったタマゴサンドを頬張ってそう言うも、彼女は納得いかないようで…


「いえ…そういうわけには、!」

「あのカツサンドあなたのものなのに…あなたのご飯もうそれだけでしょう?」


「まぁそうだけど。これから動くから一個くらいでちょうど良かったかもな。」

「そういうわけだから午後もお互いがんばろうな」


申し訳なさで狼狽える彼女を見てなんかこっちも申し訳なくなるほどの空気感を無理矢理締めて時計を見た。


「あと20分か…。」

「そういえば午後の試験は何を受けるんだ?」


話題を変えて午後何を受けるのか聞いてみると彼女は自信満々に答えた。


「戦闘です!」


「戦闘…俺と同じだな…」


「本当ですか!?」


彼女は目を輝かせて両手を握ってきたがその手の感触で確信した


【コイツ…。剣すら握ったことのないような手だな…。】


滑らかで柔らかい手、それは自分のようなゴツゴツとして多少の傷も残る手とは大違いだった。


「それじゃあそっちも食べ終わったようですし一緒に行きませんか?」


「ん…あぁ。どうせなら一緒に行くか。」


「やった!実はここに来てからずっと緊張してて…。」

「これで少しは緊張もほぐれそうです!」


彼女は胸を撫で下ろして純粋そうな笑顔でそう言った。


「見たところ刃物とか使わなさそうに見えるんだが魔術師か?」


「そうです!よく分かりましたね?」

「私これでも魔法だけは得意なんですよ!」

「そういうあなたは…。なんですか、?」


彼女は俺の体を頭から足の指先まで流して見たようだが俺の身体はもちろん筋肉は付いているが大型武器を軽々と振り回せるような肉体はしていなかった。

そして俺は剣を持っていない。そこから剣士という枠組みは消えたのだろう。

さらに魔術師という線なのだろうが魔術師にしては体つきが良い。

ならば何で戦うのか…。


「俺は…。いや、試験の内容がわかっていないうちは教えられないな…。」


「ズルい!ズルいですよ!私は教えたのに!」


眉間に皺を寄せて頬を膨らませている彼女には申し訳ないとは思う…。


ただ、これから先のことを考えれば手札はまだ見せない方が良いと思った。


確かにズルいと言われたのはしょうがない。

俺でもそう思う。


「説明が難しいんだよ…!」


咄嗟に出た苦し紛れの言い訳だが俺の戦い方のスタンスを知れば怖がってしまう可能性や詳しく追求おそれがある。


それを避けるためにも彼女にはこれで諦めて欲しかった。


「少しくらい教えてくれたって良いじゃないですか…。」


段々と拗ねた態度に変わっていく彼女の様子を見ているとこのまま放置している方が面倒くさくなるかもしれないと思い、彼女の言う通りに少しだけ教えることにした。


「はぁ、しょうがないな。わかったよ。少しだけだからな…。」


「やっと折れてくれましたか」


誇らしげに鼻を鳴らす彼女に俺は手品をするように両手を彼女の目の前に出した。


そして手のひらを下にしてゆっくりと開いた。


その瞬間、俺の手には一本のナイフがあった。


「これが俺の戦い方。」


彼女はただ困惑の表情を浮かべながら次に自分が言う言葉を悩んでいた


「ほら!こんなことよりもうそろそろ時間だからもう移動しようぜ」


「そう、ですね」


その隙を突いて俺はこの話を終わらせるために時計塔を指差して歩き出した


それに続くように彼女は釈然とした様子でその後に続いて行った。

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