2-1 数年後…
カラスト街の事件から数年後…。ラクルーレンスは15歳となってルーブクと共に住んでいる街、アルバンで日々を送っていた。
朝食の用意が終わると俺は1人でそれを食べ始めた。
「いただきます。」
ルーブクと住んでいるとは言っても彼は数週間に一度帰ってくるか来ないかだった。
だが父親のときとは違う.俺は彼が何をしているのかは知っている。
本を手にいるたルーブクは本の鍵穴を壊してでも中身を読もうと試みた。
しかし鍵は壊れなかった。
そもそも本自身に何らかの魔法陣がかけられており、それが破壊を妨げていた。
リーブクは壊すのを諦め、鍵を探しているのだ。世界中へ赴いて手がかりを集めている。
そんな彼だが、俺との約束もきちんと守っていた。
家に帰ってきている数日の間に彼は自身の技術を俺に叩き込み統けた。彼がいない時にも俺は街から少し離れたの森の中で教わったことを実践している。
そして俺のあの力…。ベリアンを窮地に追いつめたあの力を出せることはなかった。何度試してみても徒労に終わるだけだった。
彼女は一体何者だったのか…。それは今でもわからない…。
ただ…たまに夢に見ることがある。それは遠くの星々が輝く真っ暗な空の中、暗闇の中心で彼女が目を瞑ってただ漂う。
その夢があの日の出来事が嘘ではないことを俺に教えてくれる。
食器を洗い終わって服を着替え、俺は1つの大きなカバンを肩に背負う。
行く所は決まっている。家出ってわけじゃない。
これはむしろルーブクから言ってきたことだ。彼はもう俺に教えることはないと、一週間前に帰ってきた時に俺と模擬戦をしている時にそう告げた。
俺は納得できなかった。まだ俺は彼に勝てない。
しかし彼は顔に出てき始めた皺を触ってこう言った。
「確かにお前はまだ俺には勝てない。たが、それは当たり前なんだ。その技を教えたのは俺だからな。」
「なら次はお前自身、お前だけの力を身につける時だ。」
「お前はまだ半人前だ。自分だけの力を身につけた時こそお前が一人前になる時だ。」
そう告げながら俺に差し出してきたのは2枚の列車の切符と1人が3ヶ月暮らせるほどの大金が入ったカバンだった。
「アネモネ学園へ入れ。そこで世界を知り、お前だけの力を身につけるんだ。」
そう言うと彼は再び鍵探しの旅へと出掛けて行った。
そして今日がその列車が出発する日。
切符の1枚目はアルバンからカラストへの切符。
2枚目はカラストから大陸の中心部、アネモネ学園のある世界共通合区セントコアルへの切符。
帰りの切符がないということは必ずアネモネ学園へ入学しろというメッセージだとひしひしと感じた。
だがラウルーレンスは切符が2枚あるということに言葉を溢した
「そういう所はあるんだよなあ…。」
家の外に出ると太陽はもう空高くまで昇り始めており、大通りからは賑やかな声が聞こえてきた。
「あら?ラウルーレンス君じゃないの!」
「金ピカの兄ちゃん!」
彼女は隣人のおばあさん。もう白髪まみれの人だが孫と2人で仲良く暮らしている。
「こんにちわ。」
ラウルーレンスはおばあさんに丁寧にあいさつをした。
「そういえば今日だったわねぇ。試験頑張ってきてねぇ。」
「ありがとうございます。もちろん合格してきますよ。ルーブクにも釘を刺されましたからね。」
彼女とは以前話した時に家を空ける事情を話せる所だけ話したことがあった。
そしてそれはその孫にも伝わっているようで隣の子ども続いて言ってきた。
「落ちんじゃねぇぞ!」
「チビもおばあちゃんに迷惑かけるなよ!」
生意気にそう言うこの子に少し仕送しも兼ねてそう言うとお互いに手を振りあって「またな」と告げた。
家のカギを閉めてカバンの中に入れ、俺は駅の方へと歩いて行った。
これまで見てきた街や出会った人としばらく会えないと思うと少し寂しいものがあった。
でも悲しくはない…だってきっとまた会えるからだ。
駅に着くと蒸気を止めた列車が止まっており、目的の車両に乗り込んで席に座り、大きな車窓の縁に肘をかけて出発の時を待った。
これから行くのはカラスト街…数年ぶりに訪れる俺の故郷だ。
心の中で今ごろ街はどうなっているのだろうと心を踊らせる一方で胸をしめつけるものもあった。
それはかつての地獄。そして俺の始まりでもあった。




