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第8話 大芋虫⁉︎ これは意図的ですか?

そこには爪の生えた無数の足を持つ大芋虫が天井に張り付いていた。

「キャリオンクローラー……」

 エレノアが息をのむと、目を見開いたガインド公爵が前に出ようとするがエレノアは視線で止め、大声をあげる。

「レング!! 一度、退去!!」

 レングはすぐに防御を固めるためにキャリオンクローラーに向かうが、ケニールス公爵子息がひいっと悲鳴を地面に座りこむ。今まで頷くしかしていなかったケニールス公爵子息の従者が立ってください!! と大声をあげるが腰が抜けたのか立ち上がらない。

 レングはケニールス公爵の腕を掴み後方へ引き寄せるが、キャリオンクーラーの触手が伸び始めていた。

 キャリオンクローラーは、頭部には大きく開く頑丈な顎と鋭い歯を持つ。その下には8本の触手があ理、その触手からは麻痺毒が分泌されている。触れれば動けなくなる。

「ソフィア!!」

 ソフィアに指示を出しながら、エレノアはレングの股下をすり抜け、その勢いのまま、キャリオンクローラーから伸びている触手に短剣で切断する。ソフィアの矢もレングに伸びていた触手を捉え壁に磔にすることができた。

 触手を切断することはできたが、分泌物が飛んでくるのは回避できずエレノアは上半身を浴びるが、手が動くうちに短剣はしまえた。服が溶けてく感覚はあるが、すぐに上半身に力は入らず感覚もない。

 キャリオンクローラーと距離を取るため後方へ下がった。

「エラ!!」

 レングの掛け声でレングの立ち位置を理解し、エレノアは警戒体制を取ったまま状態回復の準備をする。

「内なる力よ」

 自身の体に血流がまわるように力を込め、麻痺毒が浄化するイメージを込める。

 スーと力が一瞬抜けるように感じるが、徐々に上半身に感覚が戻ってきた。すぐに短剣を構える。

「エラ、下がれ!!」

 レングの準備ができたため、エレノアはさらに後方に下がりレングに触れたのを理解すると足に力を入れ、レングの肩を借り、体を一回転させ、レングの後ろへ下がった。

「守れ!!」

 レングの防壁がキャリオンクローラーとの間に出来上がった。

「すごいですね……」

 フィリップの呟きにレングは、数分しか持たない。と額の汗を拭う。

「数分でも十分です。私たちはキャリオンクローラーと対峙するの初めてですが、この洞窟に出現するモンスターではないですよね?」

 ガインド公爵の疑問にエレノアは頷いて答えた。ガインド公爵は他に何か言いたげにエレノアを見ていたが、わざと気が付かないふりをした。

「レングの防壁に閉じ込められれば被害はなさそうだけど、あの大きさは無理だよね」

「無理だ。防壁で潰すことはできそうだが、キャリオンクローラーは硬いからな。腹部の柔らかい急所を狙うのが、確実だろ」

「その腹部を狙うのが難しいんじゃない!!こんな狭いところだとひっくり返すのも一苦労よ」

 レングとソフィアの意見にエレノアも同じように考えていた。

「ソフィアと私で、触手の対処をしてレングの防壁を使ってフィリップさんの風魔法でひっくり返す。ガインド公爵がトドメを刺すが確実かな」

「私の風魔法ですか?確かに威力はありますが……」

 先ほどの剣術とは違い、エレノアの提案にフィリップは自信がなさそうに返答した。

「確実な良い案だと思うが……。戦力を分ける必要がありそうだ」

 ガインド公爵が、話の途中でキャリオンクローラーと逆方向を向いた。丁寧だった言葉遣いもなくなり内心は焦っているようだった。

「げっ!! このタイミングでガースト、グール!! タイミング良すぎだし多い!!」

 ソフィアは文句を言いながらも、すでに弓矢を構えていた。

キャリオンクローラーとこのタイミングでのアンデット達の出現に意図的なものを感じるが、エレノアはそれについては今は深く考えている暇がなかった。

「私がキャリオンクローラーと対峙するのでエラさんが補助をお願いします」

「触手はあと6つありますよ。それに鋭い歯も、剣は砕かれると思います」

 ガインド公爵の提案にエレノアは反論するが、アンデット達との距離も縮まっている。迷っている暇はない。

「あなたの高位回復魔法なら、欠損しても回復できるだろう。そのようにはならないと思うが、私は強化で体を硬くできるので大丈夫だ」

 ガインド公爵は、エラがエレノア・メディエンと確定しているらしい。先ほどの柔らかい印象から顔は無表情でエレノアのことを全く見ずに話をするのも、その証拠だ。エラとして話をしていた時は顔を見ながら、優しい眼差しだった。

 そのことにエレノアは、肩を落としそうになる。だが、それはエレノアは剣術や体術を当てにしていないことに対してだと自身を誤魔化した。

「ガインド公爵……。エラ様の体術や剣術も素晴らしくて、それと高位魔法もあるから安心だと言葉にしないとわからないですよ。他の誰に対しても器用な癖に想い人に対してだけ不器用なの笑っちゃいますよね」

 ため息を大袈裟につくフィリップに対してガインド公爵は、おい!! と低い声で睨みつけているがフィリップは気にせず笑顔だ。

 名称に様をつけ始めたフィリップもエレノアのことがわかっているようだった。だが、それよりもフィリップの言葉の方が気になってしまう。

「面白そうな話だからもっと聞きたいんだけど、そろそろ戦略どうするの!?」

 ソフィアの声に、エレノアは現在の状況に集中することにした。

「ソフィアとフィリップさんでアンデットたちの対処!! レングは防壁が出せるようになったらタイミングで、防壁をキャリオンクローラーの口へ。その際にガインド公爵がキャリオンクローラーへトドメを!! 時間稼ぎと補助は私がする」

 了解!! と口々に言う。

 エレノアは、ガインド公爵の隣に並び目を瞑り体に血を巡らせ、それを手に集めるように集中する。ガインド公爵の両手をエレノアの両手で握り締め胸元まで持ってくる。

「内なる力よ……続け!!」

 グッと手に力を込めると、体に熱が回る。ガインド公爵も同じなのか体をビクつかせ動きを止めている。

「オートの浄化魔法です。これで麻痺毒を気にせずに動けますよ」

 手を握ったまま、声をかけるとガインド公爵は目を見開いたまま動かない。首を傾げていると、レングが大声を出した。

「そろそろ、防壁が消えるぞ!!」

「了解」

 エレノアは、ガインド公爵の隣で両手に短剣を構える。ガインド公爵も剣を構えた。キャリオンクローラーはレングの防壁に残りの触手で触れている。防壁が消えると残りの触手が一斉にこちらに向かってきた。

 1本を一気にガインド公爵が、切断する。エレノアも目の前にきた触手を刺して動きを止め、切断する。さらに伸びてくる触手は、体を回転させた反動で切り込む。

 残り2本の触手は、1本はガインド公爵がすでに切断しており、最後のものはガインド公爵の背後に回ろうとしていた。

 エレノアは、ガインド公爵に向かってジャンプしガインド公爵の肩を使って体を持ち上げ、その反動で一回転しながら、踵に仕込んでいた刃物で触手を斬り込んだ。

 すぐに体制を整え、短剣を構え直す。

 触手の無くなったキャリオンクローラーは、ガインド公爵に向けて大口を開けていた。鋭い歯がもう少しで届きそうなところで、エレノアは声を張り上げる。

「レング!!」

「防壁!!」

 ガインド公爵は鋭い歯に怯まず、キャリオンクローラーの胸元に入り込んで体制を低くする。

 キャリオンクローラーは、ガチっとレングの防壁を噛み砕こうとしているが苦戦しており、その隙にガインド公爵は剣を振り下ろしていた。

 真っ二つ。

「俺の防壁いらなかったんじゃねえの?」

 硬い部分も関係なしに真っ二つにされていた。エレノアは顔が引き攣りそうになるのを、どうにか笑顔で抑える。

「こっちも終わったよ」

 ソフィアの声に後方を振り返ると、ゴーストたちの討伐も終わっていた。

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