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第3話 手紙? 何のことですか?

 兄から婚約の話があってからガインド公爵から手紙が届くようになった。

 だが、エレノアは手紙を受け取っても手が滑ったといいお茶を手紙に書けて読めなくしたり、風に飛ばされたを装って窓の外へ落としていた。

 ガインド公爵の使用人には、申し訳ございませんわ。と涙目で心にも思っていない謝罪を何回も言っている。

 ガインド公爵は手紙を届けられない使用人を叱咜している様子はなく、使用人たちも主人のために手紙を届けるのを必死にやっているのがわかった。良き主人なのだろう。だが、結婚はしたくない。

 手紙を読んだら、その内容を断るすべがなくなる。使用人たちには申し訳ないが、今回は手が滑り床に落とした時に踏んで破かせてもらった。せっかくの手紙が、申し訳ございません。涙目で、エレノアの中で、できる限りのぶりっ子の声で謝ると、使用人はいえ、お気になさらないでください。と悲しげな顔の使用人には心が痛むが、そろそろ手紙を出すのも諦めるだろう。

 エクリプリス・ガインド公爵は学校卒業後に騎士団の中で実力で功績をあげ、今では騎士団の副団長も務めている。学生の時でさえ、あのモテっぷりだ。今など、結婚相手に困ることなどないだろう。

 貴族と結婚などしてしまえば、今のように手に剣を握って過ごすことはできなくなる。

「エラ、そっちに行ったよ!!」

 残り一体のウォーグが地面を蹴り、剥き出しの牙はエレノアの首元を狙ってきた。だが、エレノアは右足を一歩後ろに引くだけでかわし、剣を喉元に突き刺す。ウォーグの呻きを耳元で聞き、その狼に似た体躯が、のし掛かって来ないように瞬時に後方へ距離を取る。確実に急所は狙ったが、もしもの時も考えての行動だ。

「俺の出番なかったな。エラとソフィアと組むと楽でいい」

 豪快に笑いながら自分より大きい盾をレングは担ぎ直した。

「今回は変異の魔獣がいなかったから、私の弓で一瞬だっただけ!! それにレングの出番は今からよ。ウォーグの生態調査を依頼されているんだから、今から運ぶのよろしくね」

「俺、一人でこの数のウォーグは無理だろ!!」

「そのために台車借りてきたんだからよろしく」

 エラまでソフィアと同じようなことをとブツブツ言うレングを無視し、エレノアはソフィアが倒したウォーグを念の為に確認するが変異が見られる個体はいなかった。

 今回の依頼は、草原に隣接するイーストガインド領のウォーグの討伐と生態調査だった。モンスターの生態に対して学者たちの努力で分かり始めているところもあるが、まだ謎は多い。

 イーストガインド領にウォーグは珍しくないが、魔法の耐性があるウォーグが発見されているとのことだった。ウォーグは群れでいるため大量に現れる。大体は広範囲の魔法で攻撃するのだが、魔法耐性があったら地道に物理攻撃しかない。少人数で組むギルドでは、魔法耐性のあるウォーグとの遭遇など生還のリスクが減る。

 今回は、ソフィアの付与魔法の弓の攻撃で倒せた。

「エラが倒した最後のやつはソフィアの攻撃がきかなかったんだろ? そいつは変異じゃないのか?」

「ソフィアの攻撃が尾に当たっているから、変異じゃないよ。変異は一切の魔法攻撃を受けないらしいから」

「この数に魔法が効かないとか、無理だ。エラだったら、どうにか出来そうだけど」

レングがウォーグを担いで運んでいる中、ソフィアは石に座り足を伸ばし体を伸ばしていた。

 「やれるとは思うけど、やりたくないかな」

 このメンバーに謙遜することはないため、エレノアは苦笑しながら答える。

 実際に母にギルドで活動をしていくなら覚悟を見せろと、色々なモンスターと一人で戦わされた。ウォーグもその中にいて、群れを一人で討伐するのは体力がギリギリだった。

「話してないで、少しは手伝え!!」

 レングの悲痛な叫びにエレノアは、ごめんと返して動き出したが、ソフィアは動かずネイルを気にしている。その様子にエレノアは苦笑しながら、ウォーグの尾を掴んで引っ張る。

 イーストガインド領のギルドの拠点に着くのに半日かかり、ウォーグを引き渡すと今日の仕事は終わりになった。この後は、拠点にある装置でウォーグを依頼のあった研究機関に送ってくれることになっている。

 レングとソフィアは今から飲みにいくとのことだ。エレノアは久しぶりの依頼で、ギルドに来るのも久しぶりだったため、そのまま残り何か依頼があればそのまま行うつもりだった。

 まじめ!! 暇になったらいつでも来てねとソフィアはレングを引っ張っていった。

 エクリプリスとの婚約の話から、兄が何かと貴族の令嬢としての茶会など社交の場を持ってきたためギルドに来れるのも久しぶりだった。そのせいで、手紙の攻撃も何回も受けてしまったのだが、兄も諦めたようで令嬢としての仕事がなくなったため、やっと来れた。

 エレノアが貴族であることは、ギルドのメンバーは、ほぼ知っていた。ギルド自体が母の旧友で元シャーレクタド国で護衛などしていた者たちが集まって作った団体だ。それ以外は腕に自信がある平民だ。貴族で入団しているのは、母のシャシャとエレノアだけだ。

 シャシャが戦えることは知られているが、シャシャの娘であっても令嬢が戦えるのが貴族にバレれば良いように利用されるがわかっているため、エレノアはエラの愛称でギルドに登録し活動していた。

 掲示板で手頃な依頼はないかと確認していると、お嬢と声をかけられた。声のした方を見ると、イーストガインド領のギルドのリーダーだった。

「お嬢はやめてください。私はただの団員です」

「お嬢はお嬢だろ? それに今更変えられないしな」

 リーダーは、エレノアの家で過ごしていた時期があり、ギルドで働くかお屋敷で働くかのどちらかを選ぶ際にギルドを選び実力で今の地位までのし上がっていた。

 シャーレクタド国がガインド国の領に変わる際に、孤児が大量におりその孤児の支援をメディエン家が担った。リーダーもその一人だった。

 エレノアが物心つく際は、すでにギルドに所属していたがメディエン伯爵家によく顔を出していたため、エレノアはよく遊んでもらっていたため近所のお兄さん的な存在だった。

「マーガレット様から手紙を預かってるから、その場で読ませるようにと言われているから読んでほしい」

「叔母さまから?」

 手紙と聞いて身構えてしまったが、叔母からの手紙と聞いてエレノアは手紙を受け取り封を開ける。

 マーガレット・ビィジュトリア公爵夫人は父の妹で孤児たちの支援も一緒に行っていたため、リーダーもマナーを習っていた。夫人自ら、マナーを教えなくても良いのだが情熱的で優しい彼女は、明日も生きられるかわからなくなる孤児たちを見過ごすことができなかったと聞いている。

 突然、義理の姉になるシャシャに対しても礼儀正しく時には厳しく貴族としてのマナーを教えたそうだ。母はどうにか誤魔化せるくらいのマナーは身につけたが、エレノアに教えることはできなかった。そのため、貴族としての振る舞いはエレノアもマーガレットに習っていた。

 そのマーガレットからの手紙だ。読まない理由などない。

 内容は、久しぶりに顔が見たいから茶会に来て欲しいとのものだった。

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