第七話
最奥の間に差し掛かったとき、空気が変わった。
「……奥にいる、強いのが一体」
リーネの猫耳がピクリと動く。
「大丈夫?」
「うん。わたしも戦えるから」
返事と同時に、彼女はナイフを逆手に構えた。
俺も、残っていた魔力を集中させる。
扉を押し開いた瞬間、炎が吹き上がった。
「サラマンダーか……!」
炎の魔獣――赤い鱗に包まれ、体長は三メートルを超える。口からは高熱のブレス、背には炎の魔法陣が浮かぶ。
「来るぞ……っ!」
俺とリーネは、最初から全力でぶつかった。
リーネの素早い動きと、俺の“即興魔法”の連携。だが、敵は強い。攻撃は通るが、倒しきれない。
そしてついに――
「うわっ……っ!!」
炎の爪が俺の身体を打ち据えた。吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「カケル!!」
リーネの叫び。
意識が薄れかけたその時、目の前にステータスウィンドウが現れた。
⸻
《警告:致死量ダメージ検出》
《条件達成:未知ジョブ進化条件を確認》
《ジョブ進化開始――》
⸻
(進化……?)
周囲の空間が歪む。俺の体が光に包まれ――
⸻
《ジョブ進化:不審者 → 覚醒者(Awakened)》
《固有スキル:ゼロ・コード(System Override)》
《能力更新中……》
⸻
「うおおおおおおッ!!」
新たに生まれた力が、腕に宿る。
「《ゼロ・コード:Fire.Null = Absolute》!」
俺が放ったその“コード”は、サラマンダーの全身の炎を吸い込み、消し飛ばし、核となっていた魔力結晶を無音で破壊した。
炎の魔獣は、静かに崩れ落ちた。