第二十八話
――【RootLayer/再起動領域】
それは、世界の“定義”そのものを管理する最奥の階層。
空間は存在しない。時間もない。
ただ“意味”だけが無限に並列する。
そこに在るのは、たったひとつの人格。
《識別名:魔王ゼロ》
《機能:コード抹消・構造再定義・破損因子除去》
《状態:再起動プロトコル 発動中》
ゼロの姿は、人のようで人ではない。
黒衣の少年の姿を取りながら、声も表情も定義されていない。
「観測を開始。外部コード因子“神城カケル”……検知継続中」
“それ”は、語ることすら異常とされる存在。
この世界のシステムに“異常”が発生したときのみ目覚め、再定義――つまり世界そのもののリセットを実行する。
だが今回は、予定よりも早かった。
《因子判定:コード越境者》
《分類:修復不可能/強制再構築候補》
《再起動までの猶予:十三日》
ゼロは静かに目を閉じた。
「不審者として転生した者が、RootAccessに至ったか。
……面白い」
初めて“感情に似た情報波”が発生する。
ゼロはそれを**“関心”**と定義した。
「我が再定義を拒むなら――その理由を、直接見せてもらおうか。神城カケル」
再起動のカウントが進む。
世界の命運は、いまやただ一つの“未定義な存在”に委ねられていた。




