第二十一話
“Observer-Eye”――
世界の構造を監視・保全する存在。
通常、どんな人間にも認識できず、干渉もできない“最上位レイヤー”のシステム。
けれど今、その“目”が、俺を**“観測対象”として認識した**。
《対象:神城カケル》
《分類:越境因子》
《処理フラグ:凍結(一時保留)》
《理由:不具合要因に該当するが、修復パスを有するため》
「俺を……“バグ”として、システムが認識してる……」
それでも、削除じゃなく“保留”されてる理由は、
“俺がこの世界を修復する力を持っているから”――
(……皮肉なもんだな)
「コード展開、最終命令ッ!」
俺は、全魔力を“コード”に変換して放った。
《System.Override(“レプリコード”) → Shutdown.Execute();》
次の瞬間、レプリコードの身体が崩れ、残留コードが霧散していく。
空間が静まり返る。
「……やった」
「カケル……それ、魔法じゃなかったよね?」
「ああ。……たぶん、魔法っていうより“アクセス”だった」
塔の中心部に、最後の情報ウィンドウが現れる。
⸻
《境界の塔・記録解放》
《データ断片:古代賢者“エリアード”の記憶》
《転送先:対象:神城カケル(認証済み)》
⸻
「記憶……?」
「つまり、この塔はただの観測塔じゃなかったってことだよ。
“この世界が作られた理由”を記録した、管理者の遺産だ」
風が吹いた。
コードのように静かで、しかしどこか温もりのある風が。
この瞬間、俺たちは――この世界の真実に触れる第一歩を踏み出した。