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第一話
――意識が戻った瞬間、全身を突き抜けたのは“異常”という感覚だった。
視界に広がるのは、荘厳な石造りの神殿。金と紫のローブをまとった老人たち、そして中央に立つ一人の少女。
その少女――金髪の王女が、こちらを見て息を呑んだ。
「転生……成功、しました……?」
「……ジョブ:不審者……?」
一拍の沈黙のあと、ざわつきが爆発する。
「エラーだ! ステータスが読み取れない!」
「王女殿下、これは……召喚失敗です!」
意味のわからない罵声に包まれ、俺は思わず後退った。
「ま、待ってくれ! 俺はただ――」
けれど、言葉は届かない。
次の瞬間、体が勝手に動いていた。
(逃げなきゃ――ここにいたら“終わる”)
そして俺は、異世界に来て最初の行動として――
王城から逃げ出した。