第十四話
激突したのは、ただの剣戟ではなかった。
剣とコード。魔法と干渉。世界の理をぶつけ合う、異種戦争。
そして最後に――
「《Null.Execute(End)――Break》!」
俺の構築魔法が、ロシュバルトの魔力中枢を上書きした。
「ぐ……ああああああ……!」
膝をつき、崩れ落ちるロシュバルト。
「……殺せ。どうせ俺は、裏切り者だ」
「しないさ。俺は、選ばれたわけでも、偉くもない。ただ――俺は、俺のやり方で世界を変えたいだけだ」
沈黙ののち、ロシュバルトはかすかに笑った。
「なら……その“バグ”に、託してみるのも悪くないな……」
彼の身体は、転移の余波で消えていった。
魔王軍による強制召喚――
彼は最後に、敵にも味方にもなれぬ“宙ぶらりん”のまま、消されたのだった。
「……行ったね」
「……ああ」
戦いが終わった地下聖堂に、静けさが戻る。
王都の中にいた裏切り者。
そして、魔王軍の干渉の確かなる兆候。
「始まってるな……本格的に」
「カケル……」
リーネが、不安げに俺の腕を握る。
「大丈夫。俺たちなら、やれる。だろ?」
「……うん!」
俺たちは見上げた。王都の天井の向こうにある空――
その先に広がる、未だ見ぬ“世界の本質”に向かって。