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第十二話
王都ファルガニアの地下、古代魔導文明の残滓を流用した作戦室。
そこは、王国のごく一部の者しか足を踏み入れることを許されない、極秘の魔導作戦拠点だった。
魔王軍の動きを察知した王女エリスは、対抗する術を求めて、かつてこの地に封印されていた禁忌の魔導書と古代兵装の解析を進めていた。
そして今、その場所に俺もいる。
「この石盤、解析によれば“世界の書き換え”を示唆する文言が記されていました」
研究主任の老人が、震える手で文字を指す。
“外より来た者、定義を持たぬ者、その者、理を越えて新たな世界線を開く”
「まるで、カケルのことを言ってるみたいだね……」
リーネがぽつりと呟いた。
「いや、まさにそうだろ。ジョブの定義を持たない“バグ”は、ある意味この世界の“敵”なんだよ。だから、味方でいられるうちにちゃんと働かないと」
冗談めかして言ったが、本心だった。
俺は“この世界にないもの”だ。なら、いずれ警戒される日が来る。
その前に、信頼を勝ち取っておきたい。