第十一話
謁見の間を出た後、俺とリーネは、王都の“地下研究棟”に案内された。
そこで出迎えたのは、白衣の男と魔導師たち、そして複数の魔導球モニター。
映し出されたのは、辺境地帯の村が黒い獣の軍勢に襲われ、炎上する映像だった。
「これは……」
「魔王軍、です」
エリスが静かに言った。
「数十年ぶりに、魔王の眷属が活動を始めました。そしてその最初の標的は、“召喚者たちの王国”である我がファルガニア王国です」
画面の奥――そこに映る、角のある巨人の姿。
その名は――“災角のデスフィア”。
そしてエリスは、まっすぐにこちらを見て、はっきりと言った。
「カケル……いえ、神城カケル殿。
異界の力を持つあなたの存在は、今やこの国にとって希望です。
どうか、我が国のために――その力をお貸しください」
真摯な眼差し。そこに偽りはなかった。
俺は、静かに頷いた。
「どうせ俺はこの世界の“バグ”。なら――システムごと、上書きしてやるさ」
こうして、“不審者”だった男が、ついに王国の表舞台に現れた。
だがその裏では、王国上層部の一部が、密かに“カケル排除”に動き出していた。
バグは、必ず排除されるものだと――そう信じる者たちにとっては。