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第九話
「まさか王都に戻ることになるとはね……」
リーネの耳が、風に揺れていた。
抜けるような青空の下、王都ファルガニアの城門が見えてきた。
バグだらけの不審者として逃げ出した街に、今度は正面から戻る。
胸の奥に、不思議な決意が湧いていた。
「……でも、逃げたままじゃ終われない。向き合わないと、“俺がここにいる理由”に」
「……うん。あの日のこと、ちゃんと片付けるんだね」
リーネはそっと頷いた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
王都の門前で、俺たちは止められた。
「身分証の提示を――……あ?」
衛兵の一人が、俺の顔を見た瞬間、目の色を変えた。
「こいつ……! 王都召喚儀の逃亡者、あの“不審者”だ!」
「確保――いや、待て! そいつの手、光ってる……!」
俺の右手には、《覚醒者》への進化時に現れた“紋章”が浮かんでいた。
王族しか知らぬはずの賢者の系譜を示す魔導刻印。
それが、状況を一変させた。