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その選定、バグにつき
「火の手が上がってるぞ! 誰か、あの建物に――!」
どよめきと悲鳴が交差する中、俺は迷わず駆け出していた。
高校の帰り道。偶然通りかかった古びたアパート。燃え盛る炎の中、助けを求める少女の声が聞こえた瞬間、躊躇は一切なかった。
――助けなければ。あの子を。
俺の名前は神城カケル。容姿、成績、運動神経、すべてがハイスペック。人からは「神に三物与えられし男」なんて茶化されることもある。けれど、俺にとってそんなことはどうでもいい。
何のために生きるか。どうあるべきか。
そんな答えは、昔からずっと変わらない。
「守れる力があるなら、全力で守る。それが“強い”ってことだろ?」
崩れかけた床を踏みしめ、少女を抱き上げた――その瞬間。
天井が、音もなく崩れ落ちた。