番外編1 ましゅまろソロ配信
番外編! 平和なだけの日常回をお送りします。
時間軸は17話~20話(アルマ10周年ライブ前)辺りになります。
デビューから2ヶ月。
配信活動も軌道に乗り、ライブレッスンなどアイドルらしい活動も増えてきた。
毎日いそがしい、けど充実している。
スケジュールの合間を埋めるように入れた配信を開始する。
「はぁいどうもぉ4期生異迷ツムリですぅ」
《どうもぉ》
《そろそろ挨拶考えてもろて》
「えー特殊挨拶とかいりますぅ? 私そういうセンスないんですけどぉ」
《絶対いる(鋼の意志)》
《そろそろファンネーム考えてもろて》
《そろそろファンアートタグ考えてもろて》
《そろそろ俺との将来考えてもろて》
「ほらぁ変なこと言うからわらわら湧いてきたぁ。提出物催促してくるマネージャーさんみたい……ん? 最後の方変なの考えさせようとしてる人居ませんでしたぁ?」
《提出物はちゃんと出して?》
《マネージャー不憫……ちゃんと言う事聞いたげてー》
「はぁい今日も指示厨さん達が元気ですねぇ。そろそろ本題入っても良いですかぁ?」
《今ので指示厨呼ばわりは流石に不服》
《こっちがワガママ言ってるみたいな口ぶり腹立つんだが? 本題入って良いけど》
のっけからプロレスのゴングを鳴らしていく配信主。
視聴者の扱いも随分手慣れてきた。
そんな程々な盛り上がりから始まった配信は企画へと移る。
「サムネ見ればわかると思うんですけどぉ、今日はましゅまろ返していこうと思いますぅ」
《やっとかー》
《読まれるかな? wkwk》
ましゅまろ、と言ってもお菓子の話ではない
SNSを利用した匿名のメッセージを募るサービス、要は視聴者からの質問箱だ。
「ではさっそく1個目読んでいきますかねぇ」
『カタツムリってマシュマロ食べれるの? 一応隠し味に塩も入れといたけど』
「はぁい1個目っぽいかなと思って選びましたけどぉ、この人は何を期待してこれ送ってるんですかねぇ。本物のカタツムリは知りませんけど私は食べれますぅ。塩入ってても残念ながら効きませぇん」
《さっそくクソまろじゃねーか!》
《初っ端から塩分濃度高め》
「もっと良い質問なかったのかって? こんなんばっかでしたよぉ。真面目に返事するのもアホらしいのでさくさく行きますよぉ」
『主食はやっぱり葉っぱですか? カタツムリといえば梅雨、梅雨といえばアジサイですよね? 今度送っときますね!』
「わぁお花送ってくれるんですねぇありがとうございますぅ。ちなみに主食葉っぱじゃないんですけど折角なんで食べた方が良いですかねぇ?」
《え、マジで食べようとしてる?(困惑)》
《お前雑草食べるタイプの貧乏人だったのか……?》
《絶対食べちゃダメ。アジサイは毒あるから》
「えっ毒? 危なぁ……あのぅ私なんでこんな命狙われてるんですかぁ? どこかで恨み買ってますぅ……?」
《また暗殺まろかよww》
《塩とかもネタで言ってるだけだろうから安心してw》
《アンチはこんな回りくどいことしなさそうかな》
「そうですかぁ。まあ切り替えて次行きますかねぇ。ここからはリクエスト? っぽいの拾ってきたので連続で読みますねぇ」
『異迷ツムリは所詮アイドル時代の敗北者じゃけェ』
「"ハァ……ハァ…… 敗北者……? 取り消せよ…… 今の言葉……!"」
『ミサトさんの破Q掌返し』
「"行きなさいシンジくん! 誰かのためじゃない! あなた自身の願いのために!! ……あなたはもう何もしないで"」
『あ…あいつを引き込めば…あいつを差し出せば…ほ…ほんとに…ぼくの「命」…は…助けてくれるのか?』
「"ああ~約束するよ~~~~~~~っ。やつの『養分』と引き換えのギブアンドテイクだ。呼べよ……早く呼べ!" ……振るなら普通この先じゃないですかぁ?」
『潰れたカタツムリか潰れたカエルの鳴き声やって』
「グェ……えと、こんなのが聞きたくてこれ送ってきたんですかぁ? というかカタツムリの鳴き声ってなんなんですかぁ」
《マジでなんでもやるなこの女w》
《大抵は困らせたくて送ってきてるんよw無茶振りに応えれるせいで困ってないだけでw》
《このクオリティだし、ましゅまろもリクエストだらけだったろうなぁ》
《こんなんやったらまた増えるわw》
「あっリクエストは嫌じゃないんでどんどん送ってくれて良いですよぉ。じゃないと私なんかに聞きたいこととかないでしょうしぃ」
《なんでそんな卑屈なん?w》
《は? 聞きたいこと大量にあるが?》
《待ってな。クソまろで埋め尽くしてやんよ》
「わ、わぁ嬉しいけどリクエストより困るメッセージ増えそうですねぇ……」
急に向けられた好意?に困惑しつつ盛り上がってるので良しとする。
視聴者からのメッセージの受け答え、それを配信で行うことで新たな視聴者とのやり取りが生まれる。
ファンとの新たなコミュニケーションの形を楽しみながら配信を進行した。
そんなこんなで小一時間。
「今日はこんなところにしときますかねぇ。残りはまた今度ってことでぇ」
《配信する度増えるし無限にできるね! やったね!》
《ましゅまろ尽きるのが先かツムりんの体力尽きるのが先か耐久やる?》
「流石に飽きられちゃいますよぅ。ちゃんと裏で全部読んでるしそれで勘弁してくださぁい」
《こういうとこ意外に律儀なんだよなぁ》
《普段ふざけた存在なだけにギャップあるよな》
「これ褒めてくれてるんですかねぇ? 罵倒はストレートなのに褒めるときは褒めるのと同じくらい罵倒してくるのなんなんですかぁ?」
《だってストレートに褒めると逃げるじゃん》
《今日は褒めちぎって良い日なのか? ツムリカワイイぞ!》
《声真似も良いけど素の声も好きだぞ! 配信頻度高くて助かる! イジメたら良い声で鳴いてくれる!》
「あっすぅ……そ、そのくらいで良いんじゃないですかねぇ? ちょっと居心地悪くなってきましたぁ……」
《へっ口程にもない》
《推すときは強い癖に推される覚悟がなさすぎる》
《アイドル目指してるならもうちょい慣れてもろて》
「ぐぬぅ……ま、まあその話は一旦置いときまして、今日ましゅまろ配信やったのも実はとある企画を計画しているからなんですよぉ」
《ほう企画とな?》
《ましゅまろ関連ってこと?》
「はぁい。今日こうして私宛に送ってくれたましゅまろ読んでみたんですけどぉ、結構人によって毛色が違うじゃないですかぁ」
《せやね》
《声真似リクエストなんかは他じゃあんま見ないな》
「そんなわけでぇ、色んな人のましゅまろ見に行きたいなぁって思ったわけですよぉ。題して『ましゅまろ交換対談』。同期はもちろん先輩方にもお願いする予定でしてぇ、既に何人かには許可取ってますぅ」
《連続コラボ企画か! いいね!》
《先輩にもか! 自分から誘いに行くの珍しいな》
「そうなんですよぉ。新人の癖に生意気かなぁとか考えたらちょっと勇気いりましたねぇ」
先輩を誘うことだけでなく、自分からコラボ企画を立てるのも初めてのこと。
受け入れてもらえるか不安だったが、ひとまず自分の視聴者は楽しみにしてくれているみたいで安心する。
「けど折角誘ったのでぇ、これを気に仲良くして貰えたら嬉しいですねぇ。ふへへぇ」
コラボということは普段自分を見ない視聴者にも会いに行くことになる。
身内ノリでは通用しない、ここから先は配信者としてのセンスが問われることになる。
緊張しつつも、今は楽しみに思えている。
自分もある程度エンタメ業界に馴染んできたのかもしれない、そんな実感があった。