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レプリカのアイドル~声真似系VTuberが天下をとる話~  作者: 独身ラルゴ
第三章 創作者

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第77話 山文プルトの今

 カラオケボックスの一室。

 元後輩を座らせて見下ろす1期生カチュア・ロマノフ。


「さて、言い訳を聞こうじゃないか」


 予期せぬ来訪者は魔霧ティアのマネージャーでありながら、元3期生の山文プルトを担っていた女。

 久々の再開にバツが悪そうな表情で口を開く。


「言い訳も何も……全部知ってるのでは?」

「いいや知らんな。捨てる必要のないものまで捨てた大馬鹿者の考えなんぞ。貴殿こそ知っているのか? ウラノがどれだけ思い悩んでいたか」

「……」


 最初こそ戸惑っていたカチュアも今は落ち着いて、逆に憤っていた。

 

「辞めた選択を責めるつもりはない。あれは貴殿にとっても不幸な事故だったのだろう……しかし、辞めたからといって全ての関係が切れるわけじゃないだろう」 

「それは……そう言ってもらえるのは嬉しいですけど……」

「けど、なんだ?」


 言い淀む女性を追い込むように圧をかける。

 それを見かねた少女が割り込む。


「師匠。ティアのマネージャー、イジメないで?」

「ティア……しかしだな……」


 後輩に窘められ困った顔をするカチュア。

 次いでティアはもう一人を見て問う。


「マネージャーは、ウラノさん、傷つけたの?」

「……そうですね。本当に申し訳ないことをしたと思ってます」

「思ってる、だけ? ちゃんと謝った?」

「っ……」

「じゃあ、ダメだね」


 小学生でも解る道徳的な問いかけに言葉を詰まらせる。

 やがて、ようやく心の内を少しずつ話し始めた。


「どの面下げて会いに行けと言うのですか……自分から一方的に別れを告げておいて。折角ウラノさんも立ち直ったのに、謝りに行っても傷つけるだけじゃないですか……」


 後悔が伝わってくる嘆き。

 優しく臆病、それゆえに傷つける可能性から逃げてしまう。

 その言葉に反応したのは、この場で一番彼女と縁のない人間だった。


「あの、部外者の自分が口出しして良いのか分かんないんスけど……立ち直れてないと思うっスよ。ウラノ先輩」


 ダークは語る。

 自身が対話した初為ウラノの印象を。


「恋愛の話題聞くだけで気分悪くするくらいトラウマなんスよ。今も忘れられなくて、けど一度も会いに来てくれないから……自分はその程度の存在だったんだって、傷ついてるように見えたんス」

「そんなことっ! ……いえ。どう思われても文句言えませんね……」


 否定しかけて、自責するようにその口を紡ぐ。


「馬鹿か貴殿は。その態度がどれだけの人を傷つけてきたか、いい加減自覚しろ。……貴殿の文句で傷つく人間はここには居ないぞ」


 カチュアは叱責する。遠慮のフリで本心を隠そうとするなと。


「マネージャー、ティアがウラノさんの話すると、いつも乗ってきてくれる。配信、見てるよね?」


 ティアは寄り添う。いつもと様子の違う弱気なマネージャーに。

 情緒を乱され、堅く閉じたはずの意志にヒビが入る。


「……安心したかったんです。昔みたいに笑って配信してくれてるのを見て。じゃないと、私が諦めたのも無駄になっちゃうから……」


 逃げた自分に感情のまま行動する資格なんてないと。

 これ以上関わって良いはずがないんだと。

 己を否定し続けた過去を、否定される。


「諦められたのか?」

「……諦めきれるわけないじゃないですか。私だって好きですよ……今もずっと……」

「なら拾いにいけ。まだ間に合う」

「っ…………はい」


 厳しくも優しい、仲間を想ってくれるような言葉。

 俯き、溢さぬよう瞳を閉ざし、飲み込み続ける。


 ようやく本音で語れるようになったところで、改めてカチュアは問いかけた。


「それでプルト。貴殿はこれからどうしたい」

「……私なんかの希望より、ウラノさんの希望を聞いてあげてください。望み通りに動きます」

「まったく……そういうところは昔から変わらんな。だがウラノも本心は言わんと思うぞ。奴もあの頃から変われていないからな」

「……でしょうね」


 互いに知っている初為ウラノの人物像が一致する。

 潔癖で、頑固で、面倒くさい乙女心。

 素直になれない当事者達を見かね、今度は第三者に選択を委ねる。


「ではティアに問おう。貴殿はウラノと共演したいか?」

「? うん。したい」

「ふっ……貴殿らもこのくらい素直だったら可愛げがあるというのに」

「うるさいですね……言われなくても分かってますよ」


 本能の赴くまま即答するティアに笑みを溢す。

 そうして選択肢を絞った状態で再度問う。


「それで? 魔霧ティアのマネージャーである貴殿はどうする?」

「どうするって……」

「大丈夫。マネージャーは、なんでもしてくれる。ティアのためなら」

「何勝手なこと言ってるんですか? なんでもはしませんよ」


 担当タレントのマイペースな横暴に呆れる。

 しかしそのお陰で普段の自分を取り戻せた。

 乱された感情を整え、冷静に判断する。

 今自分がすべきことを。


「けど……責任は取らないとですね。諸々全部」


 一年以上、停止していた時間がようやく動き始めた。 




◇




「っくし!」

「大丈夫ウラノちゃん?」

「「ぶれすゆー」」

「っぁー……配信外までそれ言うのやめん? ちょっと悪寒しただけやから。噂でもされとるんかな?」


 くしゃみするウラノと反応する同期達。

 とある昼下がり、3期生の4人は自宅のテーブルを囲み話していた。


「それで、告知期限迫っとるけどどうなん? アルマさんの説得の方は」

「あーそれね……」

「依然変わらず、難航中」

「その船そろそろ停泊させないと我々諸とも沈没しますぞ」


 ブイバンドフェスの告知、入場者チケットの抽選などを考慮した最終期限が迫っていた。

 絵毘シューコや久茂ダークのようにシークレットゲストとして非公開にする手もあるが、メインの出演グループ3つのうちの1つをシークレットにするのは反感を買いかねない。


 期限までにアルマを説得できなければ別のグループを用立てる、それは予め決めていたことだった。


「ごめん! もー少しだけ待ってくれないかな!」

「もう少しったって、あと1週間しかあらへんよ?」


 誠心誠意頼んで、どれだけ手を尽くしてもアルマは曖昧に断るだけ。

 今まで交流してきたアルマと少々のギャップを感じながら、ジュビアとサタニャの二人は諦めきれなかった。

 

「大丈夫、宛てはある。最後の頼みの綱」

「頼みの綱、というと?」

「直接聞いても取り合ってくれないから、あの人に聞こうと思って」


 本人への直接交渉は諦め、協力を仰ぐことにした。

 導化師アルマに一番近しい、強力な助っ人に。


「今日相談に行く予定なんだ。アルマちゃんに一番詳しい人――――ロカちゃんに☆」


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