第58話 4期生学力テスト①
「学力。古来より人の優劣を決める一つの要素であり、現代に至っては学び舎に通うことを義務とされていますわね」
《北舞ってた》
《遂に4期生もやるのか……バカの公開処刑……!》
「それでは始めましょうか、4期生学力テスト。試験監督はこのワタクシ、ロカ・セレブレイトが勤めますわ」
チャンネル主、ロカ・セレブレイトによる企画コール。
ブイアクトメンバー対象の恒例企画学力テスト。
ロカに続いてゲストの後輩5人が意気込みを語る。
「おう。バッチコイだヨ」
「がんばる。ふんす」
「いやー勉強してないわー。全然解ける気しないわー」
「あ、それ知ってるっス。予防線だけ貼っといてしれっと高得点取る嫌な奴ムーブっスね。ちなみに自分はガチでヤバいっス」
「ぐぬぅ……テストってなにゆえあるんでしょうかぁ? 滅びればいいのにぃ」
《おっと早くも二人ほどヤバそう》
《た だ の 解 釈 一 致》
《普段の言動から分かるもんだなぁ。知性って》
「あら、勉強がお嫌いですのね。貴女達ひょっとしてこう思ってるのでは? 自分が働いてるのはエンタメ業界。バカも好かれるステータスになる、と」
「「うっ……」」
「ええ、確かにバカで売り出してヒットするタレントも居ますわ。けれどそれは撮れ高量産する天性のバカと完璧に計算された養殖バカだけ。努力を怠っているだけの愚か者はむしろ嫌われますわ。というかワタクシが嫌いですの」
「「ぐぅっ……!」」
「そんなわけで素質のあるバカもないバカも等しく叩き直して差し上げますの。覚悟なさい」
「「はぁい……」」
「いや二人共刺さりすぎでしょ」
「やる前から結果見えてるナこれ」
「よかった。ドベだけは、回避できそう」
《リアクション芸人適性は完璧》
《ここまで言っといて他3人の方が成績悪かったら……それはそれで面白いな》
「告知通り、4期生の皆様にはクイズ形式で問題を解いていただきますわ。試験範囲は小学生1~6年で全20問。正答率3割未満のおバカさんには補習を受けていただきますわ」
「あっ小学校レベルですかぁ? ならだいじょぶそうですねぇ。焦って損しましたぁ」
「あらそれは頼もしい。早速問題の方を出題していきましょうか」
《おいおい終わったわアイツ》
《フラグ建築の天才》
期待通りの反応をくれる面々に喜ぶ視聴者達。
企画説明もほどほどに1問目が出題がされる。
「第1問、『おこなう』を漢字で書きなさい」
「あっこれくらいなら自分も行けそうっス!」
「ん、簡単」
「これは誤回答が有名すぎて間違いようがないですねぇ」
《おっ自信ありそう》
《さすがに簡単すぎたか》
問題の回答をそれぞれがフリップに書き出していく。
全員の腕が止まったと思われるタイミングで司会進行が再開された。
「出揃いましたわね。ではまず3人の解答からオープンしましょう」
(センカ)『行う』
(ティア)『行う』
(ダーク)『行う』
《まあ正解よね》
《ん? 二人残したのってまさか……?》
「問題なく正解ですわね。では次はツムリ、貴女の解答を」
「あっ……はぁい……」
(ツムリ)『行なう』
「美しいほどに模範的な誤回答ですわね」
「あれぇ? 一周回ってこっちだと思ってたんですけどぉ」
《ツムリ俺情けないよ……》
《フラグ回収に命賭けてますのん?》
「まあ実はこちらの『行なう』でも厳密には間違いではありませんけれどね」
「え? そうなんですかぁ?」
「ええ。逆に昔は『行なう』が正解だった時代もありまして、今でも『行った』を『いった』と誤読しないよう敢えて『行なった』と表現することもあるんですの。他にも送り仮名の誤りが許容される漢字はいくつかありますわ」
「ほぁ……あ、じゃあ私の答えも正解ってことに?」
「今ワタクシが説明した内容を知っていたら正解にしようと思っていましたが……ただの間抜けなミスだったようなので今回は不正解にしときますわね」
「そんなぁ……」
《ほぇー知らんかった》
《勉強になるなぁ》
《さすがロカせんせぇ博識》
「ただですね、実は今回ツムリよりも酷い解答が居ましたわ……こちらをご覧くださいませ」
(シューコ)『怒ナウ』
《ウッソだろww》
《え、シューコさん……? え、シューコさん!?!?》
コメント欄が驚きの声で溢れかえる。
それもそのはず、普段は比較的真面目なはずの絵毘シューコが盛大に巫山戯た解答をしたのだから。
「シューコさん……貴女わざと赤点取ろうとしてますわね?」
「なんのことですかねー? あー悔しいなー恥ずかしいなー。これはアルマさんのマンツーマン補習授業受けなきゃだなー」
《そういうことかw》
《やってるわこの強火オタクww》
「え? アルマさんの補習……ですかぁ?」
「あら言ってませんでしたか。学力テストはワタクシが担当、そこで正答率3割未満なら補習授業をアルマが担当するというのが通例ですわ」
「なるほどぉ……ちょっと魅力的ですけどぉ、流石に補習は勘弁ですねぇ。なので頑張りますぅ」
言いながら、ツムリは内心追い詰められていた。
(導化師アルマとマンツーマン? ……これ補習回避しないと詰みでは?)
導化師アルマは今や異迷ツムリが演じている別側面、故に同時に存在はできない。
しかし配信内で次の配信企画が決まってしまえば回避のしようがない。
なんとしても赤点を取ってはならない理由ができてしまった。
「こうなっては仕方ありませんわね。シューコ、貴女だけルールを変えましょう。赤点補習もワタクシが担当しますわ。その代わり1位ならアルマとのコラボを設定してあげますの」
「は? ちょ、そういうの先に言ってくださいよ! そしたら満点狙ったんですけど!?」
「真面目に解かなかった罰として1問目不正解のまま続行しますわね」
「ぐぬぬ……」
《残当ですな》
《ズルだめ絶対》
《シューコさん今どんな気持ち? 怒ナウ?》
ツムリの焦りなど知る由もないロカ達は気にすることなく配信を進行する。
「第2問、三角形の面積を求める公式を答えなさい」
「む、なんでしたっけ? 懐かしすぎてちょっとうろ覚えッスね……」
「センカは忘れるほど昔じゃないナー」
「流石グループ内最年少、ある意味一番有利かもね」
問いに対し答えを書こうとしたが、ツムリは腕を止める。
(あれ? でも……必死になって赤点回避しようとするのって異迷ツムリらしくないような? ……異迷ツムリらしさってなんでしたっけぇ……?)
迷いながら、フリップに『異迷ツムリ』の解答を書く。
「では解答オープンですの」
(シューコ)『底辺✕高さ÷2』
(センカ)『底辺✕高さ÷2』
(ティア)『ていへん✕たかさ』
(ダーク)『半径✕高さ÷2』
(ツムリ)『底辺+底辺÷2』
「正答者は2人、ティアさんは惜しいですわね」
「あ、つけ忘れてた。わる2」
「ダークさんは惜しそうに見えて意味不明な式になってますわ。三角形の半径ってなんですの?」
「すみません……雰囲気で覚えてたのを書いてみたっス」
「気持ちは分かりますわ。で、ツムリは底辺という単語だけは覚えてたみたいですわね」
「えぇーなんか聞いたことあった気がするんですけどぉ。底辺と底辺足して2で割ったら最強が生まれるみたいなぁ」
「それどこのなろう小説ですの? 底辺はこの程度も覚えていない貴女のオツムのことですわね」
「わぉ辛辣ぅ……」
《算数の世界じゃ足して2割っても底辺にしかならんw》
《↑この計算式だと底辺✕1.5だぞ》
《これは初の0点ありえるか?》
解答を終えた今もまだ迷っている。
このままじゃダメだ。目的に対して行動が伴っていない。
今はとにかく赤点回避に専念しなければ、と自分に言い聞かせる。
「第3問、じゃがいもなどのでんぷんにとある液体を付着させると青紫色に変色した。その液体とは?」
しかし思い直したところで、自分の持つ知識量は変わらない。
(シューコ)『ヨウ素液』
(センカ)『BTB溶液』
(ティア)『フェノールフタレイン溶液』
(ダーク)『お酢』
(ツムリ)『リトマス紙』
「おや正解はシューコさんだけ、センカさんは初めての誤回答ですわね」
「よっし追いついた!」
「んー。理科嫌いなんだよナ―」
「カッコいい名前覚えてたけど、これじゃなかった。ざんねん」
「まあ違うっスよねぇ。実験で使った気がしたんで書いたんスけど」
「ヨウソエキ? 私の学校では習いませんでしたねぇ」
「ふーん。それで、ここまで正答率ゼロの貴女は何なら習ってるんですの?」
「……道徳、ですかねぇ」
《押忍だけにお酢ってかw? あ、関係ないと。すんません》
《リトマス紙w液体って言ってんだろww》
《道徳習ったのも学校じゃなくてアニメとかだろなぁ》
気づけば3問連続不正解、まさか自身の不真面目をこんな形で悔やむことになるとは。
合格の最低ラインは20問中6問、気を引き締めて次の問題に取り組む。




