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第57話 魔霧ティアの結論

〔魔霧ティア〕

《もっとたくさん遊びたいから早く帰ってきて》


 紅月ムルシェが活動休止を聞いて、皆と同じように投稿した一文。

 端的な文。しかし語彙力不足ゆえに表現しきれなかっただけ。

 凄まじい喪失感。

 心にぽっかりと穴が空いた気分だった。


 ムルシェと友になって日はまだ浅い。それでも数少ない大切な友人。

 そして、友人との別れという初めての経験。

 心は未だ不安定な状態。それでも仕事の予定は変わらない。


 今日の仕事は歌の収録。

 以前から準備していた初オリジナルソングのレコーディング日。


 ちゃんとできるかな。不安に思いながら現場に到着した。

 でもなんでだろう。本当に不思議だけど、今日は喉の調子が良い。

 今なら歌える気がした。

 魔霧ティアの、本気の歌。


 そしてレコーディングは開始する。



 楽曲:『落葉滴る』

 歌唱:魔霧ティア



「"今日も日の目を見られずに 落日迎える"」


 ずっと不自由の中で生きてた。

 私が育った環境、それこそが私のフィールド。


「"枯れ木は孤独に根を張る 大地の束縛"」


 ああ、ようやく分かった気がする。

 ティアが今まで本気になれなかった理由。


「"呼吸一つままならず 言の葉一つ芽吹かない"」


 楽しいとか自由とか、性に合ってなかったんだ。


「"遠目に映る同士達 僕にはない草葉を落とす"」


 この『寂しい』って気持ちこそが、魔霧ティアの本質なんだ。


「"ひとひら 瞳を反らして"」


 今なら本気を歌に乗せられる。


「"ふたひら 瞼を閉ざして"」


 ちょうどいい。1番声を上げたいのは、伝えたいことがあるときだから。


「"ひらひら 脳裏に舞い散る"」


 ティアは今、この寂しいを伝えたい。


「"盛者必衰は世の理だ"

 "生きとし生ける者はみな灯火"」


 もっと友達で居たいよ。


「"心を薪にし焔に焼べて"

 "種火は灰燼と化してゆく"」


 ティアもいつまで居られるか分からないよ?


 だから、


「"青き芽の頃 春も白夜"」


 早く、


「"灯さぬ種火は零土に凍てる"」


 帰って、


「"ずっと痛い ここが痛い"」


 来て。


「"早く僕を 照らして"――――」


 ……ちゃんと届くかな。ティアの歌。




「"新たな大地に生を得る 憧れた世界"

 "誰もが(まばゆ)く輝く 日陰のない場所"」


 魔霧ティアの完成を望んだとき、まるで楽曲制作みたいだって思った。


「"照らしてくれる太陽光 初めてできたお隣さん"

 "言の葉交わし共に生きる 芽吹いた緑枯れるまで"」


 作詞作曲編曲すべて自分、自ら綴る一つの作品。


「"ひとひら 瞳は潤んで"

 "ふたひら 瞼を溢れて"

 "ひらひら ひらりと滴る"」


 歌詞とメロディを私の生き様で奏でる。


「"諸行無常はみなに平等だ"

 "この世に永遠(とわ)など存在しない"

 "変化を恐れ 過去に縋って"

 "霞の幸福()んでいる"」


 もし叶うのなら、孤独な曲にはしたくない。


「"君との日々は 春の宵夢"

 "切なる刹那に想いを馳せる"

 "ずっと居たい ここに居たい"

 "どうか時間 止まって"――――」


 バラードになっても構わないから、音楽は……聞いてもらわなければ成り立たないから。


「"肥え、枯らし、繰り返し 衰え続ける"

 "春待つ日々も何度目か 木枯らし吹きゆく"」


 曲はいい。何度も繰り返し奏でられる。


「"枯れ葉照る 大空の君"

 "死祟る 隣人の君"

 "舞い散り朽ちる 樹木の定め"

 "されど臆することはない"」


 星の数ほどある曲達から気分に合わせて選べる。


「"大地は喰らう 次を育てる"

 "僕は誰かの何かになれる"

 "言の葉枯れさせ大地を追おう"

 "君がまた芽吹く頃のため"」


 それは動画も同じ、やはり生きた記録をリピートできる配信者は曲に似ている。


「"再びみたび 何度でも"

 "ひらひら ひらりと……"」


 そして、どんな曲にも終わりがある。


「"枯樹生華 僕らの希望だ"

 "奇跡の救いを夢に見る"

 "永く灯すより大きく照らす"

 "命の篝火焼き尽くす"」


 一般的に3~6分程度の短時間、そういう意味でも曲という表現は私にぴったりかもしれない。


「"刹那に過ぎ去る儚い春も"

 "幾度も訪れ芽吹きをくれる"

 "ずっと居るよ ここにあるよ"

 "君の帰る場所 いつまでも"」


 活動半年にして初めてのオリジナル曲、ようやく1番のサビってところか。


「"枯れ尽くす その日まで"

 "落葉を降らす"――――」


 さて、魔霧ティアは何分の曲になれるだろうか。


ここまでのご読了、本当にありがとうございます!

第二章完結です……!!


いやー……またやってるよこの作者……。

違うんです不可抗力なんです……展開の都合上仕方なかったというかそれはそれとして可哀想は可愛いというか……(不可抗力とは?)

誤解のないようこれだけは明言しておきましょう。

予定では第五章に物語の収束、第六章で後日談など描いて一旦本作は完結となります。


立ち位置的に第一章は『起:騒動の始まり』、第二章は『承:事態の悪化』を描きました。第三章からは『承』に続いて『転:激動の展開』を経て『結』を迎えます。

また第二章のメインが魔霧ティアだったように今後も各4期生のサブストーリーを描きつつ、異迷ツムリのメインストーリーを展開致します。

ここまでは鬱エンドのイメージが強いかもしれませんが、最後はもちろんハッピーエンド(当社比)です!


と、今後の展望はそんなところですね。

ここでお知らせしましたのはこのようなストレスフルストーリーを生み出してしまったことへのせめてもの償いです……。

それでももし、もしも楽しんでいただけているのなら! 引き続きお楽しみいただけると幸いです!!


さて今後の更新ペースの話になりますが、明後日からしばらく隔日更新となります。

ただ第三章がまだ描ききれていないため途中で更新ペースが落ちるかもしれません。遅筆で申し訳ありません……!


皆様のたくさんの応援のお陰で執筆モチベーションを保てています。本当にありがとうございます!!

叶うのなら……より多くの読者様に応援いただければ! 間違いなくモチベーションの向上に繋がります……! 

心の弱い書き手で申し訳ありませんが、誰にも応援されなくなったら描き続ける自信はないのです……のです……。


もし本作の続きをお望みいただけるのなら、よろしければ布教するような気持ちでブックマーク・評価などしていただけると嬉しいです! 

レビューまでいただけた日にはもう大歓喜越えて有頂天ですね……!!


是非是非今後とも応援いただけると嬉しいです♪

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