表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/138

第30話 魔霧ティアの悩み

 自由がなかった。

 親の束縛の元で育ったから。

 友達は危険、それが母の考え。


 成長して自由を得た。

 でも、自由の過ごし方は知らない。

 友達の作り方も知らない。

 念願の自由は、不自由より息苦しかった。


 暇な時間は歌って過ごした。

 歌が好き、というわけでもない。

 ただ唯一の長所ってだけ。


 外の世界で歌う人を見た。

 楽しそうだ。きっと歌が好きなんだろう。

 友達と笑い合ってる。羨ましい。

 自分に無いものを全部持ってる人達。


 その世界では、自分を偽れるらしい。

 新たな自分を作り上げ、1からやり直せる。

 ちょうどいい。誰も知らない私なら、友達作りを止める人も居ないはず。


 あそこにいけば、友達ができるだろうか。

 私でも、楽しく歌うことができるのだろうか。







 配信を終え、同期との通話を終了した。

 するとすぐに携帯端末のほうから着信があった。

 画面にマネージャーの名が表示されているのを確認し、通話を繋ぐ。


「マネージャー、見てた?」

「はい。5回くらいしか喋ってませんでしたね」

「うん。5回も喋れた」

「……」

「褒めて」

「えっどこを……? ええと……ティアさんにしては頑張りました……ね?」

「むふーっ」

「あ、こんなので良いんだ」


 どこか満足げなティアに戸惑うマネージャー。

 だがもちろん、それで満足して良いわけがなかった。


「どうして今日はダメだったのですか? 前のツムリさんとのコラボでは普通に話せてましたよね?」

「んー……二人きりなら大丈夫。けど、たくさんいると難しい。話に入る、タイミング」

「なるほど……一般論として理解はできます。けどティアさんはもっと頑張りましょう。VTuberにとってお喋りは仕事の一つです」

「むぅ……わかった。でも、ダメで元々、だから」


 何を言ってもマイナス発言をする。

 そんなネガティブなタレントにマネージャーは頭を押さえた。


「……ティアさんはすぐに弱音を吐きますね」

「ダメ? ティアのこと、見捨てる?」

「見捨てたいです。なので諦めたくなったらいつでも言ってください」

「諦めなければ、見捨てないでくれるんだ。マネージャーやさしい」

「仕事ですので。……一応、自己分析が正確なところは評価してますよ」

「やはりやさしい」

「うるさいです。そろそろ本題に入りますよ」


 冷たい言葉を放ちつつも非情になりきれない。

 そんな可愛らしい一面もあるマネージャーにティアは懐いていた。

 照れ隠しに無理やり話を切り替える。


「それで、例の話はそろそろどうですか?」


 その質問にティアは表情を曇らせた。


「んー、まだ無理」

「そうですか……一応今月末までにレコーディング日程を抑える必要があるのですが」

「だって、まだわかんないから。どう歌えば良いのか」


 歌が得意な彼女でも、歌に悩むことがあるらしい。

 それは彼女にとっても初めての試みとなる歌の仕事。


「それほど心配する必要があるのでしょうか? 4期生初のオリジナル曲。最初の一人に選んでもらえるくらいには、ティアさんの歌は信頼されてます」

「……でも、お手本のない歌は初めてだから。折角良い曲なのに、今のティアじゃつまんなくなる、よ?」

「それは……」


 念願のオリジナル曲、すでに曲自体は完成しておりあとはレコーディングするのみ。

 信頼されているからこそ貰えたオファー、しかしその分期待もされている。

 下手なものを出せば今後の4期生全体の期待度に関わるかもしれない。


「はぁ……分かりました。じゃあせめて、ティアさんが歌えるようになるための計画を立てましょう」


 後ろ向きなまま話が進まないよう、マネージャーは説得を試みる。

 しかしその努力も虚しく、ティアは話に集中できていなかった。


 歌とは別に、常に頭の片隅に置き続けている悩み。

 先程参加した配信でも、同期の活躍を見て思わずに居られなかった。

 どうしたら皆みたいに上手にお喋りできるのだろうか、と。


「やっぱり、友達作り、かな?」

「ティアさん? 聞いてますか?」

「聞いてない。考え事してた」

「少しは悪びれてください……悩み事ですか?」

「うん。減らさないとなって、歌枠」

「確かにそう……え? 今歌枠減らすって言いました? あのティアさんが?」


 本気で驚いている様子のマネージャー。

 それほどに歌枠配信は魔霧ティアの大部分を占めていた。


「色々したいなって、コラボとか」

「一体どんな心境の変化があってそんな……いえ、折角やる気になってくれてるのに聞くのも野暮ですね。是非頑張りましょう」

「うん。頑張る」


 約半年、活動方針も安定感してきた頃。

 魔霧ティアは心境の変化により、早くも転機が訪れようとしていた。




==========

カクヨムコン開催中!!

本作も参加させていただいておりますので是非応援いただけると嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ