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第29話 ニュースのお時間です

「ブイアクトニューーース!!」


 配信開始と同時に為されるタイトルコール。

 チャンネル主はブイアクト公式チャンネル。

 配信画面には司会進行役のマスコットに加えて女性キャラの立ち絵が二つ。


「今月のブイアクトニュースのお時間です。司会は毎度おなじみ、ブイアクト公式マスコットのアク丸が務めさせていただきます」


《アク丸くんちわっす》

《毎度のことながら見た目の割にお堅い》

《ニュース待ってた》

《今月トピックめちゃ多そう》


「それではまずゲスト紹介から。お二人、自己紹介をどうぞ」

「あっどうもぉ。4期生の異迷ツムリですぅ」

「同じく。魔霧ティア、です」

「はい。今回は4期生のニュース初参加会ですね」


《来たか4期生の問題児二人》

《問題児しかいない定期》

《しかし今回は4期生屈指のトラブルメーカー二人……大丈夫? ちゃんとニュースできる?》

《アク丸くんまた胃に穴空いちゃう……》


「はい。予想通りの心配コメントありがとうございます。面倒な仕事は胃薬キメてまとめて片付けたい派のアク丸です」

「面倒……? あのぅ今日って普通にゲストで呼ばれたんですよねぇ? 私コラボ呼ばれるときって何故かお説教か恐喝が待ってること多いんですけどぉ」

「……一応今日はお客様なんで小言言うつもりなかったんですけど。日頃の行い見直してくださいとだけ」

「えー毎日自分のアーカイブとにらめっこしてますけどねぇ。ティアさんも何か言い返してやりましょうよぉ」

「ティア達、問題児だって。ふふっ」

「なんで嬉しそうなんですかぁ……?」

「まあ今回このお二人を呼んだのも先月ブイアクト内でちょっとしたブームを流行らせた火付け役だったからでして、折角ですし最初のニュースとして取り上げましょうか」


 司会者が進行を始めると画面上に文字が現れた。

 本当のニュース番組のように、トピックが大きく表示されている。

 『#レンタルカタツムリ』


「最近歌枠配信のタグでよく見かけたレンタルカタツムリという言葉、カタツムリ代表のツムリさんは心当たりありますかね?」

「心当たりというかぁ、これに関しては私ただの被害者ですよねぇ」

「だそうですが、加害者1号のティアさんは何かコメントありますか?」

「ツムリ、便利。自分とデュエットしてるみたいで、新感覚だった」


《相変わらず玩具にされてて草》

《ちゃんと凄い特技なんだけどね……半年も居れば慣れちゃって驚きも薄れるよね……》


「分からない人のために説明しましょうか。きっかけは先月のニュースでも取り上げた導化師アルマさんの10周年ライブ、そこでツムリさんと披露した新曲ですね」

「Re:AL=ミラージュですねぇ。あれは私とアルマさんの曲というより導化師アルマ✕2の曲なんですけどぉ」

「厄介オタクの解釈違いは置いといて、この曲に最初に目をつけたのがティアさんだったわけですね」


《同期が先陣切ってくれたおかげで先輩たちも頼みやすくなった面もある》

《歌企画ネタに敏感なカマキリ》

《毎週歌枠する女》


「ティアさんとはよく連絡取ってるんですけどぉ、お誘い珍しかったんで即OKしちゃったんですよねぇ」

「そして立てられた配信の謳い文句が『声真似カタツムリ借りてきた』だったと」

「それのせいで先輩方の便乗も酷かったんですよぉ。一晩いくらですか? 使用済みでも良いんでレンタルしたいです! とかぁ。おかげさまで色んな声で歌わせて貰ってますけどぉ」

「でも改めて凄いと思いましたよ。誰と歌っても本人が二人歌ってるとしか思えないクオリティ、聞くたびにドン引きさせて貰ってます」

「えへへぇ……え? これ褒めてくれてます?」


《みんなからの扱い酷すぎて泣けてきた》

《こればっかりはイジりやすいキャラしてる方が悪い》

《声真似させるってことは実質一人遊び用の玩具……それってオナ(自主規制)》

《イジりやすい玩具(意味深)》


「そんな流行の企画もありましたということで関連のニュースに続いていきましょうか」


 司会の合図と同時に新たなテロップが現れる。

 『導化師アルマ3週間ぶりの生還』


「10周年ライブから体調不良による3週間の休養経てようやく復帰できたアルマさん。彼女の配信を待ち望んでいた人も多かったことでしょう。ファンを代表してツムリさんから何か一言いただけますか?」

「一言、ですかぁ……」

「……ツムリ? 大丈夫?」

「あっすみませぇん。えと、私はライブで無理してる姿も見てたんでぇ……無事復帰してくれて何よりですぅ」

「おお、意外にも真面目な返答でちょっと感動しました。ただ本人曰くメディア関係の仕事が増えたため配信頻度は落ちてしまうそうですね。少し残念ですが、配信外で彼女を見る機会が増えるということでもありますし、何より彼女の健康が第一ですからね」

「そうですねぇ……私もアルマさんの配信楽しみにしてますぅ。一人の迷い人としてぇ」


《本当に無事でよかった》

《お労しや導化師……》

《異迷ツムリ……お前真面目な受け答えできたのか……?》

《もっと強火オタク発言すると思ってた》


「さて時間も押してますのでアルマさん関連のニュースはそんなところにしておいて、続いては……」


 そのマスコットキャラは見た目に依らずベテランの風格を見せていた。

 タレントでなくとも、マネジメント業で長年ブイアクトを支えてきた一員。

 キャラの濃いゲストに振り回されることなく、テンポよく淡々と進められる。

 そしていくつかのトピックを取り上げ、気づけばニュースは終盤に差し掛かっていた。


「最後のニュースは……【ギャンブルお嬢様また破産】、あっいつものやつですね」

「それリアタイしましたぁ。競馬で単勝100万賭けて惨敗してたやつですよねぇ」

「ロカさんも投資家としては成功してる凄い人なんですけどね。何故かギャンブルでは絶対勝てないと。『また日本経済に貢献してしまいましたわ……』というダメな方の決めゼリフも最早聞き慣れてしまいましたよ」

「あの人ほんとにお嬢様する気あるんですかねぇ」

「……と、これで先月のニュースは以上になります」


《今のが全部1ヶ月の出来事か……相変わらず濃すぎる……》

《この内容とメンツで時間内に捌き切るアク丸くん流石すぎる》


「今月もコラボ企画が多くなりそうですね。月末の2期生主催ゲームイベントと……あっ、こちらは今週末ですね。カチュアさん主催の【ブイアクトカラオケ大会】、今回は4期生代表としてはティアさんにお誘いがあったとのことで」

「うん。ティアは歌くらいしか取り柄ないから」

「えーティアさんいっぱい良いところありますよぉ。もちろん歌が凄いのは言うまでもないですけどぉ、時間貰えるなら2時間くらい語りますけどぉ?」


《出たな限界ヲタツムリ》

《普通にちょっと聞きたいわ》


「動画の尺的にも勘弁してくださいねー。ツムリさんは何か告知しておきたいことありますか?」

「私は特にありませんねぇ。あっ今日の夜はゲーム配信の予定ですけど、ホラゲなんで是非見に来ないでくださぁい」


《自枠の宣伝かと思ったんだけど、今来ないでって言った?》

《告知で来るなは草》

《前回決まった罰ゲームのやつかw》

《おーけー絶対見に行く》


「逆効果みたいですね」

「うぅ……ホラゲってなんで存在するんですかぁ……?」

「ツムリさんみたいな人の反応を楽しむためでしょうね。さて、良いお時間ですし締めましょうか。ここまでのお相手はアク丸と」

「……異迷ツムリとぉ」

「魔霧ティア」

「でした。それではまた来月お会いしましょう。お疲れ様でーす」


 挨拶ののち、画面上では配信が終了した。

 リモートでのコラボではあるが、通話はまだ繋がっている。


「はい、お疲れ様でした。お二人共ゲスト参加ありがとうございます」

「あっお疲れ様でしたぁ」

「うん。お疲れ」

「また機会がありましたら公式から依頼させていただきますね。それでは」


 そう言ってアク丸くんの中の人は通話を切った。

 残された二人無言の中、先に口を開いたのはティアだった。

 

「ツムリも、お疲れ」

「はーいお疲れさまですぅ」

「……ツムリ、すごいね。お喋り上手で」

「そうですかぁ? 私なんかすぐ余計なこと言うんで怒られてばっかりですよぉ」

「ううんすごい。ティアは言いたいことも、言えない。歌しか、できないから」

「えっと……ティアさん?」

「……そろそろ切る。またね」

「あっはいまたぁ……」


 一方的に通話を切られてしまい一人残される。

 上手く言葉が見つけられなかったことに後味悪く感じ、一人不安を吐露する。


「確かに私ばっかり喋ってたかもぉ……ティアさん大丈夫ですかねぇ」


 先の配信を思い、反省と心配が心に残った。


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