番外編11 対談コラボ:ロカ・セレブレイト
「ごきげんよう。セレブレイト家の令嬢、ロカと申します。日中からお集まりいただき光栄ですわ」
《こんにちわぁ……あれ? ごきげんよう?》
《ごきげんよーですわー》
「あのぅロカさぁん。ここ私のチャンネルぅ……」
「ツムリ。ステイ」
「アッ良い声……ふぁい……」
《チャンネル主黙らせたww》
《まあ喜んでそうだし……ウィンウィン?》
告知通り開始したロカ・セレブレイトとのコラボ配信。
何故かゲストが仕切る形で始まった。
「それにしても今日は良い天気ですわね」
「…………はっ! 思わずトリップしてましたぁ。え、天気の話? ひょっとして私がつまんなすぎて会話のネタに困りましたかぁ……?」
「馬場状態良好、競馬日和ですわね」
「あっギャンブルお嬢様のご挨拶でしたかぁ」
「ということで始めましょうか。異迷ツムリ初めての競馬予想配信」
「どういうことなんでしょうねぇ……?」
《初の対面コラボだと思ったら競馬?w》
《しかも初めての競馬w謎の企画チョイスw》
「貴女が前に配信で言っていたのでしょう? 対談コラボの企画に困っていると。なら対談相手に企画を任せるのも一興ではなくて?」
「確かに言いましたけどぉ。だからってなんで競馬なんですかぁ?」
「ツムリの枠では好きなことを好きなだけ語っても許されると聞きまして」
「誰がそんなことを? むしろ私にロカさんの好きポイント語らせて欲しいんですけどぉ」
「あら嬉しい。けど今日はゲストを立てると思って我慢してくださる?」
「ぬぅ……わかりましたぁ」
《上手くいなしたなぁw》
《隙あらば語ろうとするからな。そのオタク》
始まりの挨拶も程々に、宣言した通り競馬予想の話に移る。
「さて、出走まで1時間もありませんし予想を始めましょう。今日のレースは距離1800芝、逃げ有利。人気馬は上から4、11、7。こちらが馬と騎手の過去戦績ですわ。それで、ツムリはどこに賭けますの?」
「へ? どこと言われても……なんですかこの大量の資料。お勉強会始まりましたぁ?」
「それも間違いではありませんわね。データは競馬最大の武器ですわ」
「うへぇ……時間までにこれ全部読まないとダメなんですかぁ……?」
《いきなりガチすぎるw》
《確かに本気でやるとそうなるけどもw》
「と、これは普段ワタクシがやっていることですので。初心者はあまり難しく考える必要はありません。こちらの出馬表だけ見て、オッズの数値が低い馬ほど人気で勝つ可能性が高いと思っていただければ」
「なるほどぉ。でも普通に考えたら人気順に賭けるのが安牌な気がするんですけどぉ。他に注目するところとかあるんですかぁ?」
「レース前ならパドックで馬体の健康状態を見たりですわね。ほら、あの馬なんか良いケツしてますわよ?」
「ロカさん? お嬢様がケツとか言って大丈夫ですかぁ?」
「おっと失敬」
《競馬配信だとちょっと様子おかしくなるのよね》
《真面目に見られがちだけど結構面白お姉さんなんですよこの人》
「まあ最初は予想も何もないでしょうし、気になる名前に100円だけ賭けるとかもありだと思いますわ」
「そうなんですかぁ? ちょっと気が楽になりますねぇ。……あっ、じゃあこの子が良いですぅ」
ツムリは出馬表の中の名前一つに印をつける。
名前だけを見て選んだ馬、その名は『オシダイスキー』。
「またクセの強い名前の馬を……差し馬だからか今レースでは人気も半端。ほとんど注目されてませんわね」
「それはそれはぁ。ますます応援しなきゃですねぇ。えい、500円」
「買ってしまいましたか……まあ少額ですし。初めての競馬、思いのままに楽しんでくださいませ」
《確かに名前は目についたけどもw》
《勝つ気あるのだろうか?》
《スパチャ感覚で馬券買ってそう》
「これで馬券購入も完了。少々待ち時間がありますわね。一応対談で呼ばれてますし、話したいことがあれば付き合いますわよ」
「えっ良いんですかぁ!?」
「あ、長くなりそうなのは無しで。手短に答えられる質問なんかをお願いしますわ」
《語りキャンセルw》
《注意しなきゃまともに会話できない女》
「えー残念……じゃあ競馬始めたきっかけとか聞いてもいいですかぁ?」
「きっかけ? お金が大好きだからですわね」
「わぁい守銭奴お嬢様ぁ……」
「冗談ですわ。まあお金が好きなのは本当ですけれども」
《守銭奴w》
《本当に冗談だろうか?》
「昔親が馬を買ってまして、馬主だったんですの」
「馬主さんですかぁ。そのお馬さんは競馬のレースに出たり?」
「出ていましたが、結果は残せませんでしたわ。世間の記憶には残らなかった馬……それでもワタクシにとっては共に育ち、その背に乗せてもらったり、大切な思い出があるんですの」
「なるほどぉ。素敵なエピソードですねぇ」
「そんな関わりから競馬の世界に触れることが多く、他の馬の歴史なんかにも興味を持ちまして。ちょうど今日出走する馬の中にも名馬の産駒が居たりしますわ」
「産駒って、有名なお馬さんの子どもってことですかぁ?」
「そう。折角ですしお話しますわ。かの名馬の歴史を……」
いつも通りに振る舞いつつも少々テンション高めのロカは饒舌に話す。
そんな先輩の語りを聞いて時間が経過し。
「と、そんな話をしてたら出走の時間ですわね」
「あっ、ファンファーレ?でしたっけぇ」
「その通り。戦士を称える開戦の合図ですわ」
『メインレース、今スタートしました!』
「出走しましたわね。出だしは上々」
「8番がんばれぇー。そういえばロカさんの予想は何番ですかぁ?」
「今回は3、4、7、10のボックスだけですわ」
「えーと……よくわかんないですけどお互い当たると良いですねぇ」
「そうですわね。お互い予想がまるで違うので同時に当たることはないのですが」
「え?」
《実質敵同士なんだよなぁ》
《ミリしら競馬すぎるw》
距離1800レースがスタート。
1レースはそれほど長くなく、まもなく最終コーナーに差し掛かる。
「やはり11番は失速しましたわね。このまま順位をキープしてくれれば……」
「あっ8番また抜きました! 行けそうですぅ!」
「え? いやいやそんなまさか。ここから差し切るなんて……」
『オシダイスキー来た! オシダイスキー来た! オシダイスキー抜いた! そのまま1着でゴールイン!!』
「そんな……ありえないことが……」
「やったぁ当たりましたぁ」
《ビギナーズラック来たww》
《大穴だなー。オッズいくらだっけ》
「くっ……単勝40倍、締めて20000円の払い戻しですわね」
「え、そんなに? 嘘ぉ……もっと賭けとけばよかったですぅ」
「ギャンブルでタラレバは厳禁ですわよ。欲を深めすぎると沼にハマりますわ」
「むぅ。気をつけますぅ。それにしても一緒に勝てると愛着湧きますねぇ。なんだかこの子推せる気がしてきましたぁ」
「それも競馬の楽しみ方の一つですわね。好きな馬や騎手に賭けたり、推し活に近い感覚かもしれませんわ」
「そう聞くと良い趣味ですねぇ。私は基本金欠なんで難しいかもですけどぉ」
「競馬で増やせば良いのでは?」
「はっ! たしかに!」
「冗談ですわよ。それで破産されたらワタクシが責められそうなのでやめてくださいまし」
《ロカさん唆さないでwその子本気にしちゃうんでw》
《絶対ギャンブルやっちゃダメなタイプ》
誘われるままに始めた競馬予想配信。
経験者の助言もあり知らないなりに楽しむことができた。
「では最後に、あれだけ話して終わりましょうか」
「ですねぇ。実はロカさんにアドバイスいただきましてぇ。んんっ……"先輩をコラボに誘いづらいなら、ゲストに次のゲストを紹介して貰うという手もありますわよ?"……とぉ」
「目の前で自分の声で話されるとむず痒いですわね……けどまあ、提案したからには紹介しますわ」
「何から何までありがとうございますぅ!」
《隙あらば真似るw》
《ロカ様ありがとー!》
「紹介するのはワタクシのチームメイト。可憐で元気な踊りを見せてくれる後輩――――ニオさんですわ」
「え゛っ゛……いきなりニオさんですかぁ……?」
「あら。ひょっとして苦手ですの?」
「いえその、遠くから見てる分にはとっても可愛くて推し甲斐のある方なんですけどぉ……あの人バリ陽キャじゃないですかぁ。対面するのはちょっと眩しいというか、他の先輩で慣らしてからというかぁ」
「それ他の先輩方に失礼では? どのみち全員とコラボするのでしょうし、さっさと済ませてしまいなさいな。ワタクシから連絡しときますわよ」
「うぅ……ロカさんやっぱり厳しぃ……」
先輩を誘うという懸念材料はなくなったが、同時に逃げ場も失ったのかもしれない。
次回のコラボ相手はニオ・ヴァイスロード。
性格のかけ離れた彼女とどんなコラボになるのか、不安しかなかった。




