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番外編10 ソロ作戦会議

 いつものソロ配信。

 特に企画もない雑談枠として開始した。


「はぁい。それでは作戦会議始めますよぉ」


《はぁい》

《作戦会議ってなんの?》


「何って対談企画ですよぉ。悩んでることが2つほどありましてぇ。マイ迷子の皆さんなら相談聞いてくれますよねぇ?」


《おっいいぞ。聞くだけならな》

《悩みならどんどん話してくれ。酒の肴にちょうどいいんだよな》


「うわぁホントに聞くだけ聞いて解決方法くれなさそう……毎回思うんですけどうちの民度どうなってんてすかぁ?」


《ごめんてw協力するつもりはあるからw》

《視聴者は配信主に似るって言うよね》


 適当言いながらも何だかんだ乗ってくれるのはいつものこと。

 そんな調子でツムリは悩みを話し始める。


「それで相談1個目なんですけどぉ。先輩ってどう誘ったら良いんですかねぇ……?」


《あっごめん協力できそうにないかも》

《そんなもん俺が聞きたい》


「役立たずですねぇ。でも確かに、私の配信なんか見てる人たちには難しいですよねぇ」


《喧嘩か? いつでも買う準備はできてるぞ?》

《ホントそういうとこなんだよなぁ》


「えー今の失言ですかぁ? じゃあ一応ごめんなさいですぅ」


《謝意を感じない……絶対何が悪かったか理解してない》

《もういいよ今に始まったことでもないし……》

《なんで誘えなくなったん? 同期とかアルマちゃんとか誘えてたのに》


「いやぁいざ誘うとなると同期と先輩って全然違いますねぇ。アルマさんはあっちから来てくれましたしぃ」


《気にしすぎじゃない?》

《付き合いの長さで言えば同期も先輩も同じくらいでは》


「そんなことないですよぉ。私達はまだまだ新人ですけど、先輩たちはみんな憧れのアイドルですからぁ。皆さんも芸能人のSNSアカウントくらい知ってますよね? そこに突然共演しませんか?ってDM送れますぅ? 見ず知らずのオタクからそんなこと言われたら恐怖じゃないですかぁ」


《まあわからんでもない》

《同じ事務所に居て見ず知らずなのかw》


「相手がどう思ってるかなんてわかりませんからぁ。それで何か案はありますかぁ?」


《あっちから来てもらえるように仕向ける?》

《いっそ凸待ちとか》


「あっなるほどぉ。じゃあ今から凸待ち開始しますぅ」


《え今から? 事前告知なし?》

《また無謀な賭けをww》


 凸待ち、つまり配信中に他者からの連絡を募ること。

 とはいえ通常ならこんな無計画に凸待ちを開始することはない。

 配信している間にこの募集連絡に気づいてもらえるか、さらに気づいても協力してくれるかはそのメンバーとの関係値次第……。


「良いんですよぉ。ダメで元々なんでぇ。むしろしっかり事前準備した上で誰も来ない方がショックですぅ。はい募集ぽちぃ」


《あーあ始めちゃった》

《いいんじゃない? 初めての凸待ちゼロ人もある意味取れ高でしょ》


「じゃあ待ってる間に次の議題に移りましょうかぁ」


 呆れのコメントを無視して話を進めるツムリ。

 1つ目の相談に目処がつき、話題を切り替えた。


「それで対談企画なんですけどぉ……ぶっちゃけましゅまろ読みってマンネリじゃないですかぁ?」


《あっ……》

《うーん否定はしない》

《面白いんだけどね。代わり映えはしないよね》


「そうですよねぇ。先輩方を飽きられかけてる企画に呼ぶわけにもいかないですし。何すれば良いんですかねぇ」


《対談ってスタイルは良いと思うからアレンジ加えるかな》

《欲望丸出しで相手にやって欲しい配信企画提案しようぜ》


「そんな先輩方に物申すなんて恐れ多い! ……もちろん妄想ならいくらでもしますけどぉ」


《妄想wちょっと気になるw》

《その話kwsk》

《同期なら多少の無礼も許される!》


「ほう同期……では今からちょっと妄想にふけらせていただきますねぇ。もしかしたらうっかり声に出ちゃうかもしれないんですけどぉ、まあオフレコってことでぇ」


《よしきた!》

《誰から行きます? やっぱりティアちゃんから?》


「ティアさん? そんなのASMR一択でしょう!! あのカワイ綺麗なボイスですよ? けど本人そういうの疎そうなんで期待薄ですよねぇ。なのでよろしければ全力でサポートさせていただきたい! マイクがないというなら私が献上しますぅ!!」


《この勢いよwいやわかるけどw》

《中におじさん入ってない?》

《金欠オタクにバイノーラルマイクはキツイと思う》


「うーん一応値段調べときますかぁ。……あ、想像の50倍高かったんでお金貯めますぅ。さすがに終わったら返して貰わなきゃですねぇ……」

 

《待て。マイク買うってことは異迷のジメジメASMRもあるってこと!?》


「あ、私はやるつもりありませぇん。他の人に貸すかぁ、ネットオークションで売りますかねぇ。魔霧ティア使用済みってつければプレミア付きそうじゃないですかぁ?」


《はいアウト》

《でも売ってたらどんだけ高くても競り落とすかも……》

《趣旨変わってきたなぁ!》


「ふぅ……ちょっと熱くなり過ぎたんで次の人いきましょうかぁ。ダークさんは……んー。ギャルゲーですかねぇ」


《ほう。確かに本人やらなそう》

《一応女の子なんだし乙女ゲーにしてあげたら?》


「わかってませんねぇ。ダークさんはキラキラしたイケメンがウジウジしてたら絶対拳がウズウズするタイプですよ? あの人メンタルがイケメンなんでギャルゲー得意だと思いますぅ。あ、けどノンデリでもあるんで速攻バッドエンドの可能性もありますねぇ。折角なら泣きゲーやらせて沼らせるのもありですしぃ」


《妙に詳しいなwギャルゲーにもダークくんにも》

《ホントに日頃から妄想してそう》


「さてお次はシューコさん……あ、どうしよ怒られるかな……でも見たい! ホラゲでビビり散らかしてるシューコさんがどうしても見たいんですぅ……!」


《それは見たくないわけがない!》

《ほう? 続けたまえ》


「でもあの人結構ホラゲ耐性あるんで最恐って言われてるやつ渡しましょう。「全然余裕でしょ?」からの「ひゃあ!」からの「べ、別にビビってない! 虫! 部屋に虫が出ただけ!」を期待しますぅ」


《お前とは旨い酒が飲めそうだ》

《ホラー苦手なやつがなんか言ってら》


「センカさんは一番悩みましたねぇ。なんでも卒なくこなしちゃいますしぃ。そこで考えたんですけどぉ、アニメの同時視聴して欲しくないですかぁ? 頭良い人の考察聞いてみたいですよねぇ」


《おっ悪くない》

《意外と真面目に良い案》


「考察となるとミステリーなんですかねぇ。設定盛り盛りのバトル系とかロボ系もいいですしぃ。初見作品一緒に見れたら絶対楽しくないですかぁ?」


《頭良い人の解説はホント助かる》

《展開予想聞いて愉悦したいけど普通に当ててきそうで怖いw》


「はー……あれ? 話してたらもうこんな時間?」


《好きな話してると時間過ぎるの早いよなぁ》

《推し活してるときが一番輝いてるよお前》


「そういえば凸待ちしてましたよね? え、0人? 私人望なさすぎ……?」


《凸待ちってそういうもんさ》

《一人目がなかなかハードル高いからなぁ》


 気軽に始めておきながら結局ショックを受けるツムリ。

 そんな彼女を視聴者らが宥めていると、別の声が配信に乗った。


「盛り上がり過ぎて声かけづらいんですのよ。凸待ちする気ありますの?」

「……え、あ!? 来ました!?」


《お、この声は》

《ロカ様だ!》


「ごきげんよう。ロカ・セレブレイトですわ」

「ロカさぁん! ホントに助かりましたぁ……このまま誰も来なかったらどうしようかとぉ……」

「そんな後悔するなら考えなしに行動するのはやめなさいな」

「はぁい……」


《さっそく説教されとるw》

《もっと言ってやってください! ロカ様の言うことなら間違いなく聞くんで!》


「けど来てくれたってことはもしかしてぇ……?」

「コラボでしたわね。もちろん構いませんわ」

「やった! てことで次回の対談相手はロカさんに決定ですぅ!」


 楽しく妄想話を繰り広げ、次のコラボ相手も決まり万事解決……と、このときは思っていた。

 「結局2つの悩み解決してなくない?」と気づいたのは配信終了して数時間後のことだった。


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