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番外編8 ましゅまろ対談:絵毘シューコ

 配信開始直前、共演相手の様子を伺う。


「そろそろ時間ですねぇ。準備は良いですかぁ?」

「通話繋いでんだから聞かなくてもわかるでしょ」

「それもそうですねぇ。今日は覚悟しといてくださいよぉ? 絶対ビックリすると思うんでぇ」

「へぇ。それ宣戦布告? いいわ、絶対驚いてやんない」

「では始めましょうかぁ」


 相変わらず態度は素っ気ないが、嫌々というわけでもなさそうだ。

 そうして絵毘シューコとのコラボ配信を開始させた。


「開けましたぁ。シューコさん! 私のチャンネルにようこそですぅ!」

「はいはいお邪魔しまーす」

「ご飯にします? お風呂にしますぅ? それとも私……とましゅまろ読みますぅ?」

「その並びに入れないでくれる? 断りたくなるんだけど」


《はじまた!》

《いつもながらツムリちゃんには辛辣w》


「で、いつもはどんな感じでやってんの? 一応普段から募集してるのと、アンタとコラボするって告知したら二人に対する質問とかも集まったけど」

「そんな丁寧に準備してきてくれたんですかぁ? 踏んだり蹴ったりですねぇ」

「至れり尽くせりな」

「そうとも言いますねぇ。ん? シューコさんに踏んだり蹴ったりしてもらえるならそれはもう至れり尽くせりですし間違いないのでは?」

「キッしょ」

「キッしょいただきました! 助かりますぅ!!」

「うわオタクめんどくせー……」


《このヲタクw今日いつにも増して様子おかしいなw》

《なんか仲良くなった? ぎこちなさがなくなったというか》


「あっ気づかれちゃいましたぁ? 前のオフコラボの後一緒にお酒飲んで仲良くなれたんですよぉ。いやぁ酔ってふわふわしてたシューコさん可愛かったですぅ。あっもちろんいつものクールなシューコさんも素敵なんですけどね?」

「早口やめろ? 捲し立てられると反応に困るんだわ」

「あっ失礼しましたぁ。でもそうやって面と向かって注意してくれるのもシューコさんの良いところですよねぇ」

「もうええて。さっさと企画進めなさいよ」


《コラボあとに飲み会? 何故アーカイブが残ってないんだい?》

《シューコさんも心なしかちょっと優しいな》


「それでは早速読んで行くんですけどもぉ。一通目で今日の配信の方向性をお伝えしたいと思いますぅ」

「方向性?」

「すぐに分かりますのでぇ。では読み上げますねぇ」


 意味深な返答をしつつ、一呼吸置いてツムリは最初のましゅまろを読み上げた。


『"シューコさんにファンサしてやってください!"』


「!? 声っ……あんたさぁ……」

「はぁい。シューコさんへのファンサと言えばやっぱりアルマさんの声しかありませんよねぇ。どうですかぁ? ビックリしましたぁ?」

「……別に、驚いてないし。心臓に悪いってだけだから」

「それをビックリと言うのではぁ?」


《不意打ちの声真似は誰だってビビるw》

《確かにシューコさん特攻のファンサwけどなんか不機嫌?》


「一応言っとくけど、シューコはアルマさんが好きなんであってあんたの声真似が好きなわけじゃないから」

「もちろん分かってますよぉ。でも私の声よりアルマさんの声の方が好きですよねぇ?」

「当たり前でしょ? あんたの声とか微塵も興味ないわ」

「それはそれでちょっと傷つきますけどぉ……まあ今日は特別ってことで、私が持ってきたましゅまろは全部アルマさんの声で行きますねぇ」

「えー……まーいいけど。けど聞いてテンションどうなるか分からんから先シューコのやつ読んでいい?」

「もちろんですぅ。どうぞどうぞぉ」


《微塵もwちょっと可哀想w》

《複雑そうだねぇシューコさん》


 シューコの希望から読む順番が決まり、そのまま1通目から読み上げ始めた。


『毎日の平均お絵描き時間!』


「やっぱりお絵描き関連の質問は多いわね。普段は日課の30分、たまに2時間とかやってる日もあるわ。まあ言っても趣味だし、気分次第よ」

「凄いですよねぇ。毎日アルマさんのイラスト上げてて」

「なに、暇人とでも言いたいの? 別にそれだけやってるわけじゃないわよ。配信見てるときとか手持ち無沙汰になるし」

「そんなこと思ってませんよぉ。私はお絵描き全然ダメなんでぇ、毎日凄いなって思いながら拝見してますぅ」

「ああうん……毎回爆速でいいねしてくんのよねコイツ……」


《シューコさんのチャンネルのメインコンテンツだしね》

《裏でも異迷ツムリが異迷ツムリしてるようでw》


『迷い人歴何年になります?』


「8年4ヶ月と10日」

「わぁ即答。記念日大事にするタイプの女性ですねぇ」

「何よ悪い? 逆にアルマさんのこと推せなかった空白の1年ちょっとを今でも悔やんでるから、その自戒もあんのよ」

「うーん重たい……けどその重さが良い!」

「何にでも良さ見出すじゃん。この全肯定オタク」


《うーん名誉迷い人》

《オデモ オモイオンナ スキ》


『罵ってください! ウチのツムリを!』


「なんで私ぃ……? しかもウチのって、どちら様ですかぁ?」

「で、リクエストあったわけだけど罵って良い?」

「まあシューコさんにしてもらえるならやぶさかではないですけどぉ」

「うわやる気失せる……まあでもリクエストだし。陰キャ、ゲーム下手くそ、クソザコナメクジ」

「うーん……もうちょっと感情込めてもらって良いですかぁ」

「……ソムリエぶんのやめてくれる? そういうとこガチでキモい」

「あっそれそれ! その冷めた言い方が良いんですぅ」

「チッ……めんどくさ……」

「舌打ちまで!? ちょっとサービス良すぎませんかぁ!?!?」


《コイツwとどまるところを知らないww》

《ごめんちょっと分かる……罵倒はやっぱこうじゃないと……!》


「ん。シューコが持ってきたのはそんなとこね」

「色んな意味でありがとうございましたぁ。ではバトンタッチですねぇ」

「ふぅ……おっけ、心の準備できた。バッチコイ」


 シューコのましゅまろ読みを終え、今度は配信主のターン。

 ツムリは声を変えて読み始める。


『"ヲタツムリ。それはヲタクなカタツムリの通称。現在該当する個体は1体しか認められていない絶滅危惧種。内向的な性格ながら限界化すると距離感がバグると知られており、未だ謎に包まれている部分も多い。その謎を解明するため、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった……あとそろそろこの調査隊にも名前が欲しいと思っている"』


「いや長いわ。アルマさんの声で変なまろ読んでんじゃないわよ」

「長めの方がお得感あるかなぁと思いましてぇ」

「で、この長文まろが言いたかったことって結局最後の部分でしょ? ファンネーム寄越せって言われてるわよ」

「あっ調査隊の名前ってそういう意味ですかぁ……残念ながら思いついてないのでまだお預けですぅ」


《クソまろなのに良い声過ぎてホントのニュース番組っぽく聞こえるw》

《うん。名前はもう半分諦めてます……》


「あっ次が今日最後のましゅまろですぅ。今度は珍しく普通の質問なんでご安心くださぁい」

「珍しくって……まあなんでも良いか」


『"アクスタ部屋に何個飾ってる?"』


「これは前のコラボでお部屋の状況話したから質問来た感じですかねぇ。ちなみに今ちょうど30超えたとこですぅ。2ヶ月で大分充実してきましたぁ」

「いや多すぎるわ。買ってるグッズもアクスタだけじゃないし」


《総額は……聞くのが怖いな……》

《散々限界化しといてVTuber知って2ヶ月ちょいってマ?》


「いやー我慢できなくってぇ。そういうシューコさんはどうなんですかぁ?」

「こっちはアルマさんの今までのやつ全部。同じで30個くらいか?」

「羨ましいですねぇ。古参の人の前でこういう話するのちょっとだけ申し訳なくなりますぅ」

「別に、ファン歴が長いだけよ。ずっと同じ熱量で推せてるわけでもないし……」

「……"そんなこと気にしてるんだ。可愛いね、シューコちゃん"」

「ん゛っ゛……ちょっと、いい加減して欲しいんだけどっ……!」


 不意に導化師アルマの声で囁かれ、堪らずシューコが反応する


「あのさ……あんま声真似で喜びたくないの分かる? でも当然声も好きだから嫌でも反応しちゃうのよ……」

「声真似じゃなければ良いんですかぁ?」

「はぁ? そりゃ……本人の声なら文句なんかあるわけ無いわよ」

「なら大丈夫ですねぇ」


 あまり心象は良くなさそうだったが、ツムリは大して心配していなかった。

 シューコの言う問題点は、既に解決できていたから。


「だって、今日一回も声真似してないんでぇ」

「は? 何言って…………は!?!?」


《?????》

《え? 声真似じゃないって……マ?》


 シューコと共に視聴者らが混乱する中、一人だけ知っていたツムリが今配信のネタバラシをする。


「というわけでぇ。ここでシークレットゲストの紹介ですぅ。どうぞぉ!」

「はーい! 実は配信開始からずっと居ましたー。道化を導く道化こと導化師アルマでーす♪」

「あ……あ……」


《嘘ぉ……》

《ずっと居た!? ツムりんのやつ読んでたのも本人だったってこと!?》


「えへへぇ。驚いてますねぇ。アルマさん、今日はサプライズのご協力ありがとうございましたぁ。今の心境はどうですかぁ?」

「いやぁみんな良い反応してくれますなぁ。ツムりんの代わりに声当ててるときとかも愉悦がとまりませんでしたよ♪ いつも褒めてくれる後輩の罵倒間近で聞くのも新鮮だったしね」

「あっ確かにぃ。シューコさんも流石にアルマさんの前だと猫被っちゃいますからねぇ。さて当の本人はどうですかねぇ?」


 アルマと会話している間も黙っていたシューコに問いかける。

 すると彼女はか細い声を発し始め、


「ア……ルマさ…………わ、わ゛ぁ゛……」

「え!? 泣いた!?」

「あ、あわわわ……ご、ごめんなさいぃ!!!」


《泣いちゃった……w》

《唐突に本物現れて感極まったかw》


「大丈夫? 驚かせちゃってごめんね?」

「ぃ゛、いえ。嬉し泣きみたいなもんなんで。お見苦しいところを……あ、異迷ツムリは絶対許さない」

「酷い……けど今回は完全に私が悪いですからねぇ……」


《うん。ファンの気持ちを弄んではならない。可愛かったけどもw》

《一応喜んではくれてるみたいでよかったw》


「けどアルマさん、よくこんなお遊び企画みたいなのに時間割いてくれましたね?」

「たまたま暇だったから! ってのもあるけど、ツムリちゃんのこの企画、同期はシューコちゃんが最後なんでしょ? じゃあ次は先輩誘い始めるんだろうなって思ったらさ、一番乗りが良いなって思ってね。こっちから声かけたの♪」

「うわずる……良いな……」

「え? シューコちゃんも誘ってくれる? 今日のお詫びにどんな企画でも参加するよー」

「ホントですか!? え、お忙しいのに申し訳ない……けどこんなチャンス滅多にないか……?」

「そんな遠慮しなくて良いよーただの先輩後輩なんだから♪」


《よかったねシューコさん》

《さすが導化師。アフターケアもばっちり》


 サプライズでやりすぎた分、後輩のメンタルを気に掛けるアルマ。

 そしてもう一人の後輩に問いかける。


「てことでツムりん。次のコラボ相手、予約して良いかな?」

「もちろんですぅ! 希望していただけて光栄ですよぉ!!」


 ましゅまろ対談4回目、同期最後の一人とのコラボを終えると同時に、次の共演相手が決まる。

 次回は記念すべき一人目の先輩、その相手はツムリが一番最初に出会ったVTuber、導化師アルマに決定した。


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