番外編4 ましゅまろ対談:久茂ダーク
「はぁいましゅまろ対談3回目……なんですがぁ、どうしましょうかぁ。ねぇダークさん?」
「そうっスねぇ。少なくとも仲良く雑談ってわけにはいかないっスよ」
《お? 開幕ギス?》
《喧嘩と縁遠そうなメンバートップ2って言っても良さそうな2人なのに》
「実はですねぇ、こんなましゅまろが来たんですよぉ」
いつもと異なる不穏な空気で開始する配信。
ツムリは画面を操作し次のテキストを表示させる。
『ブイアクト最弱と噂の二人がコラボするそうですが、どっちの方がゲーム下手ですか?』
「ブイアクト最弱ぅ? 別に下手じゃないんですけどぉ?」
「右に同じ、断固抗議するっス!」
《え???》
《あ、うん。そう思いたいならそれで良いんじゃないかな……》
《ダークくんまで自覚ないのかー》
「いやいやいや。自分は初見のゲームが多いだけっスよ。慣れれば普通なはずっス」
「ですですぅ。大体他のメンバーと対戦したこともまだないですしぃ」
「「少なくともこの人には負けない(ですぅ)(っス)」」
「「え?」」
《そして戦いの火蓋は切って落とされた》
《今日も日本は平和だなぁ》
《自分より下を探してる時点で下手って認めてるようなものでは?》
「ということでぇ、今日は白黒つくまで連戦。負けるたびにましゅまろ読むっていう対戦形式でゲームやっていきますぅ」
「臨むところっスよ。売られた喧嘩は即購入の久茂ダークっス」
「種目は古き良き対戦パズルゲーム『テトソス』。シンプル故に負けたら言い訳できないものを選びましたぁ。ちなみにダークさんご経験の方はぁ?」
「子供の頃ちょこっと遊んだことあるっスね」
「私は最近配信で見かけた程度ですねぇ。なので条件はほぼ同じかとぉ」
《実力見るゲームとしては良いチョイス》
《両方ほぼ初心者かぁ……泥仕合になるに一票》
「それでは早速始めていきましょうかぁ。対よろですぅ」
数千人に見守られる中、平和的に喧嘩する配信者二人。
それぞれ通信対戦の準備をしてゲームが始まる。
次々と落ちてくる多種形状のブロックピースを積み、規定の範囲内で埋め尽くされた横一列のブロックが消えるゲーム。
敗北条件は積み上げたブロックが高さ上限を超えること。
そして1試合目が終了。
試合時間は5分と経たなかった。
「ハァハァ……なんとか勝てたぁ……」
「くっ……あとちょっとだったんスけど……」
《嘘でしょ……?》
《えーと……熱い接戦でしたね?》
《ここまで酷い試合初めて見た(真顔)》
《両方自滅してただけww》
試合結果はツムリの勝利。
ただし互いに消した列数は10列未満という悲惨な結果に。
「ま、まぁ最初は仕方ないですよねぇ。一部知らない操作方法もありましたしぃ」
「ピース回転させるボタン気づいたのも中盤以降なんで! にしてもパズルゲームって言う割に結構反射神経も使うんスね」
「それですぅ。意外に落ちるスピード速くてぇ、回転させて置き場所決めてって考えてると間に合わないんですよねぇ」
「うんうん。特にあの空気椅子みたいなヤツ邪魔過ぎるんスよねぇ」
「あっ分かりますぅ! あれ考えた人絶対性格歪んでますよねぇ」
《言い訳タイム始まったw》
《ゲーム性どころか制作者の人格まで否定しやがったww》
《間に合ってないのは頭の回転では……》
《これでゲーム下手じゃないは無理あると思うでやんす》
「あっコメント欄荒れてきたんで進めましょうかぁ。それでは敗者のダークさぁん、ましゅまろをどうぞぉ」
「仕方ないっスね。負けは負けなんで潔く読むっス」
促されるままダークは最初のましゅまろを読み上げる。
『次は何を砕く予定ですか? 僕の頭蓋とかどうです?』
「うわぁなにこれぇ……」
「ツムリさんのとこのましゅまろはヤバイって聞いてたんで自分も対抗してヤバそうなの持ってきたんスよ」
《ぶっ飛んでる奴居るなぁ》
《次はって、過去にも何か砕いてる……?》
「ちなみに知らない人のために補足しておくとぉ、ダークさん定期的に何かを壊す配信してるんですよねぇ。瓦割ったり、リンゴ握りつぶしてジュースにしたり、晩酌のツマミにくるみ割ったり、うっかりマウスやコントローラー握り潰したりぃ。破壊衝動でもあるんですかぁ?」
「危ない人みたいに言わないで欲しいんスけど!?リクエストされたときにしかやらないっスよ! 事故ったヤツもあるっスけど……」
「なるほどなるほどぉ。リクエストされたら頭蓋も砕くとぉ」
「それ普通に死んじゃうと思うんスよ! ほんとこの人どんな気持ちで送ってきてるんスかね……?」
「推しに介錯してもらいとかですかねぇ? 私もちょっと理解できないですぅ」
《頭蓋を握るってことはその経過で頭撫でてもらえるってこと? 悪くないかもしれない……》
《↑普通に撫でてってお願いすればええやん。どのみち断られるだろうけど》
《さらっと言ったけどくるみ割るって素手で? 十分危ない人では……?》
《握手会なくて良かったね……ダークくんのファン達》
「まあこういうのはちょっとしか来ないっス。他のましゅまろは普通なんで安心してください」
「ちょっとなんですかぁ。私と真逆ですねぇ」
「こんなのが大量に……逆に気になってきたっス。だいぶ操作にも慣れてきたんで次は勝つっスよ」
「えーホントですかぁ? まあ精々頑張ってくださぁい」
《ん? なんか調子乗り始めてる? 一回勝った程度で?》
《ほっとくと天の果てまでツケ上がるぞこのメス。是非わからせられてもろて》
本来の企画趣旨であるましゅまろ読みもしつつ、ツムリにヘイトが集まってきたところで第二回戦開始。
「次のピースは……なるほど。じゃあこっちスね」
「あれあれぇ? ダークさん序盤の割にかなり積み上がってませんかぁ?」
《よそ見すんなwそんな余裕ないくせにw》
《いやこのゲーム序盤は積むゲームでして》
《何故1列ずつしか消そうとしないのか……》
「あっ縦棒。良いタイミングっスね」
「おおー。一気に3列もぉ……ってあれ? なんか急に下から積み上がって来たんですけどぉ!?」
《そりゃ3列も消せば妨害も飛ぶさ》
《対戦パズルゲームだからね》
《これ初攻撃ってマ?》
「いやぁ沢山消えてくれると気持ちいいっスね」
「あっ地面が近くなったから落ちるまでの時間が短くぅ……あっあっまた増えたぁ!」
《これはもう無理ぽ》
《生意気カタツムリの悲鳴が心地良い》
「しゃあ! 勝ちっス!」
「ぁぁ……どうしてぇ……」
《おめっとー》
《ダークくんよくやった!》
《ないっすー調子に乗ったバチが当たったな》
「あれぇ? なんかダークさんが勝ったことより私が負けたことのほうが喜ばれてませんかぁ?」
《ソンナコトナイヨ? よっしゃ》
《気の所為だって。ざまみろ》
「ダークさぁん皆が虐めて来ますぅ!!」
「うーん庇いたいのは山々っスけど……ツムリさんは日頃の行い見直した方が良いような気がしてきたっスね」
「そんなぁ……もういいですぅ。薄情なみんなのことなんてほっといてましゅまろ読みますぅ」
《不貞腐れつつも素直w》
《ゲームにも異迷ツムリの扱いにも慣れてきたダークさん》
『ゲームまで鈍足にならなくてもええんやで?』
「くっ……今まで隠してきたんですけどぉ、実はゲーム下手指摘まろも結構来てたんですよねぇ……これ読むと指摘更に増えそうで嫌だったんですがぁ、これは負けた自分への戒めですぅ」
《中々ゲーム関係突っ込まれないと思ったらw》
《ちゃんと自分を罰せれて偉い! でも今まで逃げてきたのは偉くない!》
《つ蝸牛歩》
「鈍足っスかー。自分は焦って突っ込みすぎるから慎重にやれって言われるっスね……」
「ゲーム下手にも色々あるんですかねぇ……おっと間違えた。下手じゃない、下手じゃないですよぉ」
「下手じゃないっス! 次行くっスよ!」
《やっぱ自覚あるんじゃねーか!》
《受け入れた方が楽になるってw》
まるで言い聞かせるように連呼し強引に進行する。
次いでゲーム再開して2連戦。
ダークの勢いは止まらなかった。
『どうしてすぐ死んでしまうの? 強靭そうな殻は飾りなの?』
『"次こそはぁ……いやそろそろ指も温まって来たんでぇ"……なかなか本気がでんでん虫』
「うぅ……最初は勝てたのにぃ……」
《成長スピードの差かな……》
《どうしてこんな目に に にw》
ましゅまろからもリアルタイムのコメントからも煽られ嘆くツムリ。
「いやぁやっぱり自分下手じゃないみたいっスね。最弱の称号はツムリさんに譲るっス」
「むぅ……センカさんの配信で勉強してきたんで行ける気がしてたんですけどねぇ」
「そうなんスか? じゃあ今ならセンカさんにも勝てるかもしれないっスね!」
「"ハ? センカがダークなんかに負けるわけないダロ? なめんナ"って言いそうですねぇ」
「うっ……今本人に言われたのかと思ってぞわっとしたっス」
「ほんとですかぁ? じゃあ次は精神攻撃も兼ねてぇ……"この声で勝負してみるヨ"」
《盤外戦術使い始めたw》
《勝たないと自分のましゅまろ読むだけの企画になるからなw》
そうして次の試合を開始。
ゲームの慣れはダークの方が早かったようだが、ツムリもようやく追いついてきていた。
そして……。
「ああー! 負けたっス!」
「"ヨシ!" ……はぁぁー。危なかったぁ」
《おお。やっと勝てた》
《なんかちょっと上手くなった? センカちゃんのおかげか!》
《声真似でゲームも上手くなるってなんなんw?》
連敗記録は3回でストップ。
ましゅまろ読みのボールもダークに渡される。
『あのーこの辺に鼓膜落ちてませんでした? 久茂ダークさんって方の配信中にないなったんですけど……へ? すみませんもう一度言ってもらっても?』
「あぁ……ダークさんの爆音事故被害者の方でしたかぁ」
「ほんといつも申し訳ないっス……」
《テンション上がると段々声のボリューム上がるよねw》
《最早毎配信のノルマまである》
《ふっ甘いな。こちとら鍛えられすぎて鋼の鼓膜身についちまったよ……》
ゲームしてはメッセージ読んでを繰り返す。
勝敗は一進一退、良い塩梅に拮抗した。
そんな争いを経て2時間ほどが経過。
「5勝5敗、結局引き分けっスね」
「はぁい最弱なんて誰も居なかったってことでぇ」
「そうっスね! じゃあ最後のましゅまろ読むっス」
《せやろか……?》
《そういうことにしとてやるかー》
『同期と先輩で仲良い人1人ずつ挙げるとしたら?』
「仲良い人っスかぁ。先輩はまだ話したことない人ばっかっスけど、強いて言えばリリ先輩っスかね。前にコラボしてもらったときご飯の話で盛り上がったんスよ」
「あれですねぇ。リリさんも嬉しそう和みましたぁ。まるでお婆ちゃんと食べ盛りの孫を見てるようでぇ」
「え、そんな風に見えてたんスか?」
《リリ婆様w》
《自枠でも言ってたなぁ。是非家に招いてフルコース振る舞いたいって》
《いっぱい食べる君が好き》
「それで同期はやっぱりシューコさんですかぁ? なんか隠してるみたいですけどぉ、」
「んー否定はしないっスけど……一応黙っとけって言われてるんで今は言えないっスね」
「公式から匂わせキマシタぁ! 今夜はこれで勝つるぅ!」
《ほう? 隠すような間柄が?》
《いいのか? 匂わせなんかしたら存在しない概念ファンアート増えるぞ》
「さて配信も終わりなんですがぁ、一つご相談がありましてぇ」
今日の企画が終了し配信を締め括る頃。
改まった様子でツムリはダークに問う。
「今度同期でオフコラボやろうと思ってるんですけどぉ、ダークさんも参加してくれますかぁ?」
「みんなで? 良いっスね! そんなの断るわけないっスよ」
「ダークさんならそう言ってくれる思いましたぁ!」
《前言ってたやつか》
《着々と準備進めてるみたいで関心関心》
「ティアさんは裏で聞いたんでぇ。あとはシューコさんだけですぅ……」
「? そんな不安になることあるんスか?」
「だってぇ。シューコさん私のこと避けてるみたいですしぃ。このましゅまろ対談も誘いたいんですけど中々機会がなくってぇ」
「じゃあシューコさんは自分から誘っとくっスか?」
「良いんですかぁ!?」
《おお! 強力な助っ人!》
《シューコちゃん配信で公言してたからなぁ。一番苦手なメンバーは異迷ツムリって》
「全然構わないっスよ。世間体気にする人なんで同期全員参加ってことなら断ることもないと思うっス」
「さっすが理解者ぁ! ついでに次の対談のお誘いもお願いできたりぃ……」
「あー……それは流石に自分でやって欲しいっス。1対1なら本人から誘うのが筋だと思うし、シューコさんそういう不義理なやり方一番嫌いだと思うんスよ」
「うっ正論痛ぃ……わかりましたぁ」
自分のことを嫌う同期。
元々人付き合いが得意な方でもない。
完全に嫌われてしまわぬよう、慎重に誘う機会を見計らうツムリだった。