番外編3 ましゅまろ対談:向出センカ
「オウ。来てやったゾ」
「はぁいいらっしゃいませぇ。ということで2回目のゲストは向出センカさんですぅ」
《センカさんいらっしゃいませぇ》
《お邪魔するヨ》
《視聴者さんもいらっしゃいませぇ》
配信者同士、また視聴者同士挨拶を交わす。
同期らしく仲良く配信、するかと思いきやセンカは不遜な態度を取った。
「それでツムリ。センカが言った条件覚えてるカ?」
「そうでしたねぇ……コラボ配信受ける代わりに問題出すから答えられなければ即終了とぉ……」
《そんな条件決めてたのか》
《即終了!?》
《同期なのに既に上下関係ありそうな二人w》
「ちなみに問題もましゅまろから拾ってきたヨ。是非ツムリに出題して欲しいって来ててナ。中々の難問だヨ」
「あっ無理そう……私こう見えて全然勉強できないんですよねぇ……。皆さん折角集まってくれたのにごめんなさぁい。もうすぐ解散のお時間ですぅ」
《諦めはっやww》
《そりゃセンカちゃんから難問とか言われたら誰だってビビるw》
《こう見えてって言うか、最初から賢いとは思ってないから気にしなくていいぞ》
「じゃあ出題するゾー」
難問という言葉にそれぞれ慄く中、問題の内容を告げる。
「10分以内にセンカの良いトコロ100個言エ」
「うぅ……へぁ?」
《おっと予想外の方向に難問》
《100個かぁ……確かに多いけど》
《こーれ得意科目では?》
「マー無理なら可愛くお願いすれバ30個くらいにマケてやっても……」
「え? そんなので良いんですかぁ? えぇと」
特に驚く様子もなく、センカの温情を聞かずにツムリは口を開いた。
「センカさんといえばまず海外に詳しいところですかねぇ。海外生活の話も分かりやすくて面白いんですよぉ。経験豊富でお話がお上手っと。話せる外国語は確か英語の他に中国ロシアフランスドイツでしたっけぇ。ほんと凄いですよねぇ。日本語も訛りはあるけどとっても丁寧でぇ。あその訛りもすこぶる可愛くってぇ。国語のお勉強も得意なんですよねぇ? 数学社会英語もぉ。でも理科だけは嫌いって言ってましたねぇ。完璧そうに見えて欠点があるところも可愛いらしいですぅ。朝は目覚ましなしで起きれるんでしたっけぇ。偉いですよねぇ。でもどれだけ遅く寝ても同じ時間に目覚めちゃうから日中のお仕事は辛いとも言ってましたねぇ。なんだかポンコツロボットみたいで可愛いですよねぇ。あとぉ」
「オー……」
時間制限も考慮し、ツムリは口を挟む隙もないほど早口で語り始めた。
そのままノンストップで続き、次にセンカが声を発したのはちょうど10分が経過しようとしていた頃。
「――――そうそう前に見たゾンビ倒すゲーム。本当にお上手でしたねぇ。でもたまに驚いたときに出る『ミャ゛っ!?』って声もとってもキュートで堪りませんでしたぁ。あ、声と言えば夜眠そうにしながら音ゲーやってたときのフワフワボイスとかもう最高でぇ……」
「ん、ストップ。さっきので100個だナ」
「えっもうですかぁ? プラス100個行っときません?」
「ノリノリ過ぎんダロ。嬉しいけどちょっと恥ずいナ……」
《うーんこれは100点》
《推しでもここまで語れる自信ないな……ちょっと敗北感》
《バカだけどヲタな私がV転生したら無双だった件》
「ひょっとしてセンカの配信全部見てんノ?」
「もちろんですぅ! 推しのことは全部知りたいじゃないですかぁ」
「ん? 推しってセンカのコト? まだデビューしたばっかダロ?」
「むしろ新人だからこそ推し甲斐があるんですよぉ。配信全部追うのも時間かかり過ぎないしぃ。みなさんの魅力はデビュー配信で十分教えてもらいましたからねぇ」
《それはちょっとわかる》
《配信歴長い人の新参ファンって肩身狭く感じるときあるよね……》
《ヲタは誰しも古参面したくなる生き物だからね》
「そういえばぁ、どうしてセンカさんのところにこんなましゅまろ来たんですかねぇ? 私宛ての問題なんてぇ」
「あーそれナ。ちょっと前に配信で話してたんダヨ。センカは褒められたくてVTuber始めたんだって」
「言ってましたねぇ。あのとき長文コメント送るか迷って我慢したんですよねぇ」
「リアタイかヨ。まあいいヤ。それで噂によるとツムリ、雑談でも推しの話延々駄弁ってるトカ?」
「だってぇ、センカさんほど珍しい人生経験も無いんでそれ以外話すこととか思いつきませんしぃ」
《会話デッキ推し活と天気しかない女だぞ》
《聞いてて飽きないから良いんだけどねw》
「半分冗談だったんだがナー。もっと聞いても良いケド、今日は配信企画あるんダロ?」
「ですねぇ。残念ですけど続きはまたの機会にぃ。早速センカさんのましゅまろ味見させていただいてもぉ?」
「いいゾー」
既に喋り尽くした気もしつつ、配信開始から随分経過してようやく本題に突入した。
『日本と海外どっちの方が長い?』
「センカのとこはこういう質問が一番多いナ」
「あー確かに気になりますよねぇ。それで回答の方はぁ?」
「流石に日本だヨ。色々飛び回ったケド海外居たのは全部で7年くらいカ?」
「それでも長いですよぉ。私耐えられる気がしないですよぉ」
「慣れれば大したことないヨ。まあ今は海外どころか家すら出るの億劫だけどナ」
《家すらw今どきの日本人に染まってしまったかw》
《海外生活の話とか雑談のネタ困らなそう》
《一回り年下なのに経験で勝てる気がしない……》
『スペックツヨツヨムカデ……ひょっとして蠱毒経験者の方?』
「なわけねーダロ。こちとら中身は普通の人間ダヨ」
「コドク? ぼっちだったんですかぁ?」
「ちげーヨ。蠱毒は昔の呪術ダナ。壺にムカデとか毒虫大量に詰めるんダヨ。で最後に生き残ったヤツで最凶の毒を作るとかナントカ」
「わぁエグい……こんな可愛いのになんて怖い想像してんですかぁ?」
《確かに勝ち残ってそうではあるw》
《最凶の毒(舌)だったりして?》
『ムカデ人間って映画、知ってる?』
「? 聞いたこともないナ」
「あー……センカさんは知らなくて良いヤツですぅ」
「ツムリ知ってんの?」
「視聴者さんにおすすめされてちょっと調べましてぇ……完全に罠でしたぁ」
《一人で再現できないヤツじゃん。これ聞いてきた奴はなに期待してんだ?w》
《ほう? 知らんのか?》
《同時視聴キボンヌ》
「ン? いいゾ。今度同時視聴するカ」
「するんですかぁ!?」
「オウ。罠だろうと売られた喧嘩は全部買うことにしてるからナ」
「わぁ強者の風格ぅ……センカさんも挑発されることあるんですかぁ?」
「センカのとこはファン層2種類居てナ。センカのこと褒め称える派とセンカの能力測るために煽る派。センカは白足と黒足って呼んでるヨ」
「へぇ。ファンネーム2つもあるんですかぁ」
「まあナ。まとめて呼ぶときは蛇足共って呼んでるヨ」
《センカさん煽る勇者とかおるんか……レスバ勝てる気がしないんだが》
《蛇足多すぎてもはや百足どころじゃないw》
『学校とVTuberって両立できるの?』
「できるゾ。流石に通信制の高校だけどナ」
「へぇ。通信制って勉強どんな感じなんですかぁ?」
「学校行くのはたまにダナ。普段はリモート授業聞いてレポート課題提出してル。問題簡単だから片手間で終わるケド」
「センカさんくらい頭良かったらそうですよねぇ……」
テキパキと質問の受け答えをするセンカ。
淀みない回答を聞いて彼女の要領の良さを再認識する。
またこんなましゅまろも。
『前はPythonでしたねー。次は何の言語勉強しますー?』
「えっまた新しい外国語覚えてるんですかぁ……?」
「アー違う違う。これプログラミング言語のことだナ」
「プログラミング? ってもしかして前にコラボ配信してたぁ?」
「そうソレ。エルちゃん先輩に教えて貰ったんだヨ。誘われてセンカも興味あったからサ」
「なるほどぉ。というかこのましゅまろひょっとしてぇ」
「口調的にエルちゃん先輩本人からカモナ。プログラミング仲間増やしたいって言ってたシ」
「はぇー。私にはチンプンカンプンな世界ですぅ」
「読むだけなら英語より簡単だったヨ」
《わかる。プログラム書けるけど英会話は一生無理》
《あのときのエルさんウッキウキだったもんなぁ》
匿名の質問箱ゆえ本人かは分からないが、知的なセンカらしい期待のされ方だ。
こうして数件のましゅまろを見ただけでも傾向はなんとなく分かる。
センカへのましゅまろは珍しい経験に興味を持った質問が多い。
以前のティアのましゅまろは友達というわかりやすいテーマに沿った意見や質問だった。
そして企画主のツムリはというと……。
「センカのはこんなもんで良いカ? そろそろお前も見せろヨー」
「そうですねぇ。では今回のクソまろ3選行っときますかぁ」
《見る前からクソまろ認定やめたもろてww》
《流石にコラボ2回目となると熟れて来てるなw》
『コンクリートガリガリ食べるってホント!? 今度10キロくらいお裾分けしますね!』
『声に出したい日本語 軟体動物門腹足綱有肺目』
『ロイコクロリディウムって思わず口ずさみたくなるよね。お前の天敵をおびき寄せる寄生虫の名前さ』
「オオウこれは……だからナニ?って言いたくなるナ」
「ですよねぇ! センカさんも言ってましたけどぉ、私も中身人間ですからねぇ?」
《なんたいどうぶつもんふく……何? 読めんw》
《おいおい発想微妙に被ってんじゃねーか。クソまろ職人さん達もうネタ切れですかぁ?(煽り》
《寄生虫か……ファンネームもうこれで良いか? ロイコク……やっぱ長いわ。ボツで》
「ツムリのとこ視聴者同士でも煽り合ってんノ?」
「たまに私抜きで勝手に盛り上ってるんですよねぇ。別に楽しんでるならそれで良いと思いますけどぉ、喧嘩だけはしないでくださいねぇ」
「お前も大概優しすぎんナ……」
ツムリの視聴者層の一端に触れて呆れるセンカ。
そうして一通り配信企画をやり終えたところでツムリは思い出したように口を開いた。
「あっそうだぁ。珍しくまともな質問まろが来てたんですけどぉ、読んでも良いですかぁ?」
「え、普通に読めば良いダロ。クソまろしか読んじゃダメな縛りでもやってんノ?」
「それもそうですよねぇ。何故か許可取らないといけない気がしちゃってぇ」
《ツムリに普通のましゅまろ……だと……?》
《最早異常に慣れすぎて普通が異常な件》
『4期生って全然オフコラボとかやんないよね。ひょっとして不仲?』
「いやぁ不本意ですよねぇ! こんなにも仲良くやってるって言うのにぃ!」
「いや仲良くはできてないダロ。現にツムリとの対面コラボ今日で初だゾ」
「裏切られた!? えぇ……私としてはメッセージ送って返してくれるだけでも満足なんですけどぉ……」
「根が陰キャ過ぎんだよナー。じゃあ今度全員集まってオフコラボでもするカ?」
「え!? 良いんですかぁ!?」
《何! オフコラボだと!(ガタッ》
《待ってた。本当に待ってた》
「いやお前ラ期待しすぎダロ。どんだけコラボに飢えてんダヨ」
「だってぇ中々誘われないですしぃ、自分から誘って断られるのも怖いですしぃ……そ、それでいつ!どこでやりますかぁ!」
「え? 知らん。全部ツムリが決めて良いゾ」
「へぁ?」
「大体皆が大人数のオフコラボ誘わないのって日程調整とかメンドイからだし、呼ばれれば参加するからやりたい奴が企画すれば良いんじゃネ? ホラ、ちょうど連続企画もやってて誘いやすいダロ?」
《うわぁ……なんかザ・日本人って感じ》
《飲み会好きだけど幹事したくないから誘われるまで誘わないとかいう伝説のクソムーブじゃん》
《陰キャには酷な無茶振りしますねぇセンカさん……》
「そんなぁ……でも参加してくれるなら頑張りますかぁ……」
不意に決まったオフコラボ、しかし企画プランは全て丸投げ。
楽しみと不安のハーフ&ハーフな心境で2回目の対談も無事終了した。