表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信長のアレを千回クリアした俺が戦国最強の軍師に転生したのに、いきなり桶狭間が消えてるんだが(ていうか、おまえら全員シナリオ無視すんな)  作者: 犬上義彦
第7章 波乱の清洲会談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/98

(7-14)

 酒の飲めない信長は淡々と桃を口に入れていた。


「ああ、酒井殿」と、思い出したように忠次を呼ぶ。「その方、海老掬いなる踊りが得意だそうだが、余興に一つ披露してくれぬか」


「あ、いや」と、忠次は言葉を濁す。「かの踊りは拙者が今川家に住まいしていた若殿のお供をしておりました頃に披露していたものでございまして、今は封印いたした次第でございます」


「新しき若殿に披露すれば良かろう」と、刺すような目を流す。「のう、信康殿」


 目をぱちくりとさせながら口いっぱいに頬張った飯を飲み込む作兵衛信康を横目に酒井忠次は軽く頭を下げた。


「申し訳ございませぬが、今川の記憶と共に忘れ申した」


 意地を張る忠次に、浮かれたざわめきが静まる。


 と、その緊張を打ち破るように、藤吉郎が着物の裾をまくり上げながら広間の中央に転がり出た。


「余興と言えば拙者、この藤吉郎めにお任せくだされ」


 帯を締めたまま上半身を脱ぎ、ヤンキー座りで鼻の下を伸ばし頭を掻く。


「サルじゃ、サルじゃ」と、家臣たちが床を叩いて笑い出す。


 膳にのったクルミをつかむと、床の上でたたき割って実をつまみ口いっぱいに頬張る。


 そんな様子を見て、「サルよ、わしのもどうじゃ」と、家来たちから木の実が投げつけられ、ほいほいと拾っては口に入れる藤吉郎に、今度は信長が桃を一切れ放った。


 口で見事に受け止め、果汁を唇の端から垂らしながらそれを飲み込むと拍手喝采が沸き起こる。


 令和の俺からしたら行儀の悪い余興だけど、藤吉郎の機転に感じ入ったのか、酒井忠次が涙を流していた。


 宴会が終わって俺は牢屋に閉じ込められた。


 城の北側のじめじめとした区画にある小屋で、太い角材の格子戸で塞がれている。


 俺を押し込め、鍵をかけた藤吉郎が格子の向こうから手招きした。


 ――ん?


 そばに寄ると、手を差し込んで短刀を俺に寄こした。


 本多忠真から譲られた今川の短刀だ。


「どういうことだ?」


「おぬしの物だから返すだけだ。汚れは落としてあるぞ」


「なんの罠だ?」


「そう勘ぐるな。これをどう使うかはおぬし次第ということだ」


「お館様の指示か」


「わしはおぬしの味方だぞ。出世したいからな」


 質問の答えになっていないし、どこをどう信用しろというのだ。


 とはいえ、さっきのサル踊りを思うと、こいつの腹の底はよく分からない。


「あの余興は酒井殿を助けようとしてやったのか?」


「ふん」と、鼻で笑う。「お館様のご機嫌取りも仕事の内だ」


 照れ隠しのように視線を逸らすこともなく、真っ直ぐに俺を見つめながら言い切る。


 だが、それこそが本心を隠しているのかもしれないのがこいつの分からないところだ。


 デイブも化け物だが、藤吉郎も得体の知れない魔物だ。


 こういうやつじゃないと、天下なんか取れないのかもしれない。


 俺が黙り込んでいると、「さっさと受け取れ」と、面倒くさそうに短刀を放ってよこす。


 とっさに受け取った俺は短刀をズボンのポケットにしまっておいた。


「寧々殿に言われた通り、おぬしに力を貸しておるのだ。ありがたく思えよ」


「借りを作ったとは思わないぞ」


「貸しを作ったつもりもないわい」


 そう言い残すと、藤吉郎は調子の外れた鼻歌を歌いながら去っていった。



感想・ブクマ・評価ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ