(5-3)
だが、証拠はないし、デイブがどこにいるのかも分からない。
そもそも俺は今どういう状態なんだ。
頭を殴られて気を失ったんじゃなかったっけ?
脳内モニターが点灯しているから自分も織田の軍議に参加しているように思ってしまうけど、実際にはそこ――丹下砦――にはいないんだよな。
俺はステイタス画面を呼び出してみた。
武将情報から《状態》タグを選ぶと、《坂巻悠斗:沓掛城》と出てきた。
ということは、俺は桶狭間から自分が指示したとおりに沓掛城に運ばれたということか。
だが、ならばなぜ俺は殴られたんだ?
薄れていく意識の中で、かすかに聞いた声を思い起こす。
『やはり、お館様の言っていたとおりだったか』
あれは藤吉郎の声だったような気がする。
丹下砦に到着したときに、藤吉郎に使いが来て、あいつは信長の本陣へ呼ばれたんだった。
そのときに、『サカマキが怪しいから見張れ』と言われたんだろうか。
さっきの丹下砦での軍議の様子からは、織田信長が俺のことを疑って保険をかけていたことは明白だ。
だとすれば、もう藤吉郎も俺の味方ではないのだろう。
イヤな予感がよぎる。
――俺は生きているのか?
藤吉郎と前田利家に殺されているんじゃないのか。
でも、ならばゲームオーバーで脳内ディスプレイも死んでいるはずだ。
俺は沓掛城でまだ生かされているのか?
《アクティブモードを再開します》
脳内ディスプレイが通常の画面に切り替わった。
――ん?
気絶させられていたのが、どうやら意識を取り戻したらしい。
目を開けるとそこは薄暗い小屋の中だった。
米俵や薪などが積んである。
俺はそこの床で寝ていたようだ。
「目が覚めたか」
声をかけられて体を起こそうとしたら、上半身を縄でぐるぐる巻きにされていた。
俺は囚われの身ということらしい。
「無理に起きなくてもいいだろ。そのまま転がってろ」
藤吉郎だ。
甲冑を脱いだ着物姿だが、雨で濡れたのを着替えたのか、清洲の時よりこざっぱりした少し良質そうなのをまとっている。
「ここはどこだ?」
沓掛城だというのはステイタス画面で分かっていたけどたずねてみた。
「沓掛城の物置小屋だ。利家と酒井殿を呼んでくる」
耳を澄ましても音は聞こえないから、雨はやんだらしい。
梅雨時らしいじめっとした空気がほこりっぽい臭いと共に床にたまっていて、にじみ出る汗が不快だ。
――俺も着替えたいな。
縛られてるのに、思い浮かんだのはそんなことだった。
風呂も入ってないから髪の毛もゴワゴワだ。
令和ではそこまで清潔好きというわけでもなかったけど、戦国の衛生感覚というのはやはり俺には合いそうにない。
山もないし、温泉なんてこのあたりにはないんだろうな。
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