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 と、そこへ土手の方から声がした。


「おう、ずいぶんとかわいい女子(おなご)じゃねえかよ」


 俺と同じ高校生くらいの年頃の男が三人こちらへやってくる。


 なんだよ、野犬の次は狼藉者(ろうぜきもの)かよ。


 一人は太って毛深い熊のような大男だが、残りの二人はひょろっとした細い体に鼻水を垂らして、いかにもひ弱そうな子分タイプだ。


 三人とも着物はつぎはぎだらけのボロボロで、洗濯なんかしていないのか、なんか獣みたいな臭いが風に乗って漂ってくる。


 顔が傷だらけの熊男は木刀代わりか太い棒を握りしめているが、若いのにおっさんみたいに髪が薄く地肌が露出している。


 ひょろりの二人は骨張った膝が出るほど着物丈が短く、やたらと引っ張って隠そうとする仕草が女の子っぽく見える。


 栄養状態も良くないようだし、貧しくて服なんか買えないんだろうな。


 脳内モニターには三人の能力値(ステイタス)がポップアップした。


《農民1:統率5、武勇5、知略5、政治5》


《農民2:統率3、武勇3、知略3、政治3》


《農民3:統率3、武勇3、知略3、政治3》


『信長のアレ』のステイタス数値は百が上限だ。


 アイテムを所持することでその上限を例外的に上回ることはあるが、そもそも一つでも八十以上の数値があればかなり優秀な武将と言える。


 逆に、一桁の数値はなかなかない。


 そういう武将はたいてい伊奈忠次みたいに官僚として政治力に全振りか、豪傑キャラの小島貞興みたいに武勇がずば抜けているかで、決して使えないわけじゃない。


 だが、さすがにすべてにおいて一桁という武将はいない。


 こいつらはどうやら本当にただのそこらへんの不良野郎ども(モブキャラ)らしい。


 もしかしたらさっきの野犬の方がハイレベルな敵だったかもしれない。


 とはいえ、三人相手では簡単に追い払えるとも思えないし、こっちには寧々さんもいる。


 圧倒的に不利だ。


 俺の数値を確認しておく。


《転生者:坂巻悠斗十八歳元高校生。統率5、武勇5、知略95、政治5》


 ずば抜けた知略以外は熊男と変わらない。


 そもそも知略だって、情報検索能力があるおかげなんだろう。


 そりゃ、丸腰の非モテ男子なんて、戦国乱世じゃ雑魚(ざこ)キャラだよな。


「ね、寧々さん、下がって」


 俺は彼女の前に立ったものの、まるで自信がない。


 やっぱりいざとなると膝がガクガク震え出す。


「邪魔だぜ」と、熊男が俺の肩を小突く。「とっとと失せな」


 俺はなんとか踏みとどまったけど、心臓はバクバク、さっき出したばかりなのにチビりそうだ。


「いったい何よ、あんたたち」


 気丈にも寧々さんが声を張るが、俺のシャツをつかむ手がやっぱり震えている。


「へへへ」と、下品な笑みを浮かべながら熊男が手を伸ばす。「ちょっと俺たちといいことして楽しもうじゃねえかよ」


 戦国時代だからって、こういう物騒な光景は日常茶飯事なのか?


 ここに来てからピンチの連続だ。


「や、やめろ」


 声が裏返って、めちゃくちゃカッコ悪い。



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