(4-3)
◇
疲労が限界を超えていたせいか、かえってすぐに目が覚めてしまった。
脳内ディスプレイが再起動する。
時刻は四時半だった。
曇り空だが夏至に近いせいか、もう明るい。
三人組は仲良くいびきをかいて雑煮の餅みたいに眠っている。
織田信長に呼ばれた藤吉郎はまだ戻っていないようだ。
ここで待つという約束なので、俺はまた目を閉じて体を休めておくことにした。
いつのまにかうとうとしていたらしく、次に目を覚ました時は雨が降っていた。
まわりの連中も起き出して、木陰や屋根のあるところへ転がるように移動する。
「これで戦なんかやるのかね」と、茄子の久作がぼやく。
「逆に敵に攻め込まれたりしてな」
あくびをかみしめる作兵衛の袖を南瓜の六太郎が引っ張る。
「なあ、もしそうなったら、おいらは逃げるぞ」
「藤吉郎もいねえから、今のうちに逃げるか」
そんな相談をしている三人組に聞き耳を立てていたら、握り飯を両手に持った雑兵が通りかかった。
「お、朝飯か。じゃあ、逃げるのは食ってからにするか」と、三人はちゃっかり行列に並んでいた。
麦の握り飯が食いたいというだけで、命の危険があるかもしれない砦に残る。
割に合わないようだが、食えるだけましなのかもしれない。
俺も一緒に行列に並んでいると、横から声を掛けられた。
「おぬし、変わった格好をしておるな」
顔を向けると、雑兵とは明らかに違う身なりの侍がいた。
《河尻秀隆:織田家黒母衣衆筆頭:三十三歳:統率63、武勇74、知略22、政治17》
全体的に数値はあまり高くないが、織田信秀の代から使える古参武将で、史実では武田家滅亡後の甲斐国を任されることになり、本能寺の変の後に武田の遺臣たちに討ち取られたとされている。
武勇が高ポイントだけあって、戦いで揉まれてきた男の目で俺を見つめている。
「おまえは、どこの従者だ」
「木下藤吉郎の知り合いです」
従者ではないけど、とりあえずそう言うしかなかった。
「木下……藤吉郎だと?」と、厚い胸板の前で太い腕を組む。「そんなやつは知らんぞ」
「ええと、あの、サルみたいな顔をしたやつです」
「なんじゃ、サルか」と、腕をほどき、大きく口を開けて笑う。「あいつにも、そんな立派な名前があったとはな」
俺のシャツをつまんで布地の手触りを確かめ始める。
「良い生地を使っておるのう」と、手があちこちに伸びてくる。「いいのう。実にいい生地だ」
確かに、綿百パーセントではなく、形状記憶シャツで化繊の混紡だからこの時代の人にはなじみのない手触りなんだろう。
それにしても、あまりにものめりこみすぎているのか、おっさんの鼻息が荒くなって、だんだん抱きつかれているみたいな気分になる。
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