(3-11)
◇
俺たちもそのまま出かけるのかと思ったら、藤吉郎はいったん三人を呼びに家に戻るという。
日は落ちてすっかり暗くなっているが、城下の街にほとんど明かりはなく、足元がおぼつかない。
空には星がない。
「明日は雨かもな」と、藤吉郎がつぶやく。
俺は試しに脳内モニターで検索してみた。
明日の尾張地方は曇り昼頃雷雨と出た。
ただ、説明しにくいので、俺は黙っていた。
藤吉郎がむしろを跳ね上げて家に入ると、中で三人が寝そべってくつろいでいた。
「おまえら、メシは食ったか?」
「たらふく食わせてもらいましたぜ」
「よし、なら仕事だ。一緒に来い」
「今度はなんすか。女子に夜這いでもするんですか?」
「戦じゃ、戦。本物の合戦じゃ」
「うげっ」と、口を押さえながら作兵衛が起き上がる。「おいら、戦なんか行きたくねえよ」
「無理だよな」と、茄子の久作もうなだれる。
南瓜の六太郎は声も出せずにガタガタと震えている。
「一人でも多い方がいいんだ。メシの分だけでも働け」
「だから物見に行ったじゃねえですか」
「今川に負ければ、どちらにしろ村は略奪されるんだぞ。おまえらの家は燃やされ、男も女もみな売り飛ばされる。それでもいいのか」
「良くねえけど、俺たち何もできねえよ」
実際、俺にも負けたくらいだからな。
――まぐれだけど。
「俺の盾になって斬り殺されるだけでも役に立つさ」と、藤吉郎は物騒なことをさらりと言ってのける。
「そんなあ」
「逃げれば今ここで切り倒す。どっちがいいか選べ。いや、選ばせるわけにはいかぬ。来い」
強引に説き伏せながら、藤吉郎は足軽具足を身につけ終えていた。
キリッと鉢巻を結ぶと、大小二本の刀を差して表へ出る。
「ぐふふ、しっかり手柄を立てて出世したら、側室も選び放題か」
欲望丸出しで、恐怖などまったく感じないらしい。
三人組も立ってはいるものの、膝はガクガク、ガチガチと歯を打ち鳴らしている。
俺だって、かろうじて耐えているものの、本当はブルブル震えそうだ。
側室のことで頭がいっぱいの藤吉郎が、聞いてもいないのに語り始める。
「わしは今お染ちゃんを狙っておってな。おぼこい娘じゃが、このごろ色っぽくなってのう」
「その子は何歳なんですか」
「さあ、おそらく……まだ十にもならぬ……」
またコンプライアンス上問題のある性癖を口にしていたので、俺はこっそりお染ちゃんを十八歳に変換しておいた。
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