(3-10)
キラキラと星が流れるような演出と共に脳内に新タイトルが表示される。
と、いきなり目の前の織田信長も全身が光り輝き始めた。
くるくると回転を始めたかと思うと、褌がほどけリボンと化して舞い、裂けた服が飛散し、筋骨隆々の肉体が露わになる。
センシティブな部分は光と星がカバーして見えそうで見えない。
――なんだこれ?
魔法少女アニメの変身シーンかよ。
瓢箪顔に髭が生え、筋肉で膨らんだ体を黒マントの西洋風衣装が包み込む。
脳内モニターの数値がドラム回転を始める。
《新ステイタスを表示します》
荘厳なファンファーレが鳴り響き、数値の回転が止まった。
《真・織田信長:統率99、武勇88,知略95、政治100》
おお、これだよ、これ。
まるで泉の女神に出してもらったみたいにきれいな織田信長が誕生した。
「と、殿……いかがなされました」
唖然とする柴田勝家に、二枚目役者の目で真・信長が微笑みを返す。
「うつけの振りもこれまでよ」
「では、殿もご出馬を?」
「是非もなし。今川など恐れるに足らん。蹴散らしてくれるわい」
織田信長は扇子を取り出すと幸若舞の敦盛を舞い始めた。
人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
いつのまにかお市様が縁側にたたずんでいた。
「兄上、いったい、これは……」
「おお、市」と、シスコン兄が羽ばたく大鷹のようにマントを翻す。「どうじゃ、新しい兄は?」
「見違えるようですわ、兄上。とても素敵ですこと」
「ふむ、惚れ直したか」
「まあ、お兄様ったら。お義姉様に言いつけますわよ」
ハッハッハッと豪快に笑い声を上げると、妹の頭にポンと大きな手を乗せる。
「行って参るぞ。そなたを嫁になどやるわけにはいかぬからな」
「ご武運を」
縁側に進み出た真・信長は曲輪に残った家来たちをキッと見回すと、大木のごとき腕を振り上げた。
「みなの者、よく聞けい! 織田の旗印を掲げ、我に続け。いざ出陣じゃ!」
「「「「「ウオォ!」」」」」
天を揺るがすほどの鬨の声が上がり、織田家総勢二千の兵が桶狭間――とされる場所――へ向かって出発した。
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