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と、見ると、甲冑姿の柴田勝家がまだ城内に残っている。
「このわしが後れを取るとは、不覚千万。馬はどうした」
「申し訳ございません」と、馬番が庭にひざまずく。「柴田殿の御馬は脚に瘤ができ申した」
「なんと、換えはないのか」
「今、厩へ人をやって問い合わせておりまする」
「ええい、馬鹿者が。早くいたせ」
拳を握りしめてやり場のない焦りをこらえる勝家に信長が歩み寄った。
「勝家よ」
「は、なんでございましょう」と、視線をそらしつつも振り向く。
「わしの馬に乗っていけ」
「な、なんと。殿の御馬でございますか。しかし、拙者はすでに勘当の身。織田家とは縁もゆかりもない男でございます」
「いや、わしが間違っておった。わしをいさめてくれるのはおぬしのような忠義の家臣であることを、このうつけもようやく理解した。褒美の前渡しじゃ。馬ぐらいいくらでもくれてやる」
「ははっ! ありがたき幸せにございます」
「みなはわしを天下のうつけ者と呼ぶが、ならば本気で天下を狙うのもまたうつけのうつけたる極みというものよ。のう、勝家、そちももう一度このわしに賭けてみる気はないか」
柴田勝家が廊下に両手をついてひざまずく。
「もとより、拙者の心は殿と共にございます」
「そなたもうつけか」と、信長は高らかに笑う。「織田家中にふさわしきあっぱれ者よ」
と、その時だった。
俺の脳内モニターにアラートが表示された。
――『信長のアレ《覚醒》』にバージョンアップします――
なんだこれ?
ゲームシステムの更新か?
《はい》か《いいえ》の選択肢はなく、ただ《了承》のボタンが点滅するだけだ。
バージョンアップしないと先へ進めないらしい。
でも、『信長のアレ』って、新しい製品がリリースされると、南米密林レビューに酷評が並ぶんだよな。
『最新スペックのゲームPCでも重すぎてプレイできません』
『登録を求めるくせに何度やっても認証されません』
『カスタマーセンターがクソです』
『ゲーム開始直後に勝手にリロードを始めて先に進めません』
『AIがアホ過ぎて意味不明』
『星一つもやりたくない。マイナス』
『長年のファンへの裏切りです』
『パワーアップキット商法にも我慢して追いかけてきましたが、もうこれで見切ります。サヨナラ』
だが、迷っている場合ではない。
もうシナリオは動き出しているんだ。
おれは《了承》をクリックした。
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