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信長のアレを千回クリアした俺が戦国最強の軍師に転生したのに、いきなり桶狭間が消えてるんだが(ていうか、おまえら全員シナリオ無視すんな)  作者: 犬上義彦
第2章 清洲城の武将たち

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(2-11)

 困惑していると信長の語気が荒くなった。


「どうした、なぜ黙っておる。何か話があるのであろう」


「ああ、はい……」


「ヘイ、ハロウ。マイネームイズ、ノブナーガ。メリークリスマス。ハッピーニューイヤー」


 いやいや、クリスマスでも正月でもねえよ。


 今は旧暦の五月、これから梅雨入りの季節だぞ。


 唖然とした俺を見て信長は上機嫌に笑う。


「どうじゃ、驚いたか。わしはデイブ殿からエゲレス語を習っておるのだ。ワハハ」


 戦国武将が何やってんだよと思ったけど、べつに英語の勉強をしたっていいのか。


 戦いで役に立たなくたって、教養っていうのは大事だもんな。


 武士のたしなみとして茶の湯をはやらせ、ただの茶碗をもったいぶって家来に褒美としてあたえたのは信長だったっけか。


 そのうち、織田家ではTOEICで七百三十点以上ないと武将になれないとか、やり始めたりして。


 と、そんなくだらないことを考えていたら、廊下に台を掲げた女性たちが現れた。


「お茶をお持ちいたしました。評定のお邪魔でしょうか」


「おお、そうかそうか。いや構わん、入れ入れ」


 きらびやかな模様の入った赤い着物の女性が信長のそばに座る。


《濃姫:斎藤道三(どうさん)の娘で鷺山殿(さぎやまどの)と称された織田信長夫人二十五歳:本名は『帰蝶(きちょう)』ですが、家来が(いみな)を口にするのは失礼にあたるため、奥方様と呼ぶのが通例です》


 これが信長の奥さんか。


 油売りの商人から美濃国を奪った国盗りの英雄斎藤道三を父に持つ娘にしては、おっとりとした表情の奥方様だ。


 夫人の隣にはお市様も控えていて、荒くれ武者たちがみな遠慮してうつむきながらもチラチラと視線を送っている。


 濃姫が夫にお盆を差し出した。


「城下の商人から饅頭が納められましたので皆様に召し上がっていただこうかと」


「ん、そうか。どれどれ……」


 信長は頬を崩しながら小ぶりな饅頭を一口でパクリと放り込む。


「うまいのう。みなにも勧めてやれ」


 その言葉に女官たちが武将の前に茶と菓子を置いていく。


 どうやら織田信長は酒が飲めず、甘い物が好きだったというのは本当らしい。


 一方家来たちはそんな主君の好物には困っているようで、柴田勝家は渋い表情でまわりの連中と顔を見合わせている。


 配っている間に信長が妹に声をかけた。


「市もどうした?」


「わたくしはお姉様のお手伝いを、と思いまして」


「そうか。ごくろう」


 なかなか手をつけない家来たちを見て信長はまた語気を荒げた。


「どうした、みなの者。遠慮せず食え」


「は、ははあ」


 居並ぶ武将たちが頭を下げてまずは渋い茶をすする。


「サルよ、饅頭はどうじゃ」


「いただきまする」と、藤吉郎が饅頭を頬張る。「こんなにうまい饅頭は拙者食べたこともござりませぬ」


「そうかそうか」と、上機嫌な信長が奥方に笑みを向けた。「サルが喜んでおる。もっと食わせてやれ」

「かしこまりました」


 濃姫が女官に目配せすると、すぐに藤吉郎の前に饅頭の山が置かれた。


「これサル、好きなだけ食うがいい」


「ハハッ、ありがたき幸せ」と、両手でつかんで、ひょいぱくひょいぱくと冬眠前のリスにも負けないほど頬を膨らませていく。


 それを見た女官たちが失笑して、着物の袖で顔を隠す。



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