(2-6)
そんな心配をしている俺にデイブが話しかけてくる。
「三浦さんは商人ですか?」
いやだから、坂巻悠斗ですって。
フランクでも三浦でもねえから。
「軍師です」
「洋服を着ているジパングの人は珍しいデスネ」
俺が相手にしないで黙っていると、デイブがささやく。
「あなた本当は未来から来たんじゃありませんか」
うっ……。
なんで分かる?
「私、実はね……」と、軽やかなウインクが迫ってくる。「宇宙人なんです」
はあ?
と、いきなり俺の肩に手を回し、頬が触れ合いそうなほど引き寄せる。
「ジャスト・キディン。JK、JK。ジョークですよ。地球人はみな宇宙人」
うぜえ。
こういう陽キャは俺の天敵だ。
「日本語上手なのはいいですけど、ジョークが滑ってますよ」
「オーウ」と、欧米みたいなジェスチャーで肩をすくめる。「それを言っちゃあ終わりですよ。ここが尾張国だけにね」
「ガハハ」と、柴田勝家が豪快に笑う。「デイブ殿、おぬしの冗談、ますます冴えておるな。殿の御前でもその調子で頼むぞ」
「かしこまりまして。ペコリ」
俺は一歩後ろを歩いている藤吉郎に並んで耳打ちした。
「この南蛮人、いつもこんな感じなのか?」
「いや、知らん。わしも下っ端じゃから、今日初めて会ったのでな」
デイブが振り向いて俺にウインクする。
「怪しさで言えば、あなただって大差ないですよ」
こいつに言われたくはないが、まあそれは確かにそうなのだ。
城門をくぐってすぐの壁が崩れている。
修理のために集められた人々がいるけど、どうも働いている人はごくわずかで、手持ち無沙汰にただ眺めているだけの人が多い。
「あの人たちはなんで何もしていないんですか」
「壁を塗る職人だからだ」と、柴田勝家が答える。「土台ができておらぬから出番がないのじゃ。材料を加工して組み上げ、それからようやく壁を塗る。だが、この曲輪は狭くて作業をする場所もないゆえに、人はおるのだが、仕事が進まないのじゃ」
「ならば、やり方を変えたらどうでしょうか」
「と申すと?」
柴田勝家は俺の話に耳を傾けてくれた。
「城外の広い場所で壁の基礎を組んで、できあがったものを運び込んで設置すれば良いのではないでしょうか」
「なるほど、それは良いな」
「それと、壁をいくつかの区画に分けて、みなで競わせてはいかがでしょうか。早くできた組から褒美を与えることにすれば、無駄な待ち時間を減らす工夫をして、すぐにでも仕上がるでしょう」
「ほう、おぬし、なかなか良いことを考えるのう」
「これは藤吉郎殿と昨夜相談しておいたことでございます」
俺は自分の手柄にせず、あくまでも藤吉郎のアイディアということにした。
実際、俺は未来の世界で豊臣秀吉の伝記を読んで知ったわけで、そもそも藤吉郎の考えたことだからだ。
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