(2-5)
「アナタモ、ナンバンジンデスカ?」
柴田勝家の後ろから姿を現したのは、青い目の西洋人だった。
藤吉郎と同じくらいの年頃の若い男で、身長は俺より頭半分くらい大きく、いかにも西洋人っぽい癖っ毛の金髪をなでつけながら前のめりに話しかけてくる。
「アナタハドコ出身デスカ?」と、外人なのに日本語ペラペラだ。「私はイギリスの商人、デイブ・スミッシー……というのは表向きで、武蔵国の行田出身です。サキタマの古墳から出土しました。好きな食べ物は最中デース」
なんだコイツ?
滑ってるのにまるで意に介さずまくしたてる。
「冗談デスヨ。マイケルはジョーダンが好きネ。僕はデイブですけど」
「は、はあ……」と、俺は押され気味に名乗った。「坂巻悠斗です。神奈川県三浦市……ええと、相模国の三浦出身です」
まさか変な外人が出現するとは思いもしてなかったから、つい本当のことを口走ってしまった。
南蛮人の設定が吹っ飛んだけど、しかたがないか。
オーウと欧米みたいなジェスチャーで大げさに手を広げながら俺にハグしてくる。
「では、フランク三浦と気軽に呼んでもいいですカ?」
いや、駄目だろ。
「坂巻悠斗です」
「堅いこと言わナーイ。気軽にね。フランクにね。ミウラさん」
「いや、坂巻です」
俺が滑ってるみたいでめちゃくちゃ恥ずかしい。
柴田勝家が俺たちの間に入る。
「おい、デイブ殿、殿が待っておられる。話は手短にな」
「ハーイ、スミマセーン」
デイブは俺にウインクすると、わざとらしいアクセントでおどけながらフランクに柴田勝家の肩を叩いた。
「シバタサーン、この人も一緒にお殿様に連れていきましょう」と、俺を推薦してくれるらしい。
「ふうむ、新しい南蛮人か」と、あごひげを撫でながら柴田勝家が俺を眺める。「まあ良かろう。藤吉郎、おまえも来い」
「ハハッ。ありがたき幸せ」
立位体前屈測定か折りたたみガラケーかよというくらい腰を曲げて頭を下げる。
上司に取り入る技術は天下一品だな。
ともあれ、こうして俺は清洲城に入ることができた。
いよいよあの織田信長と対面だ。
『信長のアレ』を千回クリアした身としては体が震えるほど感慨深い。
まさか本物に会う日が来るとはな。
でも、緊張するぜ。
その短気な性格を『鳴かぬなら殺してしまえホトトギス』と評された人だからな。
気を悪くさせたら打ち首だ。
今川が攻めてくるという情報を納得させるだけでなく、出陣を決断させなければならないんだ。
史実通りならうまくいくはずだけど、うまく事が運ぶんだろうか。
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