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「お館様に大事な話があるのじゃ」
そう告げた藤吉郎を二人が鼻で笑う。
「馬鹿を言うな。おまえごとき下っ端がお館様にお目通りがかなうはずもなかろう。帰れ」
「今川が攻めてくるのだぞ」
「何、それは本当か」と、二人が顔を見合わせる。「どこでそれを見てきた」
「いや、見た来たわけではないが」と、藤吉郎が俺を二人の前に突き出した。「この者が間違いないと言うておる」
「何じゃおまえは」と、門番は俺を上から下までなめ回すように見てからにらみつけてきた。「南蛮人のような格好をしおって」
「まあ、遠くから来た者です」
「それがなぜここにおる」
「ですから、織田家の存亡に関わる情報を届けに来たんですよ」
「怪しいやつ。うまい話で油断させる刺客かもしれん」
身分の差が大きい時代っていうのは面倒だな。
下っ端の藤吉郎の紹介だと、殿様に会うどころか、城の中に入れてもらうことすら許されないとは。
まあそりゃあ、令和の世の中でも、大企業の社長にいきなり合わせろなんて高校生が押しかけたら門前払いされるか。
迷惑系ユーチューバーの突撃と変わらないもんな。
「なんとかしてくださいよ」と、俺は藤吉郎に耳打ちした。
「すまんのう。わしには権限がないからのう」
ぽりぽりと鼻の頭をかくばかりで腰が引けている。
すると、俺たちの後ろを見て門番が姿勢を正した。
ん?
誰か来たのか?
「こら、サル、何をしておる」
振り向いた藤吉郎が慌てて脇に一歩下がる。
「これは柴田殿」
「サル、この者は?」
「南蛮人と申しております。お館様に耳寄りな話があるそうで」
厳ついひげ面のおっさんが俺に詰め寄る。
「南蛮人にしては、大和人と見た目が変わらぬが、背だけは南蛮人並みだな」
確かに俺は令和では高校生の平均的な身長だが、戦国時代に来ると頭半分くらい余裕で大きく、ほとんどの大人に見上げられている。
脳内にウィンドウが浮かび上がった。
《柴田勝家:武勇に優れた織田家宿老三十八歳。統率94、武勇96、知略54、政治64》
おお、この人が柴田勝家か。
圧巻の統率と武勇。
さすがに数値がずば抜けているな。
元々は信長の弟である信勝の家臣だったのが、うつけと呼ばれた兄を馬鹿にし謀反を企てた信勝を見限り、信長についたんだったっけ。
史実では本能寺の変の後は織田家の跡目争いで秀吉に主導権を取られ、再婚したお市様と共に北陸の北ノ庄城で最期を迎えるんだよな。
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