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「行け!!僕のブラックガンズロック!!」

作者: 昼ヶS


 

「自らが製作した胴体部、腕部、腰部、脚部パーツに記憶領域を搭載したコアと呼ばれる頭部パーツを合体させると、そこに書き込んだプログラムによって君の相棒が動き出す!!千差万別!唯一無二!君だけのアームド・コアを作ろう!!」

 ポップなBGMと字幕と演出と共にお茶の間に流れたこのCMは瞬く間に当時の少年たちと一部の純真な大人達と、プログラミングが遊んで学べるというだけで子の将来の役に立つと思ったITに詳しく無い親達を魅了した。

 CMが最初に流れてから数年が経った。老舗おもちゃメーカーである大判が発売した『新型(しんがた)玩具(がんぐ)アームド・コア』は子供たちを中心に、全国で途轍もないムーブメントを巻き起こした。

今日も何処かの閑静な住宅街でアームド・バトルが行われている。


――「行け!!僕のブラックガンズロック!!」

 黒髪に黒い服、全身黒を基調とした少年は同じく黒を基調とした塗装のアームド・コアを繰り出した。 繰り出されたBGR(ブラックガンズロック)は相手のアームド・コアに猛然と掴みかかった。

「受けて立ってやろうぜ!!ガッツビクトリー!!」

 地毛の赤い髪に赤い服、全身赤を基調とした少年はそう言い、彼と同じように赤を基調とした塗装のアームド・コアはBGRを正面から受け止めた。

 すると、レスリングで言う手四つのような形で二機は組み合う事となった。

「甘いなリョウ!!ブラックガンズロックは前の敗戦の時から腕部をパワーアップさせてるんだぜ!!この勝負は貰った!!」

 黒い少年が言う通りBGRはGV(ガッツビクトリー)よりも二回り太い腕を有しており、手四つを組んだGVは押されているようだった。

「負けるな!!ガッツビクトリー!!俺たちの熱い思いは誰にも負けてないだろう!!」

 リョウと呼ばれた赤い少年はGVを叱咤する。

 しかし、所詮は機械でできた玩具であり、どれだけ熱い思いをもってしてもスペックの差をひっくり返すことは出来ない。

 普通ならば。

 突如、GVの胸に付けられたGのエンブレムが赤く輝きだした。

「リョウ!!それはなんだ!?何のパーツをつけてどんなプログラミングをすればそんなのができる!?」

 エンブレムの輝きがますます激しくなる。

「これが俺たちの思いの力だ!!行け!!ガッツビクトリー!!ブレストボルケーノだ!!」

 リョウの掛け声に合わせエンブレムから強烈な炎が放射される。

 当然、玩具にそのような機能が搭載されると思う訳もなく耐熱素材ではないBGRは炎によってあっという間に溶かされた。

「ブラックガンズロック!!……熱っ!!」

 BGRに駆け寄った黒い少年はまだ熱が冷めてない機体を抱きかかえたが、あまりの熱さに一瞬で放り投げた。

 機体が冷めてから少年が見るに、損傷を負ったのは胴体部分で他の部分はそこまで傷ついていないようだった。

 アームド・コアは頭部(コア)パーツさえ壊れなければ、どれほど傷ついても問題はない。手に入れた時から変わらない無表情な顔をした頭部パーツを見て少年は安堵した。

「楽しかったぜ!!ジン!!またアームド・バトルしような!!」

 リョウはそう言い右手を差し出した。ジンと呼ばれた黒い少年も右手を出した。お互いにそれを強く握った。


「竿止博士!!またリョウの奴に負けた!!今度は火を噴き出したぞ!!どうなってるんだあいつの機体!?」

 バトルが終わってすぐ、ジンは近所の、博士と呼ばれている老人がいる家にやってきた。腕部のパワーアップもこの博士の協力の元行われた。

「おかしいのぉ。スペック的に言えばブラックガンズロックは最初からガッツビクトリーを上回っておるし、何なら今回のパワーアップで腕部の出力だけで言えばガッツビクトリーのそれの数倍はあるんじゃがのぉ」

 博士は首をひねる。

「という事は僕のプログラミングが悪いっていうのか⁉」

「そうでもないと思うのぉ。実際ジン君のプログラミングの出来は同世代で圧倒的じゃしのう……」

「ああ!!そうさ!!おかげで俺はこの地域じゃ負けなしだった!!なのに急に転校してきたあいつに勝てない!!それがたまらなく悔しい!!」

 ジンは悔しさを抑えきれなくなったのか拳を握りしめ強く机に叩き続けた。それにより机の上に並べていたパーツがいくつか跳ねた。

「一つあるとすれば……」

 博士はふと思い出したようにそう言った。

「あるなら勿体つけずに教えてくれ!!竿止博士!!」

「一つあるとすれば……仮にそれがあるとすればなんじゃが……。おそらくリョウ君のアームド・コアには付喪神がついておるかもしれん」

「付喪神ぃ!?物を大切にするとその物に取り付くっていうあの!?」

「おそらくは……」

 リョウは博士の推測に納得がいかなかった。

「科学者がオカルト話を肯定するな!!僕はどんな手を使ってでもブラックガンズロックであいつに!!あいつらに勝ってやる!!」

ジンは勢いよく博士の家を飛び出した。手には無表情のBGRが硬く握られていた。


「いけ!!僕のブラックガンズロック!!」

ジンはBGRを繰り出した。前回の戦いで壊れた胴体部分のみを換装した以外は違いがない。

「受けて立ってやろうぜ!!ガッツビクトリー!!」

 リョウもGVを繰り出す。前回と変わりはない。

 バトルが始まり、BGRは猛然と走りだしGVの元へと向かった。そして前回と同じように手四つの形となった。前回と力関係は変わらない。BGRがじわじわとGVを押し込んでいく。

「負けるな!!ガッツビクトリー!!ブレストボルケーノだ!!」

 リョウの呼びかけに応えGVの胸にあるGのエンブレムが赤く光りだし、そして激しい炎を噴射した。

「前回の二の舞だな!!ジン!!」

 勝ち誇った表情でリョウはジンに行った。ジンは不敵な笑みを浮かべながら返した。

「そう来ることは読んでいたよ!!」

「何!?」

 そう言われ、リョウは慌ててGVを見た。

 前回であればBGRの胴体はもう溶けている時間であった。しかし、BGRは未だにその圧倒的なパワーでGVを圧倒していた。

「僕が無策のままで君に戦いを挑むと思ったのかい!?ブラックガンズロックの胴体部は耐熱性能のあるパーツに換装しているのさ!!これで終わりだ!!リョウ!!」

 BGRが腕部の出力をさらに上げる。GVの指が手首が軋み始めた。

「クソっ!!考えろ!!考えるんだ俺!!…………そうだ!!じいちゃんが言っていた!!ガッツビクトリー!!ブラックガンズロックの胴体部を急激に冷やせ!!ストロングブリザードだ!!」

 リョウの呼びかけによりGVの頭部パーツの口の部分が何故か開き、どのようにしたのか分からないが、雹や雪の混じった強い風がそこから吹き出した。

 しばらくするとブレストボルケーノによって赤熱していたBGRの胴体部は冷まされ、みるみる元の色に戻っていった。

「今だ!!ビクトリィィィィィキック!!」

 リョウの叫びと共にGVはBGRにキックした。BGRの胴体はあっけなく砕け散った。

「ブラックガンズロック!!熱っ!!いや、冷た!!……そうでもないか」

 常温のBGRを抱きかかえジンはリョウに問うた。

「耐熱装甲を換装したブラックガンズロックは並のアームド・コアより硬くキックじゃ壊れないはずなのに!!一体なぜだ!?」

 ジンの問いにリョウは答えた。

「昔じいちゃんが言っていたんだ。『上げて落とせば何でも脆くなる』ってな。だからブレストボルケーノでチンチンに熱くなったブラックガンズロックをストロングブリザードで冷ましたんだ」

「……完敗だ。だが次こそは勝つ!!」

 ジンはリョウに右手を差し出した。

「俺とガッツビクトリーはどんな相手との勝負も受ける!!」

リョウもジンに右手を差し出した。お互いにそれを強く握った。

 ジンに抱えられたBGRの表情は相変わらず無表情だった。


 数日後、また同じ閑静な住宅街の人通りの少ない道路上でアームド・バトルが繰り広げられていた。

「行け!!俺のガッツビクトリー!!」

 リョウは相棒であるGVを繰り出した。しかし相手のジンはその愛機であるBGRを繰り出さなかった。

「どうしたんだジン!?お前のブラックガンズロックを出さないのか!?」

「……もう出しているよ。とっくにね……君のガッツビクトリーの後ろを見てごらん」

「何!?」

 ジンにそう言われリョウはGVの後ろを見た。しかし、何も見えない。

「もっとよく見てごらん」

ジンはリョウがBGRを発見できてないとみてそう言った。

「そう言われたって……あ!?」

 リョウがそう言われもう一度見た時BGRが見えた。確かにGVの後ろにいた。それはナナフシのように手足も胴体も細長い機体だった。変わらない頭部パーツによって初めてそれがBGRだと認識できるほど見違えていた。

「背後を取るなんてやるじゃねーか!!ガッツビクトリー!!ビクトリー裏拳だ!!」

 存在を認識してからのリョウの指示は早かった。

 しかし、

「遅い!!」

 BGRはGVの攻撃を悠々と避けた。それだけではなく鉤爪の様なものが付いた細い腕部パーツで小さくはあるがGVにいくつか傷をつけた。

「どうだ!!僕の生まれかわったブラックガンズロックは!!もはやガッツビクトリーでは捕らえられないだろう!?」

「クソッ!!負けるな!!ガッツビクトリー!!耐えて反撃のチャンスを待つんだ!!」

 今のリョウの頭の中にはスピードに特化したBGRを倒す手段がなかった。リョウが指示を出しあぐねている間、GVはBGRに徐々に傷つけられていった。

「今のブラックガンズが装着している脚部パーツは陸上の競技用義足の技術を応用している!!地上で今のこいつより早い奴はいない!!」

 ジンは勝ち誇った表情でそう言った。しかし、勝負をあきらめようとしない前向きなリョウの目に若干ひるんだ。

「ああ……地上でなら最速なのかもなあ……」

 リョウはそう呟いた。

「まさか!?そんな事は不可能だ!!ブラックガンズロック!!早くガッツビクトリーにとどめを刺せ!!」

 何かを悟ったジンの指示によりBGRの攻撃は激しさが増した。しかし、スピードに特化しすぎたためGVの装甲を僅かに傷つけることにしかできない。

「飛べ!!ガッツビクトリー!!ビクトリーフライトだ!!」

 リョウの指示によりGVは背中から飛行機の様な翼を一対生やした。そして空を飛べるような動力もないのに飛んだ。アームド・コアは原則、飛ばない。空中への攻撃がプログラミングされてないBGRは動きを止めることしかできなかった。

「今だ!!ブラストボルケーノ!!」

 そのスピードの為に装甲すら犠牲にしたBGRはあっさり倒れた。

「そ……そんな……ありえない」

 ジンは茫然とし、膝から崩れ落ちた。今目の前で起きたことが理解できない為である。

「ジン!!」

 リョウはジンに呼びかけに右手を差し出した。ジンはその手を掴んだ。リョウは力強くジンを引っ張り起こした。そして引き起こすために差し出した、差し出された二人の手はいつもの握手の形になった。

「またアームド・バトルしようぜ!!」

「ああ!!次こそ負けない!!」

 BGRを抱え家路に向かうジン。抱えられたBGRの表情がジンにはなんだか悔しそうに見えた。


 それから数か月の間、ジンとBGRは負ける度に換装を変えながらリョウとGVに戦いをなんども挑んだ。

 背中にジェットを取り付け突撃に特化したり、空中戦が可能なようにプログラミングを行い翼を取り付けたり、脚部をキャタピラにしたり四脚にしたり逆間接にしたりもした。博士が自爆可能なパーツを作ったりもしたがそれは流石に使わなかった。

 リョウが転校してくるまではBGRは博士の内に預けられていた。しかし、リョウに負けてからはジンはBGRと寝食を共にした。いや、人生を共にしていた。

 朝起きてBGRと共に学校に行き、帰ってBGRと共に宿題をし、遊び、アームド・コアの研究をし、風呂に入り、食事をして一緒にベットで寝た。

 何時しかBGRが玩具ではなく意思を持った相棒なんじゃないかとジンは思うようになり事あるごとに話しかけたりもした。

 そうしながらも、リョウに負け続け敗戦の数も分からなくなっていた頃、ジンは博士の電話に起こされた。

「君が儂の家に置いておいたブラックガンズロックの換装パーツが全部なくなっているけど知らんかのぉ」

 ジンは寝ぼけてはっきりと聞こえては無かったが要約するとこういう感じだった。

 言われてみればBGRの頭部パーツが無い。部屋中探しまわってもどこにもなかった。

「そんな……いやでも……もしかしたら……僕いつもの場所に行ってきます!!」

「いつもの場所ってどの辺――」

 ジンは博士からの電話を切り、服を着替えると急いで、いつもの、いつもBGRと共に闘っている道路に向かった。

 息を切らしながら走るジン。見慣れた風景が見覚えのない速さで流れていく。そしていつもの場所にだいぶ近づいたころリョウの元気な声が聞こえた。

「良いぜ!!受けて立ってやるぜ!!ブラックガンズロック!!」

 誰かがBGRを盗み出し勝手に動かしているという可能性は、ジンが道の角を曲がり()()()()()()()みを視認した瞬間に皆無となった。

「遅いぞジン!!相棒を一人で闘わせる気かと思ったぜ!!」

 ジンに気付いたリュウはジンに声を掛けた。

「行け!!ガッツビクトリー!!」

 リョウはいつものようにGVを繰り出した。BGRはジンの指示無くGVと対峙した。

 BGRは今までの闘いで使用したパーツを寄せ集めた、統一感の無い機体構成だった。いつもの頭部パーツ。パワーを重視した太い腕部。耐熱性能のある胴体部。見覚えのない腰部。義足を参考にした機動力に特化した極細の脚部。背中には翼やジェットが付いていた。

はっきり言ってしまえば不格好なそれは強さと同じように機体のカッコよさも大事にするジンには組めない構成だった。

「行くぞ!!ガッツビクトリー!!ビクトリーパンチだ!!」

 GVが右手を振りかぶりストレートをBGRに打ち込む。しかし、それは空を切った。

「ガッツビクトリーよりもデカい体してんのになんて速さだ!?」

 まるで自分の意思があるかのようにリョウの指示を待たずGVは続けて三回パンチを繰り出す。しかしそのどれも最初と同じように空を切った。

「今のブラックガンズロックは早さに特化した脚部をつけているとはいえ胴体部や腕部、翼やジェットの重さを身に着けて身軽に動けるはずがない……ん?ジェット……そうか!!」

 誰かに向けて説明するかのような独白の後、ジンはBGRの背中のジェットに注目した。

 そして、GVの猛攻を避ける度BGRのジェットが一瞬稼働するのが見えた。

「やっぱり!!ブラックガンズロックは背中のジェットを巧みに操って脚部パーツのスペックが生かせる重量まで機体を浮かしてるんだ!!」

 攻撃が当たらないことに業を煮やしたのかリョウはGVに大技の指示を出した。

「ガッツビクトリー!!ブレストボルケーノだ!!」

 GVの胸のエンブレムが赤く輝く。そして次の瞬間玩具に搭載してはいけない火力の炎が噴き出される。

 しかし、その炎が包みこむ対象は既にGVの背後に回り込んでいた。

「クソ!!炎で全然見えなかった!!避けろガッツビクトリー!!」

 しかし、リョウの指示が届く前にBGRはGVの左腕をもぎ取った。

「ガッツビクトリー!!」

 投げ捨てられた金属片の音が辺りにこだまする。

 通常であればここで勝負が決まるが、戦いの当事者たちである一人と二機はまだこの戦いが終わりだと思っていなかった。

「まだだ!!まだだよな!?ガッツビクトリー!!俺たちの絆の強さを見せてやろうぜ!!」

 リョウの魂の叫びが閑静な住宅街に響く。

 それに呼応するようにGVの胴体部の左肩、左腕がもがれてむき出しになった空洞から剣の柄の様なものが徐々に飛び出してきた。

 GVは残った右腕でそれを掴むと一気に引き抜いた。

 それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく。分厚く。重く。そして大雑把すぎた。

 GVは右足を大きく前に出しそれを下段に構える。

「そんな!?アームド・コアに武器を持たせてはいけないはずだ!!」

「これは武器なんかじゃねぇ!!俺とガッツビクトリーの絆の結晶!!ガッツソードだあああああ!!」

 ガッツソードを大きく薙ぎ払うように振るうGV。BGRの機動力をもってしてもその広大な攻撃範囲から逃れることは出来ない。意を決したようにBGRは後ろに下がらず前進、GVに飛び掛かった。

しかし、GVの剣速の方が早かった。BGRは両足を切断されてしまった。足の無くなったBGRはGVにしがみついた状態になった。

BGRはジンを振り返った。何故だかそれで、BGRが次に何をしようとしているのかがジンにはわかった。

「やめろブラックガンズロック!!」

 ジンはBGRを止めようと駆けだした。しかし、いつの間にか到着した博士に止められた。

「危ないぞジン君!!アームド・バトル中に近づくのは!!」

「離してくれ博士!!ブラックガンズロックが自爆しようとしているんだ!!早く止めなきゃ!!」

「「何!?」」

 博士とリョウは同時に驚いた。

 ジンが見覚えのない腰部だと思ったパーツは竿止博士の作った自爆パーツだったのだ。

「ジン!!お前相棒にそんな物をつけたのか⁉」

「俺じゃない!!あいつが!!ブラックガンズロックが自分でつけたんだ!!リョウ!!頼む!!ブラックガンズロックを助けてくれ!!」

泣きじゃくりながら好敵手にジンは縋った。

「一体どういう事なんだ……?アームド・コアがひとりでに動き出すなんて……まあいい!!ガッツビクトリーこの前みたいに上げて落とす作戦だ!!ブレスト――」

「――いかん!!高熱を与えると自爆パーツが起爆してしまう危険があるぞ!!リョウ君!!」

「クソ!!こうなったら……飛べ!!ガッツビクトリー!!」

 GVの背中から翼が生えた。そして足の裏から当然のようにジェット噴射も出す。これで二機分の重さでも飛行可能な推力を得たGVは飛んだ。

 みるみるGVとBGRの影が小さくなっていき、やがて見えなくなった。

 そして、程なくして上空に大きな火球ができ、数舜間が開いてから大型打ち上げ花火の様な爆音が閑静な住宅街に轟いた。

 住民たちが何事かと窓を開け上空を見つめる中、ジンは両ひざを突き項垂れていた。

「ブラックガンズロック……君ともっと一緒に戦いたかった……」

 ジンの顔の下にある路面が濡れていく。

「そんなに落ち込むなよジン。じいちゃんが言ってたんだ。『上を向いて歩けば下を向いて歩くよりも多くのものが見える』ってな」

 相棒を失った事をまるで軽い事のように扱われたと思ったジンは怒りのあまりリョウに掴みかかった。

「お前のガッツビクトリーだって居なくなったかもしれないんだぞ!!」

 ジンに掴みかかられても平然と、リョウは空中を一点に見つめていた。

 絶対に相棒が帰って来るという事を信じて疑わない、というようなリョウの顔をみてジンは一瞬言葉に詰まった。その瞬間静寂が辺りを支配した。

 静かになったおかげでジンの耳に微かなジェットの音を聞こえて来た。もしかしてと思いジンはその音がする方を見る。

 空中をこちらに向かって真っすぐ飛んでくる影。距離が近くなるにつれて徐々にその姿がはっきりと見える。

 それはボロボロになったGVだった。そしてその右手にはジンの相棒のBGRの頭部パーツが抱えられている。

「ブラックガンズロック!!」

 着陸したGVからBGRを受け取りジンは涙を流した。先ほど路面を濡らしたそれとはまったく意味が違う。

「よかったな!!ジン!!」

 リョウがジンの肩に手を置いた。

「ありがとう……リョウ。ガッツビクトリー。本当にありがとう……」

「友達の頼みなら当然さ!!なあ!!ガッツビクトリー!!」

GVは右手でガッツポーズをしてリョウに同意した。

「皆無事でよかったわい。それじゃあ帰るとするかのぉ」

 パトカーのサイレンが鳴り響く中、晴れやかな気持ちで家路に向かう三人と二機。

「なぁジン!!今度の全国大会俺と一緒に出ようぜ!!」

「全国大会……確かタッグバトルだったか……いいよ。出よう。僕たちが組めば誰にも負けないだろうね」

「ああ!!俺たちが組めば誰にも負けねぇ!!という訳で修理頼むぜ博士!!」

「お爺さんに似て人使いが荒いのぉ」

「ソレハチガウナ。リョウハロボヅカイモアライゼ」 

笑いながら歩く三人とGV。

 ジンは手に握られたBGRの頭部パーツをそっと見た。塗装が所々剥げてなんだかBGRも笑っているように見えた。


 翌日、三人の家に警察が来た。

 


漫画で描けたら一番いいと思いました


twitterで作品の投稿の告知もしています


https://twitter.com/hirugaS1


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