第六話:頼まれ横道、米所
「新しい金山のお奉行って、金三郎さんっだったんですか!」
「あの時の方がお奉行様になられるとは、驚きですわ!」
「改めて御礼申し上げる、甲山藩金山奉行の甲山金三郎でござる♪」
太郎達が解放した隠し金山、正式に甲山藩の財源となり金山奉行が礼を言いたいと旅の足を止められた太郎。
新たなお奉行様は、何と隠し金山に捕らわれていた金三郎であった。
彼はどうやら、甲山藩の藩主の三男坊だったらしい。
「若君達にはお世話になり申した、忍びの真似事をした結果あの体たらくで♪」
「いや、まあともかかく奉行就任おめでとうございます」
「おめでとうございます」
招かれた奉行所で、金三郎と面会する太郎と山吹姫。
「かたじけない、めでたいと言えばお二人のご婚約もでしょう♪」
「いや、その人生初の事でしてまだ頭が混乱しております」
「ありがとうございます♪ 私は、この方こそ我が夫に相応しい方と見初めて合体いたしました♪」
「姫は良い殿方を捕まえられたようで、太郎殿は尻に敷かれる運命のようですな♪」
「太郎様、側室は三人までなら私は受け入れますわ♪」
「いや、側室ってそんな事は考えもしてないよ!」
「古来より、スーパーロボットの合体は五体が最も縁起の良い数ですから♪」
「わけがわからないよ~~っ!」
混乱する太郎と微笑む山吹姫、明るく笑う金三郎。
「お家の事はお二人で♪ 日戸へ行かれる前にお二方に御耳に入れたい事がございまして、米潟藩で何やら海賊騒ぎが起きているそうですぞ」
金三郎が、話を振って来る。
「海賊? 穏やかじゃないですねそれは、情報ありがとうございます」
「太郎様、米潟は名の通りの米所♪ 海賊を成敗して、お米をいただきましょう♪」
「そこは、解決してからで行きません?」
山吹姫の食欲旺盛さにやや呆れつつ、太郎は金三郎から礼金を兼ねた支度金を受け取り旅立った。
「善は急げですわ♪ コガネマルなら、一時です♪」
「いや、姫! 張り切り過ぎですよっ!」
山吹姫のコガネマルに同乗した太郎、金色の狼ロボが野山を駆け巡りひとっ飛びで到着した。
米潟藩の領内の浜辺に入った所で、コガネマルは米と描かれた陣笠に胴丸鎧の足軽ロボ達に取り囲まれた。
「出迎えにしては、頭が高いですわね?」
「いや姫、いきなりロボでやって来たこちらが悪いですよ! 俺が印籠ビジョンを出しますから」
「宜しくお願いいたしますわ♪」
太郎がコガネマルの中で印籠を取り出せば、コガネマルの目から軍配家の紋章が外に投影される。
「五大分家の紋所っ! も、申し訳ございませぬ~~っ!」
足軽ロボ達は、一斉にコガネマルに向けて平伏した。
ロボから降りる太郎達、ロボから降りて来て太郎達に平伏し出した役人達に頭を上げさせる。
「軍配家の太郎様、山神家の山吹姫様っ! 申し訳ございませぬ!」
「いや、こちらがロボで来たのが勇み足でしたので」
「此度は、出迎えご苦労様ですわ♪」
「よ、ようこそおいで下さいました~~~っ!」
浜辺に謎の巨大ロボットが現れたから賊かと思って出て来た役人達は、現れた太郎達に驚いていた。
「軍配の若様、山吹姫様、此度はようこそおいで下さいました」
「お騒がせして申し訳ない、海賊の噂を聞き急ぎ馳せ参じた次第で」
港町の代官所に通された太郎達、太郎が代官と面会し事情を伝える。
「それはありがたい、某のロボは先の襲撃で修理中ゆえに何卒お力添えをお願い申す!」
「魚沼殿、悪党退治は我が使命ゆえに俺と姫にお任せ下さい♪」
地元の代官、魚沼と話を付けた太郎は正式に海賊退治を引き受ける事となった。
港町を視察しに出た太郎と山吹姫、幟を背負い身分を表に出して聞き込みをする。
「酷いもんでしたよ、真昼間から浜辺に見知らぬ船が現れてロボが飛び出して暴れたんですから」
町人のおばちゃんが、太郎達に身振り手振りで答えてくれる。
「敵はどうやら、この街の地理に詳しいようですね?」
「手引きした者がいるのだろう、腹立たしいな」
「どこにでも悪しき性根の者はおりますの、魚沼様が守られた蔵がまた狙われるのでは?」
「ええ、行きましょう!」
太郎達は代官が撃退に成功した蔵へと向かう、蔵の持ち主である廻船問屋の繋ぎ屋へと赴いた。
「お、お武家様? 当店へどのようなご用件でしょうか?」
「海賊退治に来たスーパーロボット乗りだ、話を聞かせて欲しい!」
「我ら軍配党に、是非ともお聞かせくださいませ♪」
太郎と山吹姫が店内に入り、太郎が印籠を見せて尋ねる。
店員が慌てて、主人を呼べば緑色の着物を着た糸目の美しい女性の店主が現れた。
「繋ぎ屋の店主のたづなと申します、お上がりくださいませ」
「たづな殿、お邪魔させていただく」
「お邪魔いたします」
太郎達は客間に通されて、たづなから話を聞く。
「魚沼様からのご紹介ですか、何卒宜しくお願いいたします」
「ああ、早速だが敵を叩きに行こうと思うので海賊の潜みそうな島はござらんか?」
「はい、東の沖に漁師達が一休みに立ち寄る程度の小島がございます」
「おお、情報提供ありがとうございますの♪」
「宜しければ、当店の船をお出しいたしましょうか?」
「いや、こちらのロボで向えるのでお構いなく♪ お邪魔しました」
太郎と山吹姫は、たづなに礼を言い金三郎から渡された金子からいくらか小判を包んで支払い店を出た。
ニチリンオーを召喚した太郎は、龍神の加護を使いリュウジンニチリンオーへと換装させて海へ出た。
「悔しいですが、コガネマルは陸戦型なので海での戦いはお任せいたしますわ」
「俺とあなたは一蓮托生、なのでこうして一緒にいてくれるだけで力が出ます♪」
「はい、お支えいたします太郎様♪」
ニチリンオーに同乗した山吹姫が太郎に微笑む。
海上を滑走して海を行くリュウジンニチリンオー、目的の小島に近づけば不審な黒い船を発見する。
「げげっ! 船長、スーパーロボットが来ましたっ!」
黒船の甲板では下っ端海賊が、ニチリンオーを見つけた。
「はっ♪ あれがヒノワのスーパーロボットか♪ お前達、こっちも行くよ♪」
「アイアイサ~♪」
西洋の海賊の船長と言わんばかの姿をした褐色の黒髪の美女が叫び、手下達と船内に入る。
黒船がリュウジンニチリンオーの目の前で、海賊船長をモチーフにした巨大ロボへと変形した。
船首が割れて砲塔付きの肩アーマーになった上半身、腰にはカトラスが二振り。
下半身も船尾が割れて両足を覆う砲塔付きのレガースとなり海上に浮いていた。
「海賊ロボ、ブートレッガー参上っ♪ これでもくらいなっ♪」
「出たな海賊っ、異国の海賊は裁判無用で成敗だっ!」
ブートレッガーの双肩の砲塔から放たれた砲弾を、大波を起こして叩き落すリュウジンニチリンオー!
「海賊に波とは小癪なっ! 海賊剣術、波乗り切りっ!」
ブートレッガーが腰のカトラスを抜き海の上を滑走しながらリュウジンニチリンオーへと切りかかる!
「こっちはアメノサンサホコの稲妻突きだっ!」
リュウジンニチリンオーは、三叉鉾の穂先に金の雷を纏わせて突き返すっ!
「砲塔は足にも付いてるんだよ♪」
剣技を突き返されれば砲撃だと、足の大砲をぶっぱなすブートレッガー。
リュウジンニチリンオーは避けられず被弾するも、無傷であった。
「その程度の砲撃で、ニチリンオーがやられるかっ!」
「ちいっ! 何て頑丈さだよっ!」
「お返しだ、水でも被って頭を冷やせっ!」
リュウジンニチリンオーの肩の龍の口から超高圧の水流が放たれ、敵を突き飛ばす。
「余計なお世話だっ! 船には、錨ってのがあるんだよ!」
突き飛ばされたブートレッガー、今度は巨大な鎖の付いた錨を召喚する。
そして、鎖鎌の如く扱い鎖をニチリンオーへと投げつけた!
リュウジンニチリンオーが、三叉鉾で鎖を防ぐと矛に巻き付く!
ブートレッガーに鎖を引き寄せられて、リュウジンニチリンオーは錨で殴り飛ばされた。
その衝撃からの防御にエネルギーを回した為、加護武装の効果が消えてニチリンオーへと戻る。
「やるな、あっちも異国のスーパーロボットかっ!」
「そのようですが大丈夫ですの、太郎様?」
「まだ昼間なので、大丈夫です♪」
天の太陽から無限のエネルギー供給を受け、足の放熱で熱気球のように水面を浮遊しているニチリンオー。
「ちっ、水適性を奪えばと思えばチート機体めっ! スペトガル王家と同じ太陽神の機体とは厄介だねえっ!」
「ダイグンバイ百叩きっ! 小手、面、突き、胴っ!」
ニチリンオー、背中のバーニアで突進し巨大軍配でブートレッガーを滅多打ちする!
ブートレッガーの方も錨で受け防御をするが受けきれず、叩きのめされて転倒した。
「止めだっ! ダイグンバイ烈日スマッシュッ!」
ニチリンオーが炎燃え盛る軍配を叩きつける!
「ここで終わりか、あの世に来たら覚えてろよ太陽野郎っ!」
「せ、船長~~~っ!」
ニチリンオーの技を喰らう寸前、船長は最後の言葉を呟きブートレッガーは爆散した!
太郎は、初の強敵との戦いを辛くも制する事が出来た。
「海賊は倒したし島を探索しましょう、コガネマルの探査能力を頼りにしてます♪」
「ここほれワンワンですね、お任せ下さいませ♪」
海賊を倒し、根城にされていた小島を捜索した太郎達。
コガネマルが金属探知で地面を掘るなどをして、隠されたコンテナを見つけて奪われた品の一部を取り返す事が出来た。
太朗達は取り返した品を持って、米潟へと帰還した。
「太郎様、此度はありがとうございました」
「いえ、海賊は他の者がまたいずれ来るやもしれませんので今後も警戒をお願いします」
「かしこまりました、我が藩は海有り藩ゆえに城にも願い出て警備を強化いたします」
代官所で映像記録を提出して魚沼に結果を報告する太郎、今回の件は解決として幽世屋敷で休息を取った。
「異国には、スーパーロボットを悪用する者もいるのですね」
「力の使い方は十人十色、強敵と出くわしても負けぬように精進せねば」
「私達ならできますわ♪ 世の中には強敵もおりますし、私達も今後は人手が必要になりますわね?」
「ええ、良い人材を探して味方に加えたい所です」
魚沼から謝礼として貰った米と魚の刺身で作った散らし寿司を食いつつ、太郎と山吹姫は今後を想うのであった。