第三十五話:若様、エルフ大名を成敗する
「見つけたぞ、あの船だ!」
「了解、空襲だね♪」
「月夜様、お手を♪」
「あの、何をなさるので~~~~っ!」
全員がヒスイマルから落下し、空の上で円陣を組みグルグル回りながら船の甲板へと着地する。
「な、何者だあっ!」
「何処のどいつだ!」
「やっちまえっ!」
船室から出て来たのは、ガラの悪いちょんまげ頭のごろつき共。
抜き身の短刀や銛などで武装していた。
「御用改め、もとい悪党退治だ!」
「大人しくすれば命は助けるって、その気はないね♪」
「恩知らずな悪党は成敗ですの!」
「行きますよ兄様っ!」
「余り殺生は好かんのだがな? お前達、悔い改めるなら今の内だぞ?」
太郎が印籠を見せて最後通告を行う。
ここで止まるなら法の裁きで済ませよう、と慈悲を見せる太郎。
「大名家が怖くて、悪党ができるかっ!」
「ごろつきの意地を見せてやらあっ!」
「くたばれ~~っ!」
悪党達はひるまず抵抗に出る、話は終わりだ。
悪党達には情け無用、楓の二丁拳銃が足止めすれば山吹姫の剣術が斬り捨てる。
「私の拳は、亀の甲並みに固いです!」
「いや、無茶するなっ! 仕方ないっ!」
月夜の拳がごろつきの胸板を突き破り、太郎の刀がごろつきの首を切る。
雑魚共は哀れな人生を終えた。
「やれやれ、何があったのです? ひ、ひいいっ!」
「どうした腹黒屋っ? げげっ、これはっ!」
ごろつき達の後に船室から出てきたのは、紫の羽織を着た太った中年男性の商人。
もう一人は、司法の役人が纏う黒い羽織を着た中年男性の武士。
「正義の味方軍、配党の御用改めだ! 縛に付けっ!」
太郎が印籠を見せれば、役人と商人はその場で平伏する。
「お、お待ち下され! 某は富沢藩の役人で、この腹黒屋へ潜入捜査を!」
「そ、そんな! 密貿易に密漁で甘い汁を吸わせて差し上げたのに!」
見苦しく言い訳をする悪党達。
「うん、殺しはせんがキッチリ仕置きはするぞ」
「はい、忍法悪人縛りの術♪」
太郎が宣言すれば、楓の忍法によりどこからか出てきた縄で悪人達は縛られた。
「私達は、証拠の回収に参りましょう♪」
「お任せ下さい、山吹様♪」
月夜と山吹姫が船室に入ると、山吹姫の遠吠えが上がた。
「尋常じゃないな、楓姉さんは見張りは任せた!」
「うん、任された♪」
太郎も船室へ乗り込む。
「太郎様、人魚族の女性が捕らわれてますわ!」
「マジか、初めて見たな」
「もしや、クジラの化け物はこの方を救いに来たのでは?」
船室の奥には水槽がおかれた部屋があった。
水槽の中には白い肌に銀髪の美少女が一人捕らわれていた。
下半身が青い魚であったことから、少女は人魚族と推定。
「日輪の子に狼の子に亀神の巫女、どうか私をお救い下さい!」
いかなる力か、水の中でも普通にしゃべる人魚の美少女。
「ああ、お助けいたします」
太郎が返事をして水槽の上蓋を開いてから下がり、甲板へと出て行く。
蓋が開かれた事で、美少女は水槽から飛び出した。
「取り敢えずお召し物をどうぞ♪」
山吹姫が人間化した人魚の美少女に、虚空から衣類一式を取り出して与える。
「ありがとうございます、狼の子♪」
「山吹ですわ♪ こちらは月夜様で、先ほどの殿方は太郎様ですの♪」
「月夜です、甲板に参りましょう♪」
山吹姫と月夜が名乗り同行を求めると美少女は頷いた。
「まさか、人魚の人さらいとは厄介な事をしてくれたなあ?」
甲板に戻って来た太郎が腹黒屋と役人を睨む。
「さて、言い逃れや隠滅が怖いからこの場で報告書上げて父上に上げるね♪」
楓が小さい天狗型の式神を召喚すれば、式神達が筆や巻物を駆使して書類を仕上げる。
山吹姫と月夜が回収した証拠の書類なども式神達が確保。
「神君家への報告は済んだか、では御領主殿へは俺からやろう」
太郎が筆と巻物を虚空から取り出して書き上げる。
太郎達が腹黒屋と役人を引き立てて下船すると、港では鉄砲隊が待ち構えていた。
「奴らは賊だ、全員撃ち殺せっ!」
「しかし、神君家の方々も!」
「貴様も賊だ、死ねいっ!」
鉄砲隊の指揮官に進言した武士が、指揮官の刀で斬り捨てられたのを合図に火花が散る。
煙に包まれる太郎達だが、月夜が張った結界により全員無事であった。
「いや、むちゃくちゃ俺ら敵対されてるんだけど?」
「神君家への謀反ですわね、成敗ですわ♪」
「うん、これはもう仕方ないね」
「兄様、もはや合戦ですよっ!」
「仕方ない、出陣だっ!」
悪党を懲らしめて人助け、下手人を引き渡そうとしたら襲撃。
流石の太郎も腹を決めるしかなかった。
「太郎様、藩主はご禁制の麻薬栽培を行なっております!」
「私達に命じて海賊との密貿易も行っております~っ!」
腹黒屋と役人が藩主の罪状を白状し出す。
「貴様らも同罪だ馬鹿者っ!」
軍配で叩きのめす太郎、鉄砲隊はもはやこれまでと抜刀して攻めて来た。
「兄様、危ないです!」
月夜が結界を張り太郎を守れば、山吹姫と楓が突撃し敵を倒す。
太郎達が捕えた腹黒屋と役人は、流れ弾で事切れていた。
「ヒノワの人間、恐ろしいです!」
太郎の後ろにいた。金魚柄の着物姿の人魚の娘が怯えた。
「いや、ヒノワでもここまで狂った手合いはそうそういないから」
「富沢の街は新しく作り直した方が良いですわね?」
「若様、この鉄砲隊の人達みんな薬を打たれてる」
「取り敢えず手短ですが、弔いの祈りを」
月夜が手を組み、軽く弔いの祈りを行う。
「良し、素性や名前はまだ来てないが人魚の娘さんはギンゲツオーに乗せてくれ」
「わかりました」
「宜しくお願いいたします、亀神の巫女様♪」
「よし、皆ロボを持てい! 軍配党、全軍出撃であるっ!」
太郎が黄金軍配を掲げて下知を告げ、一同がロボットを召喚して乗り込む。
太郎達がニチリンオーにギンゲツオー、お供ロボット軍団全員で殴り込んだ城下町。
黄金の街と噂されていた富沢の街は、毒々しい薬物の紫煙で満ちていた。
住人達はゾンビとなって徘徊し、富沢の城は毒々しい巨大な黒薔薇で覆われていた。
「くそっ! 血迷ったかここのエルフ大名はっ!」
ニチリンオーが試しにダイグンバイを扇ぎ、浄化の光を伴う風を巻き起こす。
「亀は万年、ギンゲツオーの命の癒しの水ならばもしや! ギンゲツストリ~~ム!」
「亀神の巫女様、海の女神の姫巫女として加勢いたします!」
ギンゲツオーがの中で月夜と人魚の娘が祈れば、命を救う恵みの雨を降らせる。
「どれほどの者達が悪事に加担しているかはわかりませんが、救えるなら!」
コガネマルの中で山吹姫が祈る。
「退治するのは悪い奴らだけで良いよね!」
ヒスイマルをホバリングさせながら機内で楓も呟く。
ニチリンオーの浄化の風が、汚れた煙を霧散化させて消し去る。
ギンゲツオーの降らせた雨が、街の住人達を生きた人間へと蘇らせた。
「え、ギンゲツオーの癒しの雨ってそこま力があったの?」
ヒスイマルの中で楓が驚く中、山吹姫から通信が入る。
「恐らくは、人魚の方のお力添えやもしれません」
「あ、やっぱりあの子只者じゃなかったんだ?」
「私に近しい、半神やもしれません」
「やっぱり神様は、大事に扱わないとだね♪」
「ええ、決戦に備えましょう♪」
山吹姫とやり取りを終える楓。
人間に戻った住民達は、ギンゲツオーとニチリンオーに感謝し平伏した。
「いや、民達よ! ここは戦場となるから街から離れよ!」
「これより、民を苦しめる悪の城主を成敗いたします!」
ニチリンオーとギンゲツオーが民達に叫べば、住民達は太郎達の言葉に従い逃げだす。
民達が逃げたタイミングで、大地が揺れて地面から黒い茨が飛び出して来た!
「舐めるな、アカベコマルよ焼き払え! アオトビマルは敵の行動予測をしながら突撃!」
ニチリンオーの中から、アカベコマルとアオトビマルに命じる太郎。
太郎の指揮に従い、アカベコマルは鼻から火炎放射で茨を燃やして除去。
アオトビマルが飛び跳ねながら進めば、城から黒の陣笠に黒い鎧の足軽ロボが打って出る。
「雑兵はお任せあれですの♪」
「ケンケン蹴散らし露払いだよ~♪」
コガネマルとヒスイマルも突撃。
アオトビマルとコガネマルは連携して陸で戦い、ヒスイマルは空から機銃で足軽を蹴散らす。
「おのれ、神君家のスーパーロボット共~っ!」
城を覆った巨大な黒薔薇の蕾から巨大な灰色のエルフの美女の顔が現れる。
「おのれ、大名の身でありながら化け物に成り下がったか外道め!」
ニチリンオーがコダイオーブレードを構えて突進する。
太郎は幼い頃に自部の城へ遊びに来た、エルフの女性大名の変わりようを嘆いた。
「ギンゲツオーも参りますっ!」
ニチリンオーを追い、ギンゲツオーもブースター全開で突進した。
「ほざけ小童共、我が永遠の美貌の為に死ねえっ!」
黒薔薇エルフは、口から黒煙を吐き出して威嚇する。
「民を苦しめて世に害を成す有様のどこが美だ! 全合体で仕留める!」
ニチリンオーが叫ぶと、お共ロボが集い合体を始める。
「亀甲大結界発動、合体の邪魔はさせません!」
ギンゲツオーが躍り出て巨大な六角形のバリヤーを展開して、合体を守る。
「小癪な亀が! 忌々しいっ!」
茨をタコの触手のように振るう黒薔薇エルフだが、ギンゲツオーのバリヤーは破れない。
「待たせた、すまん!」
「さあ若様、ズバッとお仕置きしちゃおう♪」
「ゴシキニチリンオー、見参ですわ♪」
合体を終えたゴシキニチリンオーが飛び出し、黒薔薇エルフの顔面を蹴り飛ばす。
城が崩れて大地に倒れた黒薔薇エルフ。
かつてはエルフ守と呼ばれた才人の面影はもはやどこにもなかった。
「謀反に麻薬に密貿易に誘拐、罪状限り無し! 総合判断で、成敗っ!」
ゴシキニチリンオーから太郎の声で断罪の宣告、久しぶりに簡易お白州によるお裁きをする太郎。
「やられてたまるかああっ! 貴様らを倒して、人魚の肉を喰らえば生き延びられる!」
起き上がった黒薔薇エルフが、牙を剥いて襲い掛かる。
「正義の刃、金環日食崩しを受けて見よ!」
ギンゲツオーが退避すると同時に、敵に向かい燃え盛る光の金環が跳んで行き敵の動きを止める。
続けざまの斬撃で両断された黒薔エルフは燃え尽き、滅んだのであった。
「これにて一件、落着」
残心を決めたゴシキニチリンオーの中で太郎が呟く。
事件は解決したが、街の復興作業と事後処理。
次の領主が来るまでの、治安維持を申し付けられた太郎であった。




