第三十二話:若様、都へ
西街道から北へと、ヒノワ本島の旅に戻った若様。
前回は避けていた中都にやって来た。
「ついに来たねえ、中の都♪」
「日戸とは違い、西洋風の建物は見当たりませんわね?」
「ここらは昔からの寺社や文化財が多いから景観の保護がされてるんだよ」
良く晴れた昼間、和風な大通りを歩きつつ語り合う太郎達。
「それにしても私達、目立つよね~♪」
「致し方なしですわ、素性を隠してはならぬ掟ですもの♪」
「うん、やはり都だと幟とか目立つな」
太郎達の社会的な立場。
地球で言うなら政党の名を掲げて国内全土を回り選挙活動をするタレント議員。
地方の山村などではそんなに騒がれなかったが、都市では知名度が上がる。
「あれって、噂の軍配党?」
「あちこちで、人助けとかしてるらしいな?」
「良い人らしいけど、都でロボは呼ばんで欲しいわな?」
「滅多な事言ったらあかん、斬られるで!」
「いや、あの太郎様は神君家の中でも偉い寛大なお方らしいで?」
「若いのに、荒れ果てた清宮の復興の差配もなされたっちゅう話や」
都の町人達が太郎達の事をしゃべり出す。
「何と言うか、身内達の事もあって申し訳ないな」
「葵様なら、抜かれてましたわね」
「一応、止めると思うよ葵の所なら」
人々の声にお腹が少し痛くなる太郎であった。
ロボで暴れてると言う事だけなら、他の者達と大差ないのは事実。
野蛮を嫌う都人には、ロボ乗りは歓迎されない空気を太郎は感じる。
「都の皆の衆、我ら軍配党は民の為にならぬ力は振るわない!」
「公明正大、明朗会計、開運招福、我らの行い陰り無しですわ♪」
「都の皆様、我ら軍配党♪ 御用とあらばお助けいたします♪」
陰口に負けてたまるかと開き直った太郎、大声を張り上げて皆で喧伝する。
「邪気も悲しみも退治し幸せを運ぶ、この軍配太郎の働きをしかと見よ!」
黄金軍配を大上段に構えて見得を切る、ド派手に行くぜと恥を忍ぶ太郎。
山吹姫が調子良く手持ちの太鼓を叩き、楓が景気よく琵琶を掻き鳴らす。
楓が出した小天狗型の式神四体が空に舞い、太郎達の真上にスクリーンを広げる。
スクリーンに映るのは、太郎達のこれまでの活躍のダイジェスト映像。
山吹姫も式神を召喚して交通整理、大通りでのゲリラライブ上映だ。
当然、何の騒ぎだと役人達も出て来る。
だが太郎が、天下御免のパスポートである印籠を見せれば役人達も手伝いに回った。
映像が終わったので太郎達がオーディエンスに一礼すれば、拍手が上がる。
「ありがとう、皆の衆♪ 軍配党は民の力になるぞ♪」
「お役人の皆様もお疲れ様でしたの♪」
「お騒がせいたしました~♪」
太郎達がライブを終えて挨拶や役人達に頭を下げる。
「いえ、神君候補者の方の遊説はご公務でございますゆえ」
「すまない、次からは許可を取る」
「宜しくお願い申し上げます、それでは」
役人達は立ち去った。
「さ~て、それじゃあどこか甘味のお店で一休みしよう♪」
「賛成ですの♪」
「う~ん、お断りとか意地悪されないかな?」
「いや、若様? もっと自信持ってよ、戦ってる時みたいにさあ♪」
「そうですの、太郎様は天下の太郎様ですの♪」
「いや、調子に乗る時は乗るけどさあ?」
仲間達に励まされるも前世から引き継いだ庶民感覚が、太郎のテンションを下げる。
「堂々と胸を張って下さいませ♪」
「私達がいるから♪」
「うん、ありがとう二人共」
山吹姫と楓に礼を言う太郎。
「じゃあ、改めて都の甘味を味わいに行こう♪」
「小豆のお菓子がいただきたいですわ♪」
「暑気払いの水無月や、あんみつとか俺も食いたいな♪」
改めて甘味処で打ち上げだと、都の通りを歩き出す一行。
こじんまりした甘味処を見つけた太郎達は暖簾をくぐる。
「い、いらっしゃいませ~っ!」
「ひ、ひ~~~っ! 神君家の若君が家のような所に?」
「お、お席はあちらにご案内いたします~っ!」
店内は、若様リアリティショックとでも言うべき驚きに満たされた。
「すまない、世話になる」
「お邪魔いたしますの♪」
「あんみつと水無月と冷たいお茶を三つ下さい♪」
「か、かしこまりました~っ!」
「ああ、サインと手形は用意する」
まだ若干パニック状態な店員らしき町娘が、注文を受けて動く。
「気が付けば、サインも手慣れてきましたわね太郎様♪」
「うん、若様のサイン欲しがるお店多いしね」
「恐れ多くもありがたいよ、気持ち込めて書くぜ」
虚空から取り出した色紙に、店の名と日付とサインを書く太郎。
注文した品を味わった太郎達は、代金を払い店にサインをプレゼントして立ち去った。
「それで、次はどうするの若様?」
歩きながら楓がこれからの事を尋ねる。
「確か都にはギンゲツオーなるロボットがおられるとか?」
山吹姫が思い出す。
「ああ、盾守家の月夜姫が操るギンゲツオーのホームだ」
太郎が答える。
「でも、都はロボットを召喚してはいけないんだよね?」
それならば、自分達との戦いにはならないのではと楓が疑問を口にする。
「いや、例外的に召喚できる場所はあってさ都の北の大舞台で有名な亀水大社が一つ」
「ロボ相撲の奉納試合で有名ですものね♪」
「思い出した、そこって月夜ちゃんのお屋敷でもある神社だ!」
楓も神君家の姫君の出、親戚達と交流はあったので思い出す。
都の北にある巨大な湖、亀水湖。
亀の甲羅のような形をした湖で水源でもある神域。
湖の中心には巨大な大舞台があり、客席船を浮かばせて観覧できる。
ほとりには巨大な神社、亀水大社が建立されていた。
亀水大社の宮司にして都の長が、太郎のはとこにあたる盾守月夜姫。
亀水の神が授けし鏡の盾を武器とする、スーパーロボットギンゲツオーのパイロットだ。
「月夜様は、旅にはお出かけにならないのですの?」
山吹姫が疑問を口にする。
「本来なら出ないといけないんだが、色々とな」
太郎もどうしたもんかと思案顔になる。
「都の守りも大事だからね、ヒノワのと言う国の腰みたいな場所だから」
楓が語る、外国からの来賓を招いたりと政治的な外交で利用される中都。
「もしや。都を覆う亀の甲羅のような結界はギンゲツオーの力でしょうか?」
山吹姫が空を見上げると、うっすらと光のエネルギーフィールドが見えた。
「うん、あの結界で都に異界獣とか来るの防いでるらしい」
「でも、旅に出て他の神様の力とかいただいて強くならないと駄目だよね?」
「ですの、可愛い子には旅をさせよと申しますし」
歩みを止めて茶店で茶と団子を味わいながら語る太郎達。
「何にせよ、亀水に赴かないとな」
太郎はギンゲツオーと月夜に会いに行く事を決めた。




