第二十七話:若様、ゲスト試合をする! 天下突貫ホクテンオー登場
「ほっ! はっ! てやっ!」
「まだまだですの! とうっ!」
「おっとっ!」
「二人共、がんばれ~♪」
幽世屋敷の中にある板張りの剣術道場。
回復した太郎が、リハビリだと山吹姫と竹刀で稽古を行う。
お互いに、面や胴などの稽古用の防具を身に付けての打ち合い。
乾いた音を立てながら、両者の竹刀がぶつかり合う。
太郎の竹刀は山吹姫の胴を捉えたが、姫の竹刀は太郎の面をペシリと打った。
「うん、若様は惜しいけれどこれは姫が一本だね♪」
立ち会う楓がジャッジを下す。
「参りました」
「お疲れ様ですの、お体の回復具合は順調ですわ♪」
一旦離れて、互いに礼をして座り籠手と面を外して話し合う。
「でも、良かったよ若様が元気になって♪」
「まあ、姫達のお陰だよありがとう♪」
「どういたしましてですの♪」
「姫は師匠でもあるから、頭が上がらない♪」
「次は柔の稽古ですの、その後は按摩とお灸ですの♪」
「姫、お灸は止めても良いと思うんだけど?」
「駄目ですの♪ 太郎様には、薬草湯にも入っていただきますの♪」
山吹姫がやんわりと却下する。
運動にストレッチに投薬、太郎の前世の地球でも通じる考えであった。
「そうだよ若様、健康は大事だからね♪」
「いや、楓姉さんにもその言葉は返すよ」
「うん、私も気を付ける♪」
楓は笑って答えた。
「それでは、道具を片付けたら隣で柔の稽古ですの♪」
「お、お手柔らかに」
「整復はお任せですの♪」
「私は補助に回るから♪」
「楓姉さんは、剣の稽古とかはやらないの?」
「やるよ、忍でもあり武家でもある家の子だからね♪」
「楓様の剣、気になりますの♪」
「普通の太刀もできるけど、小太刀や短刀を使うのが得意かな?」
小太刀サイズの竹刀と短刀サイズの竹刀を左右の手に持ち、上げて十字に構える。
「うん、どう打ちかかっても反撃を喰らう構えだ」
楓の構えを見て、太郎の目に瞬時に楓の動きを予想した画像が映る。
今の自分では、機械の助を得ても一本を取られると太郎は判断した。
「確かに、これは厳しいですの」
山吹姫も熟考して呟く。
「まあ、必要なら振るうから頼りにしてね♪」
楓が微笑む。
その後、太郎は山吹姫の宣言のままに柔術の稽古を受ける。
受け身に、当身、立ってと寝ての投げ締め極め技の型稽古。
太郎と山吹姫は、円を描いて舞うような足さばきで動き回る。
双方が突きや肘打ちや手刀の当身を仕掛け、袖や襟に帯を取り組み技をかけ合う。
「太郎様も、野風流に馴染まれましたね♪」
「まだまだだよ、投げられる度に目がぐるぐる回るよ」
「捻りと円の動きで投げるから当然ですの♪」
柔術の稽古を終え、互いに組んでストレッチをしながら語り合う太郎達。
太郎の具合も改善した所で、改めて熊肥の城下町へと向かう事となった。
関所で印籠を見せる太郎。
「おお、ようこそ熊肥へ♪ 御前試合も盛り上がりますな♪」
「御前試合? まあ、頑張ります」
何の事かわからない太郎へ楓が声をかける。
「若様、父上から今連絡が来たんだけどホクテンオーと試合しろって?」
「神君の権限で決められたなら、やるしかないな」
「番外の勝負ですが、報奨金は出るようですのね?」
山吹姫も交えて話す太郎達。
「皆様、城より迎えの者が参りますのでお待ち下さい♪」
と関所の武士から声がかかる。
「うん、これはもう抜けられない流れだから乗っかろう♪」
「馬刺しや各種名物が副賞、美味しそうですの♪」
「うん、若様は頑張って♪」
「いや、皆で頑張ろうな?」
街に来て早々、イベントに巻き込まれた太郎達。
観光を楽しむ間も、熊肥城に感動する間も無く早籠に乗せられて天守に迎えられる。
「良くぞ参られた太郎殿♪ 堅苦しい礼儀は抜きで参ろう♪」
兄貴風吹かせる大名と言うより、元気な美青年と言う印象の城主。
細藤清秋のテンションに太郎は面食らった。
「貴殿の活躍は存じておる、北からはホクテンオーをお招きしたので派手に暴れてくれ♪」
楽しそうに笑う清秋、見てる方は楽しいよなと太郎は内心同意しつつ思った。
「あ~に~じゃ~っ♪ とうっ!」
どこからともなく元気な美少女の声が響き、太郎へと駆け寄って来た。
体操選手ばりの跳躍と空中回転から、太郎に肩車状態になる。
「げげっ、青葉っ! 姫の癖にはしたない!」
太郎が名を叫んだ相手。
その姿は、ショートの黒髪に右目に眼帯をした赤い瞳の美少女であった。
「兄者だ~♪ 久しいな、太郎兄者♪ 我がライバルにして兄貴分よ♪」
「ああ、あの子か」
「あの方、動きがまるでお猿さんですの!」
突然現れた青葉に対して唖然とする楓と、驚く山吹姫。
青葉は太郎からジャンプして、離脱し綺麗に着地する。
「家のはとこが申し訳ございません、清秋殿っ!」
太郎が青葉の行動に対して、城主である清秋に伏して詫びる。
「いやいや、子供は元気な方が良い♪ あれが男児でないのが残念だ♪」
笑って許す清秋に、この人も大概であると太郎は思った。
「我が名は北天青葉っ!」
青葉が名乗りを始める..しかも右手で顔を覆う中二病なポーズで。
「神君家の名槍、ホクテンオーのパイロットにして北の姫っ!」
「いや、お前は名槍どころか迷走してるぞ存在が!」
太郎がツッコむが青葉には無視される。
「例え敬愛する兄者であっても、全力で挑むゆえにお覚悟を♪」
「いや、お前お共はどうした? 試合で叩きのめしてから説教するからな?」
「ふふふ♪ では次は試合の場で会おう、失礼♪」
開いている城の窓から飛び出す青葉、着物から大凧が展開して空を舞って行く。
「愉快な姫君だな、まあ両者ともに健闘を祈る♪」
清秋は扇子を広げて笑った。
「混沌とした土地ですのね?」
「いや、ここだけだと思うよ?」
山吹姫と楓が語り合う。
「俺の親族、べらぼうすぎる!」
自分もべらぼうな部類なのは棚上げする太郎であった。
城の本丸から出た太郎達は、試合会場へと船に乗せられて案内される。
「会場は島なんだね♪」
「流石に、ロボが試合で暴れるには城下は狭いですの♪」
「天浦島か、イットウオーの時も島で戦ったな?」
「民の迷惑にならぬなら良しですの♪」
「うん、それはそうだ」
山吹姫の言葉に太郎は納得した。
船から降りれば、高台の上に巨大な円形闘技場が見えた。
「あれが祭りの場所か?」
「細藤家は築城の名人の一族だけに、特徴的な建て物を作るねえ?」
「がんばりますの♪」
港から四体のロボが担ぐ早籠に乗り、会場入りした太郎達。
太郎は巨大なモニターやら人工芝のフィールドから、地球の野球場を思い出した。
競技フィールドの中から観客席を見上げて回すと、場内満場であった。
モニターに太郎達が映ると客席から拍手が上がる。
祭り囃子が流れ、青の法被姿で金のドリルランスを構えた青葉が神輿に担がれて参上した。
「やあやあ我こそは北の姫、北天青葉♪ 太郎兄者、いざ勝負♪」
神輿から飛び降りた青葉が槍の穂先を太郎へと向ける。
「望む所だ、行くぞっ! 姫達はあっちがお供を使うまでは手出し無用で!」
「かしこまりましたの!」
「若様、頑張って♪」
太郎を信じて下がる姫達。
モニターが試合開始を告げると両者、召喚アイテムを手に掲げた。
「天下成敗ニチリンオー見参っ!」
ニチリンオーに乗った太郎が叫ぶ。
「天下突貫ホクテンオー、推参っ♪」
青葉の声がスーパーロボットから流れる。
城の天守を模した胴体はニチリンオーと似ているが、メインカラーは青。
屋根瓦風の肩アーマーは黒だが、鯱の部分が金のドリル。
頭部パーツが被る黒兜には、頭頂部に鬼の角ような金のドリル。
膝や爪先にも金のドリルと、ドリルだらけのスーパーロボットがホクテンオーだった。
「ドリルはロマン♪ 貫くのもロマン♪ 行くぞ、兄者~っ♪」
ホクテンオーが虚空からドリルランス召喚して突進して来た!
「否定はしないが、叩きのめすっ!」
ニチリンオーもダイグンバイを構えて突っ込む。
激しい音が鳴り響き、ドリルを軍配で止めての競り合いになる。
「甘いよ兄者、ドリルスパークだっ!」
「台場キャノンっ!」
ホクテンオーは両肩のドリルを回して電撃を発生させる。
同時にニチリンオーは腹部から火の玉を発射、両者を巻き込む大爆発が起こる!
煙が晴れると双方の距離は離れ、どちらも軽微だが焦げ目や装甲に傷が出来ていた。
「へへっ♪ まだまだ序の口だよ♪ ドリルブリザード!」
「負けるか、ニチリンビーム!」
ホクテンオーがドリルランスの穂先から吹雪を起こす。
対するニチリンオーも兜からビームを放つ。
北風と太陽の童話の如く、反する属性の力がぶつかり合う。
結界で守られている為に観客席に被害はない。
「兄者にデバフと言う物を味合わせてやろう♪ 天よ渦巻け!」
ホクテンオーが槍を突き上げれば、空が瞬く間に雲に覆われ雪が降る。
「生憎だな、天はいつも我らが上にあるっ! 吹き飛べ~っ!」
ニチリンオーがダイグンバイを掲げれば、空は晴れ上がった。
「ぐぬぬ~っ! ならば小細工抜きだ、回れドリルっ!」
ホクテンオーが槍を含めてすべてのドリルを回転させる!
「ならばこちらも決めるぜっ!」
ニチリンオーも、ダイグンバイに日の光を超高速で吸い込みチャージする。
「レインボーストラ~~~イクッ!」
先手は、虹色の光を纏いながら槍を構えて突進するホクテンオー。
「落日ダイナミックッ!」
ニチリンオーは、太陽の如き巨大な火球を生み出し大上段から叩きつけた!
ド派手な必殺技合戦の押収、その結末は太陽が虹を飲み周囲は光に包まれた。
光が消えると、二体の巨人は消えてバタりと倒れている青葉。
「うう、悔しいよ~っ!」
倒れながら悔しがる青葉。
「やかましい、次は説教だ!」
立っていた太郎は、青葉を起こすと背負う。
モニターにはニチリンオーの勝利が表示され、客席からは大歓声が上がった。
「ふああ♪ 兄者の背中~♪」
「いや、お前は何をやってるんだ馬鹿っ!」
「何って、数年ぶりのスキンシップだよ兄者~♪」
「いい加減にしろ!」
太郎が青葉を投げるも、青葉は空中で回転し着地。
「はっはっは~♪ 今回は私の負けにしておいてやろう、さらばだ♪」
青葉は天高くジャンプすると衣服から大凧を展開、風に乗り空へと飛んで行った。
「何というか、大概にしろよなあいつは~っ!」
空に向けて叫ぶ太郎に山吹姫と楓が駆け寄る。
「お疲れ様でしたの♪」
「次は私達も一緒に戦いたいね、若様♪」
「俺は、身内の勝負は暫くごめんこうむりたいよ」
今回は身内に振り回された太郎であった。




