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天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記  作者: ムネミツ
第四章:南国邂逅編
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第二十六話:若様、火山の神を鎮める

 「ここが熊肥(くまごえ)の地か」

 「もっと長島を楽しみたかったよ」

 「私は、こうした野山の方が好きですの♪」


 野道を歩く若様一行。


 ナンカイオ―との遭遇を経て数日後、火の国熊肥(くまごえ)に辿り着いた。


 「熊肥は、隣の宮高に跨る火山の高鉾山が有名だね♪」

 

 楓が解説をする。


 「ですね、けど俺も少しは知ってますよ熊肥は名刀やロボ鍛冶の聖地♪」

 「私の刀も熊肥産ですの♪ そして、剣術では熊肥一本流が有名ですの♪」

 「俺のもです、熊肥鬼狩(くまごえ・おにかり)の大小♪」

 「あはは、やっぱり知ってたか♪」

 「いや、来たのは初めてだけど来れて良かったよ♪」


 熊肥は、何気に太郎達と縁のある土地だった。


 「若様、熊肥城も名城だよね♪」

 「ああ、軍配城とは兄弟城だよ♪」

 「まあまあ、縁のあるお城なのですね♪」


 太郎達が明るく語り合いながら歩く。


 城下町へ行くか山を詣でるか?


 行く先を決めかねていると、虚空から煙と共に謎の人影が現れた。


 熊の頭を髪に飾り、白い柔術着を着た元気そうな長い茶髪の美少女だ。


 耳も人の耳ではなく熊の耳だ。


 「えっと、どちら神格のお姫様でしょうか?」


 相手の美少女の全身から、炎のような気が立ち上がるのが見えた太郎が尋ねる。


 「初めまして、私は熊の神の娘ヒノコ♪ 高鉾山のヒノコ姫です♪」

 「軍配太郎です、こちらは山吹姫と楓姉さんでチーム軍配党をしてます」

 「うん、知ってる♪ 山ちゃんは友達だから♪」

 「ヒノコちゃんはお久しぶりですの♪」

 「なんだ、知り合いか♪」


 安堵する楓。


 ヒノコが太郎を見つめる。


 「ヒノコ様、俺が何か?」

 「いえ、あなたの神気を感じ取りましてやはり日輪の子だなと」

 「えっと、恐れ多いですが日の女神様の血を引かせてております」

 「そう、かしこまらずに♪ 我らの先祖は姉妹神なのですから♪」


 微笑むヒノコに、太郎は男前だなあと感じた。


 「そうだ、俺達に何か御用でしょうか? この地に何か、異界獣や悪の魔の手が?」


 太郎がはっと気を取り直してヒノコに尋ねる、神の関係者が現れたなら事件の予兆だ。


 「やっぱり、神様とお相撲かな?」

 「ですの、神々の問題は大抵はお相撲で解決ですの♪」


 楓と山吹姫が用向きを考える、相撲と聞いて太郎の目に火が灯る。


 「よっし、精一杯相撲を取らせていただきます!」


 そうと決まれば全力だと、太郎が気合を入れる。


 「え? 子犬のような空気から、武者へと気構えが変わった?」


 ヒノコが驚く。


 「ヒノコさん、現場へ案内して下さい! 来い、ニチリンオー!」

 「太郎様、お供いたしますの!」

 「若様がやる気出したなら、私達も頑張らないとね♪」

 「わかりました、山頂へ!」


 太郎が事情も聞かずヒノコを急かす。


 太郎の気迫に気圧されたヒノコが案内し、ニチリンオー達が山頂に着くと火山が噴火したっ!


 「おおっ! お出でなさったな、天下成敗ニチリンオー見参!」


 ニチリンオーが見得を切る。


 火口から現れたのは燃え盛る溶岩の巨人、ニチリンオーを見て吠える。


 「姫、あれが火山の神様?」

 「恐らくは、私もお会いしたのは初めてですの!」

 「姫と楓姉さんは、被害がいかないように警戒をお願い!」


 太郎が通信でコガネマルとヒスイマルに連絡する。


 巨人がニチリンオーに向き合うと四股を踏んだ。


 ニチリンオーも四股を踏む。


 「こちらが呼んでないのに、火山の神が出て来た?」


 ヒノコがまた驚く。


 確かにニチリンオーに、主君である火山の神との相撲を頼もうと思っていた。


 だが、眷属神の娘である自分が儀式をしなくても顕現するとは思いもしなかった。


 ニチリンオーと火山の神がぶつかり合う!


 「いけない、結界っ!」


 ヒノコが山頂の周囲にドーム状の結界を展開する。


 結界で覆われたと同時に、ニチリンオーと火山の神が激突。


 「若様、残った! 残った!」

 「太郎様、頑張って下さいませ!」


 楓と山吹姫は応援に回る。


 火山の神の燃える張り手が唸るが、ニチリンオーも燃える張り手で迎え撃つ。


 太陽の炎と火山の炎、どちらも同じ属性なのでガンガンぶつかり合う。


 「こっちも相手も炎は効かない、気合いとパワーで行くぜニチリンオー!」


 善悪関係なく、自分達の力をぶつけられる。


 太郎は火山の神との勝負を楽しんでいた。


 民や仲間など大事なものを守る為の邪悪との戦いとは違う。


 立場など何の気負いもなく、身軽な気持ちで向かって行ける。


 純粋な力比べって楽しい。


 太郎は楽しさに満たされ、感謝の気持ちでいっぱいとなった。


 「真っ向勝負だ、うおおおっ!」


 ニチリンオーと身も心も一体となり、太郎は相手と組み合い押し合う。


 やがて、火山の神の足が浮き上がり持ち上げられる。


 「おりゃ~~~っ!」


 ニチリンオーが高々と火山の神を持ち上げ、大地へと投げ落とす!


 投げ落とされた火山の神は、山の中へと吸い込まれて行った。


 「勝者、ニチリンオー!」


 ヒノコがニチリンオーの勝利を告げる。


 勝った方のニチリンオーも、太郎の気力が尽きたのか神蔵へと消える。


 ニチリンオーが消え、空中に放り出された太郎をコガネマルがジャンプして中に回収。


 「太郎様、お疲れ様ですの♪」


 コガネマルのコックピットの中で、山吹姫が嬉しそうな顔で眠る太郎を膝枕した。


 幽世屋敷の自室で目を産した太郎。


 「痛たた、やばい筋肉痛か? 関節も痛むな」

 「太郎様~♪ お手当いたしますの~♪」

 「いや、姫? その大量のお灸はちょっと待って!」

 「無茶をするなと言ったのに、無茶をしたお仕置きですの♪」


 山盛りのお灸を用意して現れた山吹姫に戦慄する太郎。


 だが、動けない体では成す術がない。


 「若様、諦めてお灸をすえてもらいなよ」

 「いや、俺は悪くない! 全力で頑張っただけだって!」


 山吹姫に続いて現れた楓に訴える太郎。


 「反省の色がありませんの、これはきっちりと全身矯正も必要ですの♪」


 山吹姫が微笑みながら怒る。


 「さ~若様、あきらめてお灸を盛ろうね~♪」


 楓が太郎の布団をはぎ取り、山吹姫が浴衣を脱がせてひっくり返す。


 「徹底的に、きついお灸をすえますの♪」

 「ぎゃ~っ! 神の加護が効かないんですけどこれっ!」

 「太郎様とお相撲を取られた火山の神様からいただいたお灸ですの♪」


 山吹姫に背中全体にお灸を盛られて着火される。


 神様が治療に使うお灸なので、神々の守りの効果を受け付けない。


 「熱! いや、ちょっとマジでごめんなさい!」

 「許しませんの、徹底的にお仕置きですの!」

 「ぎゃ~~~っ!」

 「若様、ニチリンオーも修理中だから諦めてね」


 逃れられない身で、灼熱のお灸地獄をまずは味わった太郎。


 「ううっ、熱かったけど痛みは治まったか?」


 お灸が終わった太郎、体の痛みは消えた。


 「まだですの、次は揉み解しと矯正ですの!」

 「え? それって、必要なの?」

 「必要ですの、今までのお体の不具合を一気にお手当ですの!」


 山吹姫は太郎を逃さない、寝かせたままの太郎の腰を力強く押す。


 「うおおっ! ちょ、ごめんなさい!」

 「駄目ですの♪ この指圧は、愛する夫への妻心ですの♪」


 生身では太郎遥かに凌ぐパワーの山吹姫。


 念入りに太郎の全身のツボ押しと筋肉の揉み解しを行っていく。


 「それじゃあ私はご飯お支度をして来るね」


 楓はその場から逃げ出した。


 「げえっ! ちょ、見捨てないで楓姉さん!」

 「楓様も私も、太郎様を見捨てなどしませんの!」


 太郎からすれば、己の身をゴキゴキと解体する関節技でしかない姫の手技。


 手足を曲げられ、首を左右に捻られてと強制的にストレッチをされて矯正される。


 山吹姫による必殺の整体術で、太郎の体の関節が唸りを上げた。


 間接を極める刑罰とも言える地獄の整体術の施術が終わると、太郎は再びダウンした。


 次に意識が戻ると、太郎の体はすっきりと起き上がれた。


 「ああ、無茶苦茶痛かったがすっかりと回復したぜ♪」


 布団から起き上がり、前世でやったラジオ体操で動きを試す太郎。


 太郎の脳内で、BGMが鳴りると同時に襖が引き山吹姫が現れた。


 「太郎様~? まだ起き上がっての無茶は、してはいけませんの~っ!」


 お粥入りの鍋を両手に持ち、全身から暗黒のオーラを放つ山吹姫。


 ひきつった笑みと、瞳に宿る狂気の光は狼の物であった。


 「は、はいっ! 横になりますっ!」


 太郎は大人しく布団に横になった。


 「それでは、お粥でお食事ですの♪」

 「あ、あの~? 俺、起きて自分で食べられるんですけど?」

 「駄目ですの、暫くは私が徹底的に管理してお世話いたしますの♪」

 「姫の施術で治ったんじゃ?」

 「一時的ですの、太郎様には、徹底的なメンテナンスが必要ですの♪」

 「時間とかはどうなんだろう?」

 「幽世の中なら、時の流れなど問題なしですの♪」

 「皆で熊肥の城下町に行くのは?」


 姫が許可してくれそうなことを太郎が尋ねる。


 「城下町は逃げませんの♪ お屋敷で一ほど休養されても、外では一時も経ちませんの♪」

 「神の幽世って凄いな、改めて思ったが」

 「太郎様には、まずは心身の回復に専念していただきますの♪」


 姫からのジャッジはアウト、太郎には回復専念が命じられた。


 姫からお粥を食べさせられる太郎、食事を終えた所で楓が部屋にやって来た。


 「姫~? ヒノコさんと、浴衣着た熊のお客さんだよ~?」

 「わかりましたの、太郎様を連れてまいりますの」

 「えっと、熊の神様かな?」

 「ですの、ご一緒に参りますの♪」


 白い浴衣姿の太郎は、山吹姫と共に部屋を出る。


 「どうも、先日は我が主君や娘がお世話になりました♪」

 「お世話になりました」

 

 ヒノコと共に玄関に聞現れたのは、黄色い浴衣を着た茶色い熊の神。


 明るく丁寧な物腰で挨拶して来る。


 「初めまして、太郎です熊神様」

 「おじ様はお久しぶりですの♪」

 「姫、若様、熊神様からお土産をいただいたよ♪」


 挨拶を返す太郎と姫に、楓が寿司屋が使うような蓋をした桶を見せる。


 「何やら味噌の香りが、美味しそうですの♪」

 「本当だ、ありがとうございます♪」


 太郎と姫が熊神達に礼を言う。


 「熊肉の味噌漬けです、お召し上がり下さい♪」

 「いや、熊の神様から熊肉いただいちゃったよ!」

 「はっはっは♪ お気になさらず、食べて熊の力を取り込んで下さい♪」

 「我等は獣の神ですが,獣自体ではありませぬから♪」


 神からの土産に驚く太郎と、あっけらかんと笑う熊の神。


 「ですの、それではおじ様達も皆で熊鍋をいただきますの♪」


 家主である、山吹姫が決める。


 太郎は、熊の神の親子と一緒に熊鍋を囲むと言う奇妙な体験を味わった。

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