第二十三話:若様、イットウオーと出会う
「ふう、やっとこさ体の痛みが治まったよ」
「もう、まだ病み上がりなのですから無茶はいけませんからね?」
「そうだよ、若様は私達にも天下にも大事な身なんだから」
「はい、自覚します」
幽世屋敷の居間で、大家であり婚約者の山吹姫からお小言を貰う太郎。
「とは言っても、相手が楽をさせてくれるわけではなしだよね?」
「ですから、私達で支えて行くのですよ楓様」
「そうだね、でも味方も必要かなあ?」
「ですわね、後二名ロボを使う者がいれば五体合体が可能ですのに」
「うん、人材探しもしないとな」
基地である幽世屋敷の居間で話し合う太郎達。
太郎が回復したのですき焼き鍋を三人で食べつつの会議だ。
「そういえば、牛肉が美味すぎるんだけどどうしたの?」
太郎が肉の美味さを喜びながら尋ねる。
「ああ、牛神のおじさまからいただきましたの♪」
「いや、牛の神様として良いの?」
山吹姫の言葉に驚く太郎。
「私も驚いたよ、力士みたいな浴衣着た黒い牛さんが大盤振る舞いだもん」
楓も驚きを伝える。
「牛を粗末にしてるわけではないから、良しだそうですの♪」
「牛乳も貰ったよね♪」
「そうなんだ、まあありがたいけれど」
「太郎様には沢山食べて元気になって、また相撲を取ろうとの事です♪」
「何だろう、気に入ってもらえたなら良いかな♪」
「ロボットも貰えたし、若様の事を気に入ってもらえたんだよ♪」
楽しく食卓を囲みながら語る三人。
「肉や牛乳は、コガネマル達にもあげたの?」
太郎が姫に尋ねる。
「勿論ですの♪ 喜んで食べてましたわ♪」
「家のヒスイマルにもありがとう姫、ロボも家族だしね♪」
「うん、それなら良かった♪」
ロボも神も太郎にとっては家族のようなもの、分け合えるものは分かち合いたかった。
「それじゃあ、支度してからまた旅を続けようか?」
「そうだね、宇八島からだっけ?」
「ええ、幽世屋敷は私が行った事のない場所とは出入りの道が繋がりませんので」
「姫が出歩く事で、幽世屋敷と出入りできる場所が増えるんだね♪」
太郎の提案の後に言われた山吹姫の説明に、楓が納得する。
三人は、それぞれが旅の支度をするために部屋や庵へと散開した。
服装や武装を整えて、現世に戻る三人。
宇八島の地からのスタートだ。
「さて、港に着いたが船はないな」
「ヒスイマルで飛んで行こうか?」
「それが早い手ですわね?」
「いや、待て? アカベコマルが来る?」
南国へ向かう港に着いた太郎達、船は出てしまい空の港。
太郎が思案した時、虚空に穴が開き真紅の牛型の巨大ロボットアカベコマルが出現した。
「もしかして、俺達を乗せて運んでくれるのか?」
「牛って、泳げるの?」
「おじさまのくれた機体なら可能かと?」
アカベコマルが小さく頷き身を伏せると脇腹が開き中に入れるようになる。
中に入ると、胴体部分は窓や椅子はなく装甲車みたいな造りだと太郎は感じた。
「頭の方が操縦席らしい」
「ええ、確認しました」
「私も♪」
太郎達の目に拡張現実で解説文が表示される、ドアを手で開けて頭部の操縦席に行く一行。
操縦席は、シートが三つ三角形状に配置され先端がメインパイロットのシートらしかった。
太郎がメインシートに座りシートの両脇の操縦桿を握るれば、太郎の頭の中に情報が流れ込む。
同時にモニターが起動したりと変化が起こり、虚空からデフォルメされた赤い牛が出現した。
「初めまして太郎様、皆様♪ 式神のベコです♪」
「ああ、宜しく頼むなベコ♪」
「宜しくですの♪」
「可愛い式神だね♪」
「ありがとうございます、それではナビゲートさせていただきます」
挨拶をするとベコがアカベコマルが説明を開始する。
水陸両用の機体で、コガネマルと同じく自律行動や人型への変形やニチリンオーと合体できるとの事。
「アカベコマル、コガネマル、ヒスイマルの三体合体も可能です♪」
「そうか、色々できるんだな♪」
「後程試して見ましょう♪」
「まずは、海を渡ろう♪」
「よし、じゃあ水上航行モードで行こう♪」
「了解です、では左右のレバーを押して下さい♪」
ベコにナビゲートされながら操作し、太郎がアカベコマルを動かす。
大地を駆けて機体が海へと飛び込めば、脚を折り畳むと足裏が開きスクリューが展開して海を行く。
モニターは穏やかな海を映していたが、突如アラートが鳴り刀と太陽の家紋のアイコンが表示された。
「マジか、ついに出くわしちまった」
「どういうことですの?」
「妹がごめんね、若様?」
『通信失礼いたします、お久しぶりでございます太郎様♪ 別取杏でございます♪』
杏と名乗る美少女の声が流れて来る、太郎はその声の主を知っていた。
「お久しぶりです、葵はどちらに?」
『この先のロボット同士が戦える広さの無人島でございます、誘導させていただきます♪』
太郎は通信をして来た、従姉妹の従者に語りかけると返事が来た。
杏は太郎の従姉妹である神君の娘、日ノ和葵の従者だと山吹姫に太郎が語る。
「つまり、御身内にして競争相手ですのね?」
「不出来な妹でごめんね、姫?」
「あほな従姉妹でごめん」
太郎と楓が山吹姫に謝る。
『私からもお詫び申し上げます、ですが葵様は太郎様に構っていただきたいだけなのです』
まだ通信が切れていなかったのか、杏も謝った。
『誰がアホの子だ、ワンコ太郎! 私のイットウオーと勝負だ!』
『葵様、そんな態度では太郎様に嫌われてしまいますよ?』
通信の向こうで、おっとりした声の杏とは別の凛とした美少女の声が響く。
太郎達は溜息を吐きながら、通信を切る。
誘導されたアカベコマルが到着した無人島。
太郎達が降り立つと、二人の人物が出迎えた。
「お待ちしておりました、お久しぶりでございます♪」
「あ、太郎♪ な、何で姉上が? それとその女の子は誰だ!」
太郎達を出迎えたのは、黒髪ポニーテールの美少女と茶髪のショートボブに眼鏡の美少女。
ポニーテール少女は黒い着物に灰の袴、腰に二本差しで背には大太刀を背負った剣士風。
ショートボブ美少女は、緑の着物に白フリルが付いた和装メイド姿。
「初めまして、太郎様の許婚の山吹と申します葵様♪」
「むむ、あなたは腕の立つ人だな?」
山吹姫がポニーテールの葵に笑顔で挨拶をする。
葵の方は、山吹姫の強さを感じ取って警戒した。
「杏さん、勘弁してくれよ?」
「申し訳ございません♪」
太郎は眼鏡の美少女、公儀隠密筆頭の娘である杏にぼやく。
「とにかく、私とロボで勝負だ太郎!」
「太郎様、葵様と遊んであげて下さいませ♪」
「杏~っ!」
ぐだぐだな主従である葵達であった。
太郎は呆れ、楓と山吹姫は苦笑い。
「まあ、ここで同じ神君家のロボと技比べも良いか?」
気を取り直した太郎がニチリンオーを召喚するべく軍配を虚空から取り出す。
「やる気になったな? 来い、イットウオーッ♪」
太郎が呼ぶよりも先に、葵が背中のから大太刀を抜刀して叫ぶ。
晴れていた空に暗雲が立ち込め落雷と共に、城の天守を鎧に纏ったスーパーロボットが現れた。
ニチリンオーと似ているが、兜や肩鎧は黒く、兜の飾りは金の稲妻。
パイロットの葵と同じく、背には黒鞘に金の鍔と柄の大太刀。
スーパーロボット、イットウオーの見参であった。
「天下両断イットウオーッ!」
葵が叫び、イットウオーが名乗りを上げる。
「出たなイットウオー! こちらも来い、天下成敗ニチリンオー!」
太郎もニチリンオーを召喚して乗り込み、兄弟機体による対戦が始まった。
楓や山吹姫と葵は、二体から離れて試合を見守る事にした。
「一本流免許皆伝、ヒカリオオタチを受けて見よ!」
イットウオーが背中の大太刀を抜き、中段の構えから突っこんで来る。
「何の! ダイグンバイッ!」
ニチリンオーもダイグンバイを両手に構え迎え撃ち、両者鍔迫り合いとなった。
ニチリンオーとイットウオー、素の状態で出せるパワーは互角であった。
「やはり兄弟機なだけあって基本のパワーは互角、ならアカベコマルでブーストだ!」
コックピットの中で太郎が次の手を決める、イットウオーも何かを感じたのか飛び退いた。
「来い、アカベコマル! 合体だ!」
ニチリンオーとイットウオーが互いに距離を取った所で、太郎はアカベコマルを呼び寄せた。
海岸からジャンプで、ニチリンオーの元へやって来たアカベコマル。
ニチリンオーの上半身と下半身が分離。
召喚したアカベコマルも頭部と前半身と後半身が三つに分離。
ニチリンオーの下半身が前脚、アカベコマルの後半身が後脚の形で合体し四足の下半身に変形。
アカベコマルの前半身は左右に別れ、それぞれがニチリンオーの両腕を覆う手甲となる。
上半身と下半身が合体し、真紅の腕を持つ四足のニチリンオーが誕生した。
新たな武装、アカベコマルの頭部が変形した盾を左手に持ち完成する。
「完成、トウギュウニチリンオー!」
牛頭の盾が嘶き雄叫びを上げて合体の完成を告げる。
「今度はこちらから攻めるアカベコシールド、ノーズファイヤー!」
ブモ―と嘶き、アカベコシールドの鼻から超高熱火炎が噴出した!
「くっ、やるね太郎っ! でもこっちも負けないよ、旋回の太刀・てやっ!」
イットウオーが突進し、巨体を捻りながらトウギュウニチリンオーへと大太刀が迫る。
「今だ噛め、アカベコシールド!」
トウギュウニチリンオーが、タイミング良く盾を持つ手を突き出す。
すると、アカベコシールドが口を開いてイットウオーの大太刀を噛んで止めた!
「な、何だよその戦い方はっ?」
「お前の癖は見切ったぞ葵、太刀取り返しっ!」
パイロット同士の会話をしながら、トウギュウニチリンオーが刀を持つ腕を捻る。
刀を取られてたイットウオーは、刀を持つ手を離し横倒れに転がった。
「く、まだだイットウオー! そっちが牛ならこっちは馬だ、オシラマル!」
トウギュウニチリンオーが、返してやるとばかりにイットウオーへと大太刀を投げた。
起き上がり得物を受け取ったニチリンオーが大太刀を大上段に構える。
「イットウオー、白馬合体だっ!」
イットウオーの中で葵が叫べば、天から巨大な白馬ロボがやって来てイットウオーと合体する。
トウギュウニチリンオーは間合いを取って様子を見る。
スーパーロボットの変形や合体は隙に見えて、妨害に行けば手痛いしっぺ返しが来るからだ。
「オシライットウオー完成、行くぞ~っ! 電光爆進だっ!」
下半身が白馬ロボの四足形態になったオシライットウオーが、全身に稲妻を纏い突進して来た。
「体当たりは牛も得意だぞ、爆熱猛突進っ!」
トウギュウニチリンオーも火の玉となって、突進。
必殺技をぶつけ合った両者の対決は、イットウオー側が突き飛ばされて僚機と分離して先にダウン。
「流石は兄弟機、手強い相手だったぜ」
アカベコマルと分離するニチリンオー。
兄弟機である両者の対決は、今回はニチリンオーの辛勝と言う決着になったのであった。




