第二十二話:若様、闘牛をする
「ここが愛予か、う~ん♪ 蜜柑を育てている所が多いな」
晴れた空の下、蜜柑そ育てている農家が多く見受けられれる街道をゆく太郎。
「蜜柑は特産品だからね♪」
太郎の右側で楓が語る。
「私も蜜柑は好きですわ♪」
左からは山吹姫が答える。
佐知の国でハニワ教団を倒した一行、残党も粗方退治したので旅の歩みを進めていた。
「しかし、あのヤマコは手強かったな」
「ええ、恐るべき邪気でしたの」
「そうだね、こういう時は心身を清めるとかしない?」
道中の茶店で席に着いた時、楓が提案する。
「そうだね、どこかのお社で滝行でもするの?」
「確かに、身も心も引き締まりそうですわね」
「うん、滝も良いけど松後って温泉街があるんだよ♪」
太郎緒と山吹姫の言葉に、いやいやと自分の顔の前で左右に手を振り楓が呟く。
「ああ、松後の湯の方か♪」
地名を聞き、太郎が手をポンと鳴らして納得した。
「そういえば、この地は温泉がありましたわね♪」
山吹姫も思い出したように微笑む。
「いや、入れるかどうかはわからないよ?」
一応、楓に釘をさす太郎。
「まあ、太郎様の事ですから割と何とかなるかもですの♪」
「そうそう、若様なら行った先で何か起こるよ♪」
「いや、トラブルメーカーみたいに言うなよ?」
和気藹々と一休みを終えて、店に代金を支払い再び旅路を行く一行。
定期的に楓が式神を飛ばし、山吹姫が臭いで索敵をするも事件なく松後の街に着いた。
「温泉街だけあって、浴衣姿の人が多いな」
「若様、歌舞伎座みたいなお宿があるよ!」
「にぎやかですの♪」
通行の邪魔にならぬ場所から街を見回す太郎達。
楓が式神を飛ばして見つけた、趣のある木製の和風な定食屋に皆で入る。
「今の所、ここにはロボで解決できる事件はなさそうだね」
皆で鯛飯を食べつつ、楓がざっくりと式神で調べた結果を呟く。
「流石に、温泉地で大暴れするようなべらぼうな奴はいないか」
太郎もその言葉に安心する。
「では、次は何処へ参りましょうか?」
山吹姫が尋ねる。
「うん、ここは宇八島へ行きそのまま南国へ行くつもりだ」
太郎が小さい地図を懐から取り出して仲間達に見せる。
「え~? 温泉は入らないの~?」
楓が残念そうに言う。
「じゃあ、銭湯みたいに入浴だけできる所でだよ?」
「まあまあ、太郎さまも偶にはのんびり湯に浸かるのも大事ですわ♪」
「そうそう、体も心も温めて行こう♪」
太郎は仲間達の温和な言葉と圧に負けて、温泉に浸かる事を同意した。
定食屋を出て、街外れの入浴だけも可能と言う宿に行く一行。
和風の古めかしい宿に金を払い、男女で別れて温泉を楽しんだのであった。
松後で温泉を楽しんだ太郎達は、船に乗り南国と四島の中継地点の宇八島に降り立つ。
「気持ちいい風ですの♪」
「ここは穏やかな感じだな♪」
「この島は、牛同士が戦う闘牛が名物なんだって♪」
船を降りて港で語りながら歩く太郎達。
「この島は、牛の神様がおわす地ですの♪」
「もしかして、姫のお知り合いですか?」
「ええ、父の相撲友達ですの♪」
「そう言う事なら、ご挨拶に行くか」
「丁度、牛の神様に奉納する闘牛祭りが開かれるって♪」
「これも何かのお導きかな? 行って見よう♪」
太郎達は、牛の神に詣でるべく島の中心にある宇八島神社を目指す事にした。
空は晴れ、穏やかな島の景色を楽しみながら歩く太郎達。
やがて一行は、大きな赤い鳥居が目立つ門前町に辿り着いた。
「祭りがあるからか、賑わってるな♪」
行き交う旅人達、土産を売るべく声かけに励む商人達。
「はぐれぬよう、気を付けて参りましょう♪」
「スリや事件にもね♪」
人が多い場所では揉め事も起こりやすい。
度世人姿や武者姿で目立つ太郎達は、騒ぎを起こさぬように警戒しつつ進む。
「何か、人が俺達を避けて行くな?」
「姫が剣気を発しながら歩いているからね」
「不埒者は許しませんわ♪」
「頼もしいよ」
姫の剣気を恐れてか、太郎達は無事に神社へと辿り着いた。
「うん、立派な土俵だなロボ相撲用かな?」
「神世のお宿を思い出しましたの」
「愛予の殿様、ロボ相撲好きみたいだね」
神社の敷地内には、巨大ロボットが動けるほどの巨大な土俵が設置されていた。
太郎達が社務所へ挨拶に向かうと、巫女さんが本殿に案内してくれたのでついて行く。
「ようこそ宇八島へ、当社の宮司を務める牛守文吾と申します」
「宜しくお願いいたします、縁あって立ち寄らせていただきました」
太郎達は板張りの本殿の中で正座して牛守さんと向き合い、挨拶を交わす。
牛守さんは、白着物に紫の袴の神官装束。
筋肉質で真面目そうな顔つきの男性で、太郎はプロレスラーかと見間違えた。
「存じております、牛神様から託宣がございましたので」
「かたじけないです、ところで牛神様は何かお困りなのでしょうか?」
「いえ、祭りを盛り上げるために自分とニチリンオーを勝負させよと」
牛守さんの言葉に太郎がずっこける。
「牛神のおじさまらしいですの♪」
「若様、神様と仲良くするのも神君候補の務めだよ♪」
「ああ、神様に機嫌よくご利益を皆に授けてもらうには頑張るしかないか」
「ありがとうございます、何卒よろしくお願いいたします♪」
「ええ、お任せ下さい♪」
太郎はニチリンオーで、牛神とひと勝負をする事となった。
「私達はどうしようか?」
「そうですわね、団体戦なら出るべきなのですが?」
太郎の後ろで、楓と山吹姫が顔を見合わせ話し合う。
「取り敢えず、向こうのご指名だし俺単独で挑むよ」
「ですわね、おじさまの顔を立てませんと」
「若様、勝ってご利益大盤振る舞いしてもらって♪」
「それでは太郎様、早速ご用意をお願いいたします」
「え? これからですか?」
てっきり、明日位にやるかと思っていた太郎。
「牛のおじさま、気が早い方ですから♪」
山吹姫が渇いた笑みをこぼす。
「若様、がんばってね♪」
楓は気楽に太郎を応援した。
「お、おう! 驚きだけど頑張る!」
本殿を出て、牛守さんに案内されて土俵へ向かう太郎達。
「では、私が行事を務めさせていただきます」
「私達は見守らせていただきますわ♪」
「頑張って、若様♪」
「ああ、来てくれニチリンオーッ!」
太郎が軍配を天に突き上げ、ニチリンオーを召喚して搭乗。
「東~♪ ニチリンオーッ♪」
行事の呼び出しに従い、土俵入り。
「西~♪ 牛神大神~っ♪」
行事が呼び出せば、天から豪華な化粧廻しを締めた巨大な黒毛和牛人間が降臨した。
「お主がニチリンオーと軍配太郎か、臼との相撲は見ておったぞ♪」
「恐れ入ります」
「さあ、一丁楽しく勝負じゃ♪」
豪快に明るく笑う牛神、両者み合って四股を踏み手を着き備える。
「はっけよ~~い! 残ったっ!」
行事の合図から取り組み開始。
まずは、互いに真っ向勝負でぶつかり合う!
響く衝撃音、ニチリンオーは背中のブースター全開で耐えて両者退かず!
「ぶも~っ!」
「負けるか~っ!」
互いに張り手を突き出しクロスカウンター!
コックピット内部の太郎にも、衝撃が襲ってくるが必死に踏ん張る。
もう一丁と、互いに再度クロスカウンター状態で張り手を喰らわし合う。
太郎的には退くのは失礼、真っ向で行くとバチバチにぶつかり合う。
牛神が再度ぶちかましに来たので、ニチリンオーも突進っ!
あくまでも真っ向勝負だと、両者共に前に出る。
牛神のかち上げを受けるも、ニチリンオーは耐えて組み付きに行く。
牛神もニチリンオーの腰を掴みに行き踏ん張る。
「ニチリンオー、無茶させるけどごめん!」
組合から、ブースターを全開で深しパワーを全開でニチリンオーを操る太郎。
押し合いに勝ち、牛神を崩すと上手投げを決めた!
牛神を投げ倒したと同時に、機体の手足の関節部がスパークし前に倒れるニチリンオー。
「勝者、ニチリンオーッ!」
行事の判定はニチリンオーに上がった。
「勝ったけど、大丈夫なのっ!」
「た、太郎様~っ!」
ニチリンオーは消えて太郎が残る。
敗れた牛神は気持ち良さそうに鳴き声を上げて、空を飛び天へと帰って行った。
「な、何とか頑張りを認めてくれたみたい♪」
土俵から降りて呟くと倒れ込む太郎、受け止める山吹姫。
「もう、頑張り過ぎですの♪」
「若様、お疲れ様♪」
「うん、休ませて」
山吹姫の腕の中で気を失う太郎は、そのまま米俵のように姫に担がれた。
「太郎様、牛神様を鎮めていただきありがとうございました」
牛守さんが礼を言い、社から去る太郎達を見送る。
「幽世屋敷に戻りましょう、楓様もお出で下さいませ♪」
「うん、お手伝いするよ♪」
太郎を担いだ山吹姫、楓は彼女について行き虚空に消えた。
幽世と言う、神や強力な妖怪や術者が持てる主により景色が異なる異空間。
常に晴れやかな空と、周囲を山に囲まれた和風の世界に立つ武家屋敷。
隣には和風の小さな庵。
武家屋敷内部の広めの和室では、白い布団に寝かされていた太郎が目を覚ます。
「痛てて! ああ、ここは幽世屋敷か? 姫が連れて帰って来てくれたんだな」
体の節々の痛みで意識を目覚めさせつつ、何とか起き上がる太郎。
水色の寝間着姿で、体の各所に湿布が貼られて包帯が巻かれているのが見えた。
太郎が起きたのと同時に、部屋の中にカランカランと鈴の音が鳴り障子戸が開く。
「太郎様、お目覚めになりましたのね♪」
ピンク色の着物姿の山吹姫が現れて、太郎にだ駆け寄り抱きしめる。
「えっと、ありがとうございます」
「無理に起きてはなりません、おじさまや皆の為に頑張った太郎様にお説教はいたしません」
震える声で語る山吹姫。
「ですが、頑張り過ぎないで下さいませ!」
「ごめんなさい」
「暫くは養生すること、旅は一休みです! ニチリンオーも修理中です!」
「私がおはようからお休みまで常に付き添いますからね?」
「縁側とかに出る位は良いですよね?」
「鍛錬などは駄目ですよ?」
山吹姫に詰められる太郎、庭の方から牛の鳴き声がした。
「え? 何か牛の声がしたんですけど?」
「む~っ! 仕方ありませんので、私に体をお預けくださいませ」
「はい」
山吹姫に寄り添い一緒に縁側へ向かうと、太郎を見て嬉しそうに鳴く赤い牛型ロボがいた。
「へっ? 何で牛のロボットが?」
青い瞳に金の角と蹄の巨大な牛型ロボと太郎の目が合った。
「これは、牛神のおじさまから太郎様への褒美だそうです名はアカベコマルと♪」
山吹姫が微笑みながらアカベコマルについて語る。
「マジですか? 何と言うか、とんでもない物を貰ってしまったな」
新たな仲間、アカベコマルを見てたじろぐ太郎であった。




