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天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記  作者: ムネミツ
第三章 西国南下編
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第十七話:若様、餅を搗き兎を助ける

 「太郎様♪ 参りますわよ、はい♪」

 「任せろ、ほい♪」

 「お米は私が蒸すよ~♪」

 

 年も明け、ロボ相撲で米などをもらった太郎達は幽世屋敷の庭で餅つきをしていた。


 皆、浴衣や着流しと軽い着物の上から白の割烹着に頭巾をして作業をする。


 山吹姫が杵で搗き太郎が合の手でこねる、楓はもち米を蒸す係。


 搗いた後は式神達が、保存用や贈答用にするべく伸し餅への加工や梱包を行う。


 「お世話になった方々に、はい♪」

 「神様へのお供えに、ほい♪」

 「新たな年のお祝いに♪ お餅をついて寿ぎを♪」


 笑顔で元気に楽しく、笑う門には福来るで陽の気を込めて餅を搗きこねる太郎達。


 「ふう、これでお供えや配る分の餅もできたな♪」

 「太郎様の手ごね餅、皆喜びますわ♪」

 「そう言えば、何で若様は搗かなかったの?」

 「籠手の神様がこねたがっていたからな」


 楓の問いに太郎が、手に金色の籠手の神であるタヂカラゴテを顕現させる。


 「餅を入れて、力蕎麦を作りましょう♪」

 「うどんも作ろう♪」


 山吹姫と楓が、自分達の分の餅で献立を考える。


 「コガネマルやヒスイマルにも食べさせてあげよう♪」


 太郎が鎮座する、コガネマルやヒスイマルにも餅を与えると決める。


 「流石、若様♪」

 「ええ、我が夫として誇らしいですわ♪」

 「いや、ロボも家族だから」


 そう言って、太郎は二つの膳に切り餅を載せコガネマルとヒスイマルの前へと差し出す。


 「コガネマル、ヒスイマル、お食べ♪」


 太郎が告げると、膳に載せられていた餅が光の粒となって鳥型ロボのヒスイマルと狼型ロボのコガネマルへと吸い込まれた。


 餅を与えられたヒスイマルは上機嫌で鳴きながら空へと舞い上がる。


 コガネマルは身を伏せて嬉しそうに鳴いて、太郎へとゆっくり頭を摺り寄せて来た。


 「そうかそうか、喜んでくれて俺も嬉しいぞ♪」


 太郎がコガネマルの頭を撫でると、コガネマルが尾をブンブン振る。


 「私、若様との付き合いは最近だけど良い子だね♪」

 「ええ、妙な所で悩まれたりされますが素晴らしいお人柄です♪」

 「放っておけないよな、私は若様に神君になって欲しいな♪」

 「私はどのような道であれ太郎様について行く所存ですが、お支えし甲斐がありますわ♪」

 

 ヒスイマルも降りて来て太郎にすり寄る、そんな太郎と楓と山吹姫は笑顔で眺めた。


 「そうだ、ニチリンオーにもお供えしよう♪」


 太郎がニチリンオーを召喚する。


 「いつもありがとう、ニチリンオー♪」


 ニチリンオーの分も膳を用意して、餅を載せて差し出せば餅は光となってニチリンオーへ吸い込まれた。


 餅を供えた後のニチリンオーから、後光のような物が太郎には見えた気がした。


 「やっぱり、大切にしてくれる感じが良いねえ♪」

 「ちなみに、他の方々の評判はどのような物ですの?」


 太郎が避けているからか、他の候補者の事はよく知らない山吹姫が楓に尋ねる。


 「そうだねえ、まずは天網で我が異母妹の葵のイットウオーの評判はと?」

 「ふむふむ、天網で見られるのですね?」


 楓がどこからかタブレットPCを取り出してネット検索をする、山吹姫は楓と視覚をリンクして見る。


 ヒノワの属するギガンシア世界、天網と言う地球のインターネットに相当するものが存在する。


 ヒノワでは天網は大都市など地域限定で、大商人や大名と限られた富裕層がアクセスし利用していた。


 いかなる理由か、神々も機械や天網にアクセスできる。


 のだが、山吹姫は太郎と旅に出るまでは一応機械の知識は習いはすれども利用するという考えがなかった。


 領地に機械の類がなかったのと、なくても式神など魔法で代用して暮らせたからだ。


 二人が見たのは天網の瓦版、いわゆるネットニュースだ。


 記事によると、葵姫、ロボで悪党商人を街ごと両断! など豪快過ぎる内容の武勇伝が見られた。


 「あの子ったら、相変わらず加減を知らない剣術馬鹿なんだから!」

 「葵様、これは一度お手合わせしてみたいですわ♪」

 「うん、何か二人は剣術談議で盛り上がりそうだね」


 異母妹の行動に頭を痛める楓と、興味を持つ山吹姫。


 他の候補者達も、大体似たように周囲の被害は度外視で豪快に怪物や悪党を退治したという物が多かった。


 自分達のニチリンオーの評判を見る楓と山吹姫。


 彗星切りは見事だった。


 愛護家城での立ち回りは格好良かった。


 清宮を治めて欲しい。


 と、良い評価であった。


 「家の若様は、民からの人気は一位だね♪」

 「当然ですわ♪ 悪を討つだけでなく民も助ける名君の片鱗を民は見ているのです♪」

 「期待されてるなら、頑張らないとね私達も♪」


 楓と山吹姫は、コガネマル達にじゃれつかれている太郎を盛り立てようと思った。


 正月を楽しんだ三人は、幽世屋敷を出て再び西国の旅を再開する。


 「このまま西国を進むのも良いけれど、一度四島へと渡って見ない?」

 「また食道楽ですか、楓姉さん?」

 「それもあるけど、本島から離れた島が悪党の隠れ家になっているかもでしょ?」

 「確かに、海賊退治で身に覚えがありますわ」

 「そうですね、助けがいる人がいるかもですし渡りますか」

 「流石、若様♪」

 「では、八雲の地にある浜辺へと向かいましょうか♪」


 新たな行き先を決めた一行、浜辺へと向かい足を進めると太郎の刀がコダイオーブレードに変化する。


 「コダイオーブレードが出た、異界の敵が出たのか?」

 「太郎様、空を!」

 「あれは異界の穴だね、異界獣(いかいじゅう)が出るよ!」


 異界獣(いかいじゅう)その名の通り、太郎達の世界に穴を開けて空から来る怪物。


 世界に満ちる魔力で動物が変質した怪獣や魔物と違う、外来の敵対者。


 海辺の空に暗雲が立ち込め、暗雲から黒い穴が開き中から降って来たのは巨大な青い鮫の怪物!


 『この地は荒らさせません!』


 異界獣の出現と同時に、戦いに備えた太郎達の頭の中に美しい女性の声が響く。


 有無の上の虚空が光輝き、巨大な白兎が現れ海面を蹴ってジャンプし鮫の怪獣に跳び蹴りを行った!


 「あ、あれは兎神様ですわ!」

 「今年の干支の神様だよ!」

 「新年早々働き者の神様だな、加勢するぞ皆!」


 太郎達が機体を召喚して乗り込み、トライニチリンオーへと合体して兎神を助けに向かう!


 兎神は海上を跳ね回り、蹴りで鮫の異界獣を攻撃するが敵も負けじと背や尾のヒレで反撃する。


 鮫の異界獣はヒレをチェーンソーの如く回転させて飛び跳ね、兎神を切り裂き尾を振り打って投げ飛ばした!


 「危ない!」


 飛んで来たトライニチリンオーが、兎神を空中で受け止めると兎神は光の粒子となってニチリンオーへ吸い込まれた。


 「おっと、良かった♪」

 「お見事ですわ♪」

 「流石は若様、間に合う男♪」


 太郎の膝の上に小さい白兎となった兎神がのっかる。


 「ありがとうございます、日輪の子よ」

 「どういたしまして、後は我らにお任せを♪」


 女性の声で礼を言う兎神。


 「まずは一発、台場キャノンですわ!」


 山吹姫が操作してニチリンオーの腹部から、火球が発射される!


 「ギャオオオ~ン!」


 台場キャノンの火の玉が直撃して鳴き声を上げる鮫の異界獣、だがまだ敵は倒れない!


 反撃だとばかりに空を飛んでいるニチリンオーに口から放水攻撃を仕掛けてきた。


 「回避は任せて♪」


 楓がレバーを操作して難なく回避。


 「よし、新武器のキジブラスターだ!」


 太郎がレバー操作をすれば、ニチリンオーの背中に付いているヒスイマルの頭が射出されニチリンオーの左手に装着。


 ヒスイマルの口が開くと、口から金色の光線が発射されて敵のヒレに穴を開けた!


 痛みに悶える異界獣は、ニチリンオーに背を向けて逃げ出そうとする。


 「逃がしはしない、コダイオーブレード!」


 太郎が操作しスタンドファイトモードが起動すれば、楓と山吹姫が太郎の両脇に控える形に彼女達のシートも変形する。


 「異界の獣よ、ニチリンオーの刃を受けて見よ! 金環日食崩しきんかんにっしょくくずしっ!」


 太郎がコックピット内でグルリと両手に持った蕨手刀を回せば、ニチリンオーもコダイオーブレードを回し金色の光の円を描く!


 描かれた金環がコダイオーブレードが振り下ろされると同時に飛んで行き、サメの異界獣を輪切りにして仕留めた。


 「異界獣の消滅を確認しましたわ♪」

 「センサー、目視共に敵の死亡確認♪ 斬られたと同時に焼き尽くされたみたいだね♪」


 太郎が技を出し終えてコックピットのシートが元に戻ると同時に、楓と山吹姫が敵の消滅を確認する。


 「では、これにて一件落着♪」


 太郎が宣言する事で戦いは終わった。


 戦いが終われば、次は兎神の手当てだと機体を降りて一行は幽世屋敷へと帰還する。


 「兎神様は、女神様のようなので姫と楓姉さんにお任せいたします」

 「心得ましたわ♪」

 「任せて♪」

 「うう、ありがとうございます天狗の姫に山神の姫♪」


 太郎が白兎になった兎神を姫達に渡すと、二人は治療の為に屋敷の中へ入って行く。


 そして、屋敷の中で兎神を湯の張った桶に入れて傷を洗い傷薬を塗って包帯を巻いた。


 「後は、神代のお米で搗いたお餅やお野菜などを召し上がて養生くださいませ♪」

 「そうそう、英気を養ってもらわないとね♪」


 手当てを終えた兎神を太郎がいる居間へと連れて行く楓、山吹姫はごちそう作りだ。


 「ああ、手当は済んだのか良かった♪ 大丈夫ですか兎神様?」


 太郎が兎神の様子を案じる。


 「ありがとうございます、食事をいただければ回復いたします♪」


 礼を言う兎神。


 「兎神様、お食事をお持ちいたしましたわ♪」


 山吹姫が食事の乗ったお膳を持て現れる、差し出されたお膳の雑煮を前足で器用に箸を使い食う兎神。


 物凄い速さで食べ終えた兎神は、瞬時にピンク色の単衣を着た長い黒髪姫カットに白兎の耳を生やした金の目に白い肌の太郎から見ると平安貴族風の美女の姿に変わった。


 「ふう、ごちそうさまでした♪ 皆さま、此度はお力添えありがとうございました♪」


 改めて礼を言う兎神。


 「恐れ入ります、スーパーロボット乗りとしての義務を果たしただけですので」


 相手の方が格上の神なので、きちんと正座して礼をする太郎。


 太郎に続いて山吹姫と楓も同じく兎神に平伏す。


 「面を上げて下さい、こちらは恩を受けた身です♪」


 兎神がそう言うと太郎達は頭を上げた。


 「皆様にはひとまずのお礼に私の加護を、後程増物を届けさせます故にお楽しみにお待ち下さいませ♪」


 兎神が虚空から取り出した扇子を開いて振ると光の粒子が太郎達に降りそそぐ。


 「ありがとうございます、兎神様♪」

 「いえいえ、皆様の旅路に幸運を♪」


 太郎が代表して礼を言うと、兎神は天へと昇って消えて行った。


 「何だか、良い事がありそうな気がしますわ♪」

 「うん、今年も頑張れそう♪」

 「ああ、じゃあ屋敷を出て改めて四島へ行こう♪」


 太郎達は屋敷を出て、改めて浜辺に降り立つ。


 「あ、若様♪ 大きな橋が架かっているよ♪」

 「いや、さっきまでなかったぞ?」

 「太郎様、立札がありますわ!」


 突如現れた巨大な朱塗りの橋に近づく太郎達、立て札には兎神が一時的に立てた物だと書かれていた。


 「よし、神様を信じてこの橋を渡ろう♪」

 「ええ、いざとなれば私の犬かきでお助けいたします♪」

 「私も飛べるし大丈夫、いざ行かん♪」


 太郎達は橋を渡り、西国地域の四島へと歩き出した。

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