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天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記  作者: ムネミツ
第三章 西国南下編
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第十四話:若様、天狗と出会う

 「よくぞこの地を守った、大儀である♪」

 「げげ、上様っ!」

 「いきなり登場なされましたわ!」


 愛護家の地、城での立ち回りの後の夕暮れ時。


 関所近くの通りでニチリンオーから降りた太郎達の前に、突如現れた神君家長。


 太郎達はお約束として跪いた。


 「二人とも、面を上げい♪」

 「ははっ!」


 顔を上げて立ち上がる太郎達。


 「堅苦しい挨拶はせんで良い、改めて良くやった♪ まずは、茶でも飲もう♪」


 家長にそう言われて、近くの茶店の座敷に移動して話をする事となった太郎達。


 「お褒めいただきありがとうございますが、ツッコみが追いつきいませぬ」

 「国家の最高権力者が、突然現れるなどフットワークが軽すぎですわ!」

 「神君ともなると瞬間移動の方法は心得がある、ナノマシンで生体強化はしておるしな♪」

 「何と言うかべらぼうな、そして何気にお店が貸し切りですわね?」

 「この店は、公儀隠密の基地でもあるからな余人の邪魔はないので安心せい♪」


 家長がういろうを食い、茶をがぶ飲みしながら豪快に笑う。


 そんな伯父であり、国のトップである人を見て呆然とする太郎。


 自分も恵まれた暮らしをして、世間から見ればべらぼうな方だが上には上がいると太郎は思った。


 だが、こう言う人が身内にいるので自分は調子に乗らずにいられるのだと太郎は安心した。


 「お咎めなどはございませんの?」


 山吹姫が太郎の代わりに、家長に疑問をぶつける。


 「何を咎める事がある? いや、良くぞ我が隠居先を守った♪」

 「いや、隠居先って?」

 「太郎よ、民からの評判はそなたの方が良いぞ?」

 「恐れ入ります、こそばゆいです」

 

 全ては、ニチリンオーや山吹姫に神々の力を借りて出来た事。


 地球の日本の平凡な庶民から転生して来た太郎としては、嬉しさよりも恐縮の方が強かった。


 「太郎よ、もしやそなたはどこぞの異世界より転生でもして来たのか?」


 家長が太郎の様子から何かを勘付いて尋ねる。


 「まあ、そんな感じです」


 正直に答える太郎。


 「ふむ、西洋の国でそのような話は聞くな。 だが太郎よ、前世は気にし過ぎるな♪」

 「そうですわ♪ 今は今、太郎様は太郎様ですわ♪」

 「姫の言う通り、前世がどうであれお前は俺の可愛い甥っ子だ♪」


 山吹姫や家長の言葉と笑顔に、太郎は少し気が楽になった。


 確かに前世は前世だ。


 死んでこっちに来た以上、地球に行けたとしても昔の自分は死んでいる。


 地球に自分の居場所はもうないし、一からあっちに構築する気もない。


 地獄へ落ちたわけでもなく、こちらで幸運にも恵まれた人生を歩めているのだ。


 この世界が今の俺の生きる場所。


 だからこそ、自分を生かしてくれる人々や世界を大切にせねばならない。


 山吹姫と家長の言葉に、太郎はそう考える事にした。


 「まあ、褒美の金子だ受け取るが良い♪」


 家長がテーブルの上にドンと一つ千両箱を置く。


 「ありがとうございますわ♪ では我が家の金庫に♪」


 山吹姫が千両箱を受け取り虚空へとしまう。


 「はっはっは、すっかり姫に財布を握られておるなあ♪」

 「まあ、姫は大家殿でもありますので♪」

 「妻として台所の管理はお任せあれですわ♪ 太郎様には、後でお小遣いをお渡しいたします♪」


 太郎は山吹姫に財布を握られた。


 「尻に敷かれておるな、ところで次は西国に行くつもりか?」


 家長が太郎達の次の行き先を尋ねる。


 「はい、西国を進み南国へと渡りまた北上する予定です」

 「ふむ? となるとそろそろ手勢も少し必要ではないか?」

 「私は二人旅でも良いのですが、太郎様の身の守りは盤石にしたいとは思います」

 「西国で、才ある人物を取り立てようかなと思ております」

 「ふむ、ならばまずは勢賀(せが)の天狗忍者の里への一筆と先方への連絡をしておこう」

 「勢賀(せが)の天狗忍者ですか? 御公儀の御庭番でもある?」

 「空を舞い、影の如く忍び寄りというあのですの?」

 「うむ、神君家の祖である太陽神の神使である彼らなら助けとなるであろう♪」

 「ありがとうございます、では勢賀(せが)から西国を回り始めようと思います♪」


 家長に礼を言う太郎達、紹介状を貰った太郎は封を開けずに中身を読み取り確認した。


 「ふむ、流石だな俺の文でも警戒を怠らぬか♪」

 「太郎様、いささか御無礼が過ぎるのでは?」

 「いや、一応警戒しないわけにはいかないよ!」

 「太郎が正しい、やはり俺の権限でそなたに譲位をしたくなった♪」

 「上様、公明正大に審査をお願いいたします!」

 「くっくっく、まあ良かろう早く隠居しての悪党退治暮らしが楽しみだわい♪」


 神君の位は罰ゲームですかと思いつつ、太郎達は茶店を出て関所を抜けて西国に至った。


 「ここが、お勢賀(せが)参りで有名な勢賀ですのね♪」

 「ええ、ここからも見えますがヒノワの三大神社が一つ勢賀神宮の鳥居です♪」

 「大きな鳥居ですわ♪ 人生で、一度は行きたいお勢賀様♪ これは是非詣でなければ♪」

 「良いですねえ、旅の安全と成功を願いましょう♪」

 「私達の更なる縁結びもですわ♪ 勢賀の墨うどんに、芋福餅も食べましょう♪」

 「ええ、詣でましょう♪ 食べましょう♪」


 意外とミーハーな山吹姫が、明るくはしゃぐ様子に太郎が微笑む。


 そんな太郎達の元へ、空からバサバサと羽音を立てて緑の翼を生やした人物が舞い降りて来た。


 「そこの若様とお姫様♪ 物見遊山よりも前に私らの方が先だろ♪」


 明るく語り掛けて来たのは白い肌に緑の髪をポニーテールに纏めた、美しい女性。


 身長は高めで鍛えられた体で豊満な胸を晒しで絞め、白い着物に緑の袴を着て帯刀。


 「初めまして軍配太郎です、身の証はこれで」

 「山吹と申します、天狗様♪」


 太郎が印籠を出し、姫が幟を出す。


 「ああ、わかってるよ♪ 父上から聞いてる、私は(かえで)♪ 天狗の姫で、あんたの従姉妹さ♪」

 「ぶっ! いや、ちょっとっ! 伯父上の娘って待ってくれ?」

 「太郎様、落ち着いて下さいまし!」


 慌てる太郎に宥める山吹姫、それを見て笑う楓。


 「ああ、ごめんな? いきなり、従姉妹だとか言われて驚くだろうけどさ間違いないんだ」


 楓が謝りつつ溜息を吐く。


 「いや、伯父上ならまあ仕方なしですね」

 「うんうん、異母妹の葵にも初めて会った時は驚かれたね」

 「それでは、従姉のお姉さまとして宜しくお願いいたしますわ♪」

 「うん、お姫様は受け入れてくれてありがとう♪」

 「まあ、お出迎えありがとうございました」


 自分の従姉妹であるという、楓と出会った混乱から立ち直る太郎。


 「まあ、詳しい話は里でしよう♪ おいで、キジマル!」


 楓が空に向かい叫ぶと、巨大な緑の雉型のロボットが飛んできて着陸した。


 「これが、楓さんの機体ですか?」

 「そうそう、ヒスイマルだよ♪ さあ、乗った乗った♪」

 「お邪魔いたしますの♪」


 ヒスイマルの胴体の脇腹辺りが開き、そこから乗り込む太郎達。


 太郎は地球の知識で見た、戦闘機とヘリコプターの操縦席を混ぜた感じたと思った。


 戦闘はメインパイロットである楓、後部座席に太郎と山吹姫が座りシートベルトを締める。


 「それじゃあ、離陸するよ♪」


 楓が叫び、ヒスイマルが鳴き声を上げて飛び立った。


 「太郎様、空に巨大な鉄の島が浮かんでおりますわ!」

 「空飛ぶ宇宙要塞島?」

 「うん、宇宙にも行けるよ♪ 天狗忍者の里へようこそ♪」


 太郎達が見た物は空に浮かぶ、キノコ状の白いSFチックな金属の要塞であった。


 山吹姫が驚く、太郎は前世でみたアニメのお陰であまり驚かなかった。


 要塞のドームが開き、着陸マーク付きの滑走路が現れると着陸するヒスイマル。


 ドームが閉じて、太郎達は天狗忍者の里へと招き入れられた。


 皆で機体から降りると、出迎えの人達が来ていた。


 出迎えの人達は、天狗らしく山伏の姿であったカラスを模した仮面を被っている。


 「姫、軍配太郎様と山吹姫をお連れして司令室までお越しください」

 「わかったよ♪ ああ、彼らは公儀御庭番のカラス天狗達だよ♪」

 「初めて見ましたわ♪」

 「伯父上の鷹狩りで、見た事があります」


 カラス天狗達は、太郎達に一礼すると姿を消した。


 「ここは楓さん専用の格納庫?」

 「そう言えば、他の方の機体などはございませんわね?」

 「うん、今の所はね♪ じゃあ、行こうか♪」


 楓に案内され、宇宙ステーションのような里の通路を進む太郎達。


 「地上にも里はあるけど、こっちの仕事用の里の方が話ができるでしょ♪」

 「私は、地上のお里の方が落ち着きますわ」

 「技術レベルが違い過ぎるな、相変わらず」


 辿り着いた先の自動ドアが開き、デスクも壁も白い無機質な部屋に入る太郎達。


 「お待ちしておりました、軍配太郎様♪ 公儀御庭番頭領の勢賀先蔵人(せがさき・くらんど)です」


 出迎えてくれたのはこちらは上下で正装した、白髪の武士の老人男性。


 「上様からの書状です」

 「はい、確かに頂戴いたしました♪」


 蔵人さんに書状を渡す太郎。


 「結論から申しますと、こちらからは楓姫を推薦させていただきます」

 「ああ、何となく予想はできておりました」

 「そう言うわけで、私も今日から軍配党として宜しくね♪」

 「では、楓さんにも印籠を」


 蔵人さんの言葉に納得し、楓に印籠を渡した太郎。


 これにより、ヒスイマルがニチリンオーの僚機となり合体が可能となった。


 「若様、楓姫の事を宜しくお願いいたします」

 「まあ、従姉妹と言った以上親戚ですからわかりました」

 「弟が出来たみたいなもんだから、しっかり守るよ♪」

 「楓姫は、忍びの術はできますが性格が上様に似て武人なので」


 太郎は蔵人さんの宜しくが、どういう物かはあえて考えないようにした。


 「太郎様、私がおりますからご安心くださいませ♪」

 「うん、姫がいてくれると安心します」


 山吹姫の言葉に安堵する太郎。


 「大丈夫だよ、どんな相手もズバズバ銃弾で弾き倒して見せるから♪」


 楓が銃の腕をアピールする。


 「遠距離攻撃や、空戦ができるのはありがたいですねえ」


 忍者とは一体? と、思いつつ太郎達は楓を加えて天狗忍者の里を出た。


 「さて若様♪ 改めて、鉄砲の楓(でっぽうのかえで)として宜しく♪」


 三度笠に旅姿と、男装して度世人の服装になった楓が微笑む。


 「はい、ではまずは勢賀神宮へ詣でてから皆で西国への旅へと進みましょう」

 「お勢賀参りだね♪ 地元だし案内はお任せだよ、墨うどんの美味い店も教えるから♪」

 「それは素晴らしいですわ♪ 楓さん、宜しくお願いいたします♪」


 楓の墨うどんに食いつく山吹姫、新たな仲間と始まる新たな道中。


 その前に、安全祈願と腹ごしらえをする太郎達であった。

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