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天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記  作者: ムネミツ
第二章:東街道中編
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第十話:小田鎌くえすと

 「ここが小田鎌(おだかま)♪ お城が綺麗ですわ♪」

 「小田鎌は城とかまぼこで持つ♪ と謳われし名城ですね♪」


 小田鎌の城下町に入り、茶店であんこの載った緑色の団子を楽しむ太郎達。


 異国情緒漂う隣の川浜とは違い、海が見える和風の城下町と言う風情であった。


 「今回も奉行所にお伺いを立てに行きますの?」

 「こちらだと、小田鎌城へご挨拶ですね」


 姫の問いに太郎が答える。


 「いや、その必要はないぞ太郎殿♪」


 太郎達の背後から一人の身なりの良い武士が現れた、髷を綺麗に整えた美青年だ。


 「えっと、貴方様はここでは何とお呼びすれば宜しいでしょうか」

 「太郎様、この方はもしや?」

 「私の事は、(れん)さんとでも呼んでくれ♪ ここの団子は美味いぞ♪」


 偶然立ち寄った茶店に、街の城主がお忍びでいた事に呆れつつ太郎と姫は乾いた笑いを浮かべた。


 太郎的には、父の友人で顔見知りなお殿様を知らない人扱いするのは面倒であった。


 だが武士のはしくれとして、相手の顔を立てねばならないので我慢した。


 若き小田鎌藩主が扮した鎌さんが爽やかな美声で語る。


 「家の殿は五大分家の皆様全員に、活動を了承しているので構わんと思うぞ」

 「そうですか、ありがとうございます」

 「ありがとうございますわ~♪」


 姫も空気を読んで、去って行く鎌さんを見送った。


 「殿方は、お忍びが好きなのですね♪ 太郎様もああなるのかしら?」

 「いや、わかりませんし姫を置いて出かけたりはしませんから!」

 「ええ、今生も来世も含めて何処までもお供いたします♪」


 山吹姫の愛は重かったが、面倒は省けた。


 団子を土産で買い、店を出る二人。


 果たしてこの街では、どのような事件が起こるやらと軍配党の幟を出して街を練り歩く。


 「悪党や事件を探すついでに、新たなお共も見つけたい所ですわね?」

 「二人旅でも良いのですが、腕が立ち信のおける人材はなかなか見つかりませんね」


 姫にはそう言いつつ、新たに仲間に加えるなら忍び仕事ができる人が欲しいと太郎は思った。


、そんな事を考えながら歩く二人の目に『くえすと屋』と言う看板を掲げた店が入った。


 「太郎様、あのお店が気になるのですか?」

 「ええ、あれはくえすと屋と言って様々な人材に仕事を紹介する店です♪」

 「なるほど、では私達にも相応しいお仕事があるかもですね♪」


 太郎と山吹姫は、くえすと屋に入ることにした。


 「たのも~♪ ですわ♪」

 「失礼、こちらで仕事を紹介していると聞いて来たのだが?」

 「は~いっ? ご、五大分家の紋所っ! い、いらっしゃいませ~っ!」


 和風な店内で、太郎達の姿と姫が持つ幟を見て従業員達が平伏した。


 神君家に連なる五大分家の家紋の効果は絶大であった。


 「ああ、すまない! かしこまらなくて良いから話を聞かせてくれ」

 「は、はい! 当店ではお客様に依頼を出させていただいておます!」


 店主らしき茶色く長い髪に眼鏡をかけた、可愛らしい赤い着物姿の女性が頭を上げて説明する。


 「なるほど、口入れ屋の一種ですのね♪」

 「ええ、お武家様や武の腕を持つ方向けの口入れ屋でございます♪」

 「いや、騒がせておいてなんだが落ち着いてくれ」

 「申し訳ございません、まさかまた神君候補の方が来られるとは!」

 「ああ、親戚の誰かが来たんだな?」

 「はい、葵姫様が路銀稼ぎにと参られてイットウオーで大蛸退治を為されました」


 店主の女性が、太郎の従姉妹とロボの名を出して語る。


 「ああ、従姉妹が世話になったついでにこちらも頼む」

 「スーパーロボットが必要そうなクエストを下さいな♪」

 「はい、ただいま調べさせますっ!」


 店主の女性が、従業員達に調べに行かせる。


 太郎と山吹姫は、出されたお茶をいただきながら待っていると従業員の女性がおそるおそる依頼書を差し出して来た。


 「お待たせいたしました、こちらがお客様向けの依頼でございます!」

 「かたじけない、拝見させていただきます」


 太郎が依頼書を受け取り内容を読み、姫にも依頼書を見せる。


 「これは、不漁の原因の調査ですか?」

 「ええ、依頼主は蒲鉾屋の寄合だそうで。 では、ありがたくこの依頼を受けさせていただきます」

 「宜しくお願いいたしますわ♪」


 太郎と姫が依頼を受けると、かしこまられた。


 くえすと屋を出た二人は、依頼人である蒲鉾屋寄合の長を務める金満屋と言う店へと赴く。


 「ごめんくださいませ、くえすと屋から依頼を受けた軍配党でございます♪」

 「礼儀は不要だ、話を聞かせていただこう」

 「いらっしゃいませ! ご公儀の方がお受けくださるとは思いませんでした!」


 寄合の代表を務める店に行き、出て来た金満屋の店主から話を聞く二人。


 「なるほど、仕入先の漁師達が船を沈められたりしているのか」

 「生き残った方には、怪物を見た人がいると」

 「はい、手前どもも参っておる次第でして」

 「以前の相場よりも値を釣り上げるのも致しかたなしと?」

 「ひいっ! 手前どもは決して、ご公儀に成敗される悪党商人ではございません!」


 茶色の羽織に灰色の着流し姿の年老いた男性の店主が、太郎達にビビりながら語る。


 「では、魚が各店にきちんと届くようになれば通常の値に戻すと言う事ですのね♪」

 「は、はいっ! 手前どもも命は大事です、買って下さるお客様あっての商人ですので!」

 「ならば、その旨を文書にして街中に告知されよ♪ 我らは討つと決めた邪悪以外に牙は剥かぬゆえ♪」

 「は、はは~っ! かしこまりました~っ!」


 店主は土下座して確約する、彼は太郎の父親達世代がスーパーロボットで大暴れしたのを見聞きした世代。


 容赦なく悪代官や悪党商人などを成敗していった、神君家とスーパーロボットの脅威を知る者であった。


 「蒲鉾の値を民の皆が手軽に買える値段に戻す為にも、頑張りましょうね♪」

 「そうですね、今の所まだ民の顔に陰りがないとはいえ値上げは良い物ではないですし」

 「売り手と買い手と世間の三方に悪しですわ!」

 「物の流れの滞りは、国を詰まらせて殺します故に励みましょう!」


 金満屋の店主に釘を刺して店を出た、太郎と山吹姫が気合を入れる。


 二人は、蒲鉾屋寄合と取引をしている漁師達に話を聞こうと漁港へと向かった。


 太郎達が赴くと、船や網などの仕事道具の修理や手入れに漁師達が勤しんでいた。


 「すまない、くえすと屋の依頼で来た者だが海の化け物について話を聞かせてくれないだろうか?」

 「ああ、あんた達がそうなのか? 一応お武家さま見てえだが、大丈夫なのか?」


 太郎が近くの猟師に尋ねると、漁師の男からは訝しまれた。


 「大丈夫だ、この印籠に誓って解決して見せる!」

 「その紋所は、あんたも五大分家の若様って奴か? 前に見たのは刀の絵柄だがこっちは軍配か?」

 「葵は俺の従姉妹だ、俺も海の怪物を退治して見せよう♪」


 太郎が漁師に真摯に語る、、どうやらこの漁師は五大分家のスーパーロボットを知っているようだった。


 山吹姫は笑顔で太郎の傍に控えていた。


 「おう、姫様を海へお連れした時は大蛸だったが今度のはでかい魚の化け物だったんだ!」

 「ふむ、その怪魚が漁の邪魔をしていると言う事だな」

 「おかげで折角の大漁も台無しだよ、何とかして下せえ!」

 「わかった、任せておいてくれ♪」


 太郎は漁師に約束した、そうと決まればニチリンオーの出番だ。


 「太郎様、この浜辺なら問題なしですわ♪」

 「ああ、ではいつものように♪ 来い、ニチリンオーッ♪」


 船も人気もない浜辺で、太郎は黄金の軍配を天に掲げてニチリンオーを召喚した。


 天より現れた巨人に太郎と山吹姫が乗り込む。


 「加護武装、リュウジンニチリンオー!」


 コックピット内でシートに座った太郎が叫ぶと、ニチリンオーはリュウジンニチリンオーへと変化する。


 「今後は、コガネマルに水練をさせて海でもお役に立てるようにいたしますわ!」


 コガネマルが使えない事を悔しがる山吹姫。


 「お付き合いいたします♪ 姫は、火器管制をお願いします!」

 「お任せあれ♪」


 太郎の後方で姫が座るシートが沈み、頭部コックピットから胸部の砲座へと移動する。


 「よし、スタンドファイトモード移行っ!」


 太郎がレバーを操作すると、室内が変形し球形コックピットで太郎が立ち上がる状態になる。


 それと同時に、海面から巨大なチョウチンアンコウに似た怪魚が現れた。


 頭部のチョウチンからアンコウがニチリンオーへとビームを放つ!


 「水流フィールド展開ですわ!」


 姫の操作で、ニチリンオーの周りに水の巨大竜巻が発生しビームを防ぐ!


 「クジラ並の体躯のアンコウとは奇怪な! だが、負けはせんっ!」


 ニチリンオーがアメノサンサホコを手に持ち、海面を滑りながら移動して電撃を纏わせた突きで攻める!


 アンコウ側もただではやられまいと、頭のチョウチンを鞭の如く振り打ち込んで来る!


 「おっと! だが、ニチリンオーはこの位では落ちんぞ!」

 「お返しの放水攻撃ですわ!」


 太郎がアンコウの鞭攻撃をガードし、姫がニチリンオーの肩の龍頭から放水攻撃を行い敵を怯ませる!


 「かたじけない! ここで止めだ、一点集中水流突きっ!」


 太郎が叫び、コックピット内で矛を振るう。

 

 それに合わせてニチリンオーもアメノサンサホコに海水を集める。


 そして、三叉鉾から海水の錐が射出されてアンコウの胴を撃ち抜きその命を終わらせた。


 太郎はアンコウの死を確認してスタンドファイトモードを解除、姫がメインコクピットに戻って来る。


 「これにて一件落着ですわね♪」

 「ええ、後はこいつの骸を漁港へと持ち帰りましょう検分が必要です♪」


 こうして、太郎達は受けた依頼を解決し巨大なチョウチンアンコウの骸を担いで港へと戻って来た。


 漁港の漁師達はニチリンオーと巨大アンコウを見て驚いた。


 「こ、こいつだ! こいつで間違いねえ!」

 「そうだ、俺達の魚を奪ったバケモンだ!」


 被害に遭った漁師達が口々に証言する。


 「どうやら、間違いではなかったようですわね♪」

 「ああ、これでまた彼らも漁に出られるだろう♪」


 機体の中で笑い合う太郎と山吹姫。


 漁師達にくえすと屋と金満屋に連絡を取るように頼むと、やって来た両店主が腰を抜かした。


 「これにて依頼達成です、ありがとうございました~っ!」

 「値段の釣り上げも元に戻します~っ!」


 ニチリンオーに平伏する、くえすと屋の店主と金満屋の店主。


 その後は、漁師達の指導を受けてニチリンオーで巨大アンコウを解体し鍋にして民に振舞ったのであった。

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