お誘い
「なるほどな…」
海風がなびき微かに塩の匂いがした。
「いい匂い…」
「え?」
ルシアの独り言にレンは不思議に思い目線を向けた。
「え、あ、いや、あのっ、塩の匂いが…いい匂いだなぁ…て」
「塩の匂い…?」
あ…この国では塩とは言わないから伝わらないのでは…。
間違えてしまった…やばい…?
「よく塩なんて単語知っているな」
「あ、えーと…本で見たので」
レンは暫く考えこむように俯くと口を開いた。
「お前は賢いんだな」
ふわりと風が吹き、その時レンの深く被っていたフードが外れた。
その瞬間ルシアの昔の記憶が少し蘇った。
「生まれ変わっても僕はずっと君をーー」
ズキッと頭痛が走ったがすぐに収まり先ほどの記憶が何かは深く思い出せなかった。
塩の話からレンは色々な質問をルシアにした。
その質問は何故か前世の事に関係しているような質問が多かったがルシアは特に気が付かなかった。
「なぁ…お前名はなんと言ったか?」
「ルシアです」
「ルシア、お前は賢い。俺と一緒に学園へ通わないか?」
「へ…?」
学園!?学園って言った!?しかも俺と…??
てことは…レンさんは…平民ではないってこと!?
ええええ…ど…どうしよう…?え…?
「もちろん学園への入学費等は全てこちらで用意する。このままではお前の知識が勿体無い」
「嬉しいですけど…私は…」
私は誘いを断った。
もちろん誘いは嬉しいものだったけれど
今の生活は捨てられない。
何故なら、私を育ててくれたお母さんを私は1人には出来ないからだ。