表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

2-5

「失礼ですが、ルトガー様に婚約者はおられますか?」

「いえ、まだおりませんわ。」

「カイ様にご兄弟かご姉妹は?」

「13才になる妹がおります。」

「その方とルトガー様に面識はございますか?」

「ルトガーが家に来た時にはよく一緒に遊びました。

もう1人の兄上だと言ってよく懐いていましたが

最近ではルトガーが来ると部屋に(こも)ってしまう有様(ありさま)で…」

「「おやおや?」」


女二人だけが訳知り顔(わけしりがお)(うなず)きあった。


「ええっと、ではこうしましょうか。

まず、カイ様の妹御(いもうとご)にルトガー様のお見舞いに来て頂くということからご婚約に進めていただくと。

あ、私、こちらへはブリギッテ様のお茶会から来たのです。

会場の庭園でご挨拶をしていた時に叫び声が聴こえてきまして。

他の参加者の皆さんも気にされているようでした。」


すっかり娘主催のお茶会のことを失念していた伯爵夫人が青()めた。


「ブリギッテ様のことなので上手くお断りを入れてお開きにされたかと思いますが、

そのままにしておくわけには参りませんでしょう?

ですのでルトガー様がお倒れになったことは公表しなければなりません。

しかしそれだけでは結果的にお茶会を失敗させてしまったブリギッテ様の失態で終わってしまいます。

そこでルトガー様を密かにお(した)いしていたカイ様の妹御が駆けつけて…というロマンスに上書きしてしまえばよろしいでしょう。」

「しかし妹がルトガーを慕っているなんて…」

「「そこは大丈夫」」


---


結果的にはシャルロッテの裁定ですべてが丸く収まった。

邸に戻ったシャルロッテは両親に事後報告をした。

その後の諸調整は父が引き継ぎ、母は名家同士のラブロマンスを社交場でイイ感じに話した。

社交界で話題のロマンスの始まりの現場に居合わせた(ことになっている)お茶会の参加者たちは鼻高々で自慢した。

カイは帰宅後にルトガーが倒れたことを告げた途端、泣きながらメスナー邸に馬車をとばさせた妹に本気で驚いたらしい。

やはり男というやつは鈍いものである。


シャルロッテは8代前のお祖父様の遺した仕事を完了させた満足感に浸りつつ、

リュートを奏で、か細い声で歌う。


---


真実の愛というけれど

他人(ひと)には身勝手な我儘(わがまま)と見分けがつかないのよ

永遠(とわ)の友情というけれど

互いに縛りあうことと何が違うのかしら


時は流れ記憶も移ろいゆく

白が黒となり黒が白となる

貴方はどちらがお好みかしら

貴方はどちらがお好みかしら


---


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ