聖夜~サンタがくれたpresent~
初投稿となります。宜しくお願いします。
読了は、3〜5分程度。
隙間時間にサクッと読めるかと思います。
「あんたなんて大嫌い。」
「へぇ。じゃあ別れてくれ。」
「二度と顔も見たくない。」
―あいつと喧嘩別れして今日で丁度一年。
今日はクリスマス。
街は手を繋いで寄り添い、互いを温めあっている恋人達ばかりだというのに、俺は自分の家で淋しく窓の外を眺めている。
長いようで短かった一年。
寂しさを払拭しようと、ダチや同僚の主催する合コンに何度か顔を出した。
付き合いこそしないものの、紹介される女の子達と何度か遊びにも行った。
けれどそれは、余計に寂しさを募らせてしまうだけだった。
俺に、美咲しかないという事を再確認させるには十分な時間だったように思う。
俺はあの時、喧嘩したかったんじゃない。
美咲の居ない、空っぽの俺に残ったのは後悔だけだ。
棚の上に目をやると、嵌める主が居ない、新品の指輪がケースに入って置いてある。
あの時、寝ずに考えたプロポーズの言葉と共にあいつに渡すはずだった指輪…。
"美咲、俺は今でもお前の事…。"
ピンポーン。
インターフォンが鳴った。
こんな時に誰だよ。
「はーい。」
玄関に行き、
―ガチャ―扉を開ける。
「メリークリスマス。」
扉の外には太った老人が立っていた。
赤い帽子に赤い服、赤いズボンに大きな袋。
鼻の下から口と顎を覆い隠すようにしてフサフサした白い髭をたくわえている。
"もしかしてサンタ?
いや、サンタなんていないって事、今時小学生の子供だって知ってるぞ。
誰かが俺をからかってるのか?
そうに決まってる。"
「あんた誰だよ。拓哉か、祥太か。」
始めっからダチだと決め付ける、俺。
「メリークリスマス。サンタさんじゃよ。」
言ったかと思うと、そいつは玄関の扉を開け、中に入ってきた。
「お、おい。勝手に入ってくんな。」
俺が制止しようとしても構わない。
「よっこいしょ。やれやれ、年寄りには辛いわい。」
そう言って、担いでいた大きな袋をドサッと置いた。
「どれどれ、いい子にしてたかな。そんな子にはサンタさんがプレゼントをあげよう。」
そうして渡してきた一つの箱。
綺麗にリボンで包装してある。
「これは?」
俺が聞くと、そいつはニッコリ笑って
「君が今、一番欲しがっているプレゼントじゃよ。」
俺が今一番欲しいのは、こんな箱に入った物じゃないんだが…。
「じゃあの。メリークリスマス。」
三度そう言うと、さっさと出ていってしまった。
「ちょ、ちょっと待て。」
慌てて扉を開けたけど、その姿はもうどこにもなかった。
訳が分からず、茫然とする俺。
俯くと、手に持った箱に目が行った。
考えもなしに、とりあえず箱を開けてみる。
すると中から光が…
「わぁぁーー…。」
光で何も見えなくなった俺は、急に意識が遠退いた。
「はっ。」
気が付くと、俺は居間に寝転がっていた。
どうやら、窓の外を眺めたまま、寝てしまっていたらしい。
あの奇妙な珍客は夢だったのか。
起き上がった時、携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると、無機質な文字列が並んでいる。
一見、なんの変哲もない数字だが、忘れる事の出来ないその番号…。
電話に出る。
「もしもし…。」
「もしもし、光祐?あたし…。」
懐かしい声。
付き合っていた頃と何も変わらない、優しい声。
「もう、喧嘩して一年だよ?」
「ああ、そうだな…。」
愛しい人の声を聞きながら、この一年を振り返る。
もう会わない、会いたくないと決めてしまった一年前。
だけど、そう思うと会いたいという気持ちがより一層強くなった。
電話してみようか。
寧ろ直接会いに行こうか。
いや、だけど…。
喧嘩別れして、もう会えないと分かっていても、愛しいと思う気持ちは変わらなかった。
「今、一人?」
「だったら何だっていうんだよ。」
喧嘩の続きをしたいわけではないが、思い出してしまったせいで、素っ気ない態度をとってしまう。
「今、駅に居るんだけど、せっかくのクリスマスだっていうのに、一人なんて淋しいじゃない?あたしも一人だから…」
「だから?」
続きを促す
「だから、今から会えないかな?…」
思いがけない電話と、思いがけないその言葉。
「…すぐ行く。そこで待ってろ。」
そう言って窓の外に目をやった。
"もしかしたら、これがプレゼント?"
電話を切り、声を出して笑う。
「サンタって本当に居たのかなぁ。」
外に出る前に、玄関を確認する。
サンタなんて、今でもいないと思えるが、玄関に残った大きな靴の跡が、夢が現実だったことを物語る。
そして俺は、指輪とジャケットを引っ掴んで外に飛び出した。
外には、ホワイトクリスマスと言わんばかりに、雪がちらついていた。
~Happy Merry Christmas あなたも大切な人と素敵な聖夜を~
初めまして、まこにゃんと申します。
この度は、読んでくださりありがとうございました。
一応、自ブログからのお引越し作です。
一話完結ですが、シリーズとして、あと3作ほどあるので、もし読んでくださる方がいらっしゃるなら、日を追ってそちらも投稿しようかなと考えています。
それでは、あなたにも、今宵が素敵な聖夜となりますように。